カンパ~イ!
サスケたちが村の広場に行くと、
広場の中央に丸太が組み上げられており、
まるで、キャンプファイヤーの様に火が焚かれていて、
その火をグルリと囲む様に村人たちが、
地面に茣蓙を敷いて座っていた。
「お頭、こっちです!」
サンの案内で、サスケが村長さんの隣の席に腰を下ろすと、
並ぶ様に、ミルクとジュリーとチビリンも座った。
「では、みんな揃った様なので、
歓迎の宴を開催したいと思います。」
司会進行はロリーの父親が務める様だ。
「「「「「ワ~ッ!パチパチパチパチ!」」」」」
「まず初めに村長さんの挨拶です。」
「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」
「え~、ただ今、ご紹介に預かりました。
ケモイヤー村の村長を務めております。ソン・チョーです。」
「名前、テキトーだな!」
「本日は、サン、リン、ロリー、ジュリーの凱旋に加えて、
5年振りに村を訪れたお客人である、
サスケさん、ミルクさん、チビリンちゃんを歓迎して、
え~、以下同文。」
「何じゃそりゃ!」
「「「「「おお~っ!パチパチパチパチ!」」」」」
「今のでイイんだ!?」
「え~、続きまして、
村一番のハンターにして、サンの父親でもある、
パパサンに乾杯の音頭を取って貰います。」
「名前!名前!」
「た、た、た、ただ、ただ今、
ご、ご、ごしょ、ご紹介に、え~、カンパイ!」
「口ベタか!何でやらせた!」
「「「「「カンパ~イ!パチパチパチパチ!」」」」」
「するんかい!」
「サスケさん、田舎料理で口に合いますか分かりませんが、
村の名物なので食べてみて頂けますか。」
村長が、大きな葉に包まれた肉や野菜をサスケに奨めた。
「おっ!これが地蒸し料理ですか?」
「おや、ご存じでしたか。」
「ええ、ジュリーたちに聞いて楽しみにしていたんですよ。」
「そうでしたか、どうぞお食べ下さい。」
「いただきます。
お~、この鳥肉は美味しいですね、
始めての味ですが、この辺で獲れる鳥なんですか?」
「はい、近くの森で獲れるカンコ鳥という鳥ですな、
この村の現状にピッタリの名前ですな、はっはっはっ。」
「ははは・・・。」
(笑えねぇ・・・)
「こ、こちらのお肉も美味しいですね。」
サスケの気持ちを察したミルクが、
空気を変える様に明るく言った。
「ミルクさんは、サヨナラビッツの肉がお口に合いましたか、
その兎は、止めを刺す時に、
涙を流しながら耳を手の様に振って別れを告げる事から、
その名が付けられました。」
肉を口へと運んでいたミルクの手がピタリと止まった。
「え、え~と、5年振りの客との事でしたが、
5年前に来た人は、どんな人だったんですか?」
「5年前に村へ来られたのは、
サスケさんたちと同じ冒険者の方たちで、
森で遭難している所を、
サンの父親が見つけて連れてきたのですよ。」
「へ~、無理なクエストを受けたんですかね?」
「何でも、冒険者ギルドの酷い受付嬢に、
騙されたとか仰ってましたな。」
「その受付嬢に、チョ~心当たりがあるんだけど!」
そんな盛り上がりの中、宴は深夜まで繰り広げられた。
「昨夜は、よく休まれましたかな?」
「はい、お蔭さまでグッスリと眠れました。」
翌朝、サスケたちは村長の家で朝食をご馳走になっていた。
「それは何よりですな、
して、本日のご予定は何か入っておられるのかな?」
「ええ、ジュリーの案内で地蒸し料理の調理場や、
森の散策をしようかと思っています。」
「そうですか、どうぞ、ごゆっくりして行って下さい。」
「ありがとうございます。
それと、村長さんにご相談があるのですが、
今日、森を見て周った結果によっては、
ケモイヤー村に観光客を呼び込めるかも知れない案があるのですが、
村の人達って、その辺は、どうお考えなんでしょうか?」
「そう言う話題は、
村の連中との話し合いで、しょっちゅう上がったが、
結局、何を売りにすれば良いかが分からなくて、
立ち消えになっとったんじゃ、
仕事も無いので、村の若者たちは次々と街へ行ってしまい、
村は寂れるばかりじゃから、
サスケさんが何か良い案を考えてくれるのは大歓迎じゃと思いますぞ。」
「そうですか、それを聞いて安心しました。
サンたちには、いつも助けて貰っているので、
俺の案で、みんなの故郷の現状が、
少しでも改善されれば良いなと思います。」
「その際は、ワシたちもご協力を惜しみませんぞ。」
「ありがとうございます。
でも、ある程度の下準備をして来ておりますので、
俺の見込み通りなら、作業は俺たちの手だけで十分間に合うと思います。」
「お頭、ここが地蒸し料理の調理場だよ。」
ジュリーの案内で訪れた調理場は、
沢山の石を積み上げて釜戸の様な形にしてある中から、
モウモウと熱い蒸気が吹き上げていた。
「お~、大体、想像通りの形だな、
ジュリー、この辺で活火山はあるのか?」
「かつかざん?」
「え~と、山のテッペンから煙が上がってる所だ。」
「あ~、それなら、森の向こう側にありますよ。」
ジュリーが森の一方を指差した。
「大事な村の調理場に何かあると困るから、
こことは別の水脈を探す必要があるからな、
取り敢えず、火山に近い方から探してみるか。」
サスケは何かを『魔倉』から取り出しながら言った。
「サスケさん、それは何ですか?
見た所、鎖の先に付いているのは魔石の様ですが。」
「ああ、これはダウジングって言うんだけど、
魔力を使わなくても地中の水脈を発見できるんだよ、
普通は鎖の先に水晶を付けたりするんだけど、
これは、魔石に火と水の魔法を付与した特別製なんだ。」
「水晶とは、どう違いますの?」
「水晶より精密だし、お湯にだけ反応する様にしてあるんだ。」
「お頭、地面の下のお湯を探すんですか?」
「ああ、俺は温泉を探しているんだ。」




