村長ヒストリー
「おや、お客さんかな?」
「おお!村長、ちょうど良かった。
こちらは、サンたちの恩人で、
冒険者パーティーのリーダーのサスケさんだ。」
「それはそれは、ケモイヤー村へようこそ、メンソーレー。」
「何で沖縄!?」
ケモイヤー村の村長さんは、豚タイプの獣人らしく、
まさしく、オークにしか見えなかった。
「村長さんは豚タイプの獣人なんですか?
豚タイプの方には初めて、お会いしました。」
「いえ、ワシは獣人ではなくてオークなんですよ。」
「オークって喋れるんですか!?」
「いえ、オークキングが喋れるという話を聞いた事がありますが、
一般のオークは喋りませんな。」
「村長さんは、普通のオークに見えますが・・・」
「ええ、ワシの育ての親は、猪タイプの獣人の両親だったのですが、
子宝に恵まれずにおったそうです。
それが、ある日の事、2人で山に山菜を採りに行ったところ、
行き倒れて死んでいる、ワシの母親らしいオークと、
その傍らで鳴き声を上げている、
赤子のワシを見つけたそうです。
2人は、母オークを土に埋めて弔ってから、
ワシを村へと連れ帰って、2人の子供として育ててくれたのです。
言葉の心配は育ての親たちも心配していた様ですが、
成長するに従って普通に話し始めたそうです。」
「へ~、そんな事ってあるんですね、
もしかすると、普通のオークも教育されていないだけで、
子供の頃から教えれば会話とか出来るのかも知れませんね。」
「ああ、だが優秀な者が増えると配下にするのが難しくなるから、
オークキングは、それを良しとはせんだろうな。」
「なる程、それはありそうですね。」
「何はともあれ、ワシに愛情を注いで育ててくれた、
先代の村長を務めていた両親には感謝していますよ。」
「そうですね、ご両親の愛情が起こした奇跡だったのかも知れませんね。」
「では、改めてサスケさん、ケモイヤー村へようこそ、
今夜は、山の幸で持て成しますぞ。」
「ありがとうございます。
では、遠慮なくご馳走になります。
それで、私の方も、ご相談があるのですが、
私の、生まれ育った所の料理を、村の皆さんに食べて頂きたいので、
明日の夜は、私に作らせて頂けませんか?」
「ほう、サスケさんが料理を?」
「村長さん、お頭の料理は大きな街の料理店より美味いよ!」
「そうか、村一番の食いしん坊だったジュリーが言うんじゃ、
間違い無いだろうな。」
「そうそう、お頭の料理は、どれも見た事が無い作り方で、
ほっぺたが落ちる程、美味しいものばかりだから、
楽しみにしといた方が良いよ。」
「それは、とても楽しみだな、
では、村の皆と、ご馳走になるとするかな。」
「ありがとうございます。村長さん。」
「それで、サスケさん、
この村はご覧の通り、然程大きくなく、
旅人も滅多に訪れんので宿屋が無いのだが、
今夜は、ワシの家に泊まられますか?」
「ジュリーと、お爺さんや、お婆さんが暮らして居た家は、
今、どうなってるんですか?」
「昔のままになってますよ、
その内に、ジュリーたちが帰る日もあるかと思って、
村の者が定期的に掃除をしていますので、
家の中もキレイになっています。」
「村長さん、村のみんな、ありがとう!」
「じゃあ、村に居る間はジュリーの家に厄介になって良いか?」
「村長さんの家の方が大きくて広いけど、
私ん家で良いんですか?お頭。」
「何、言ってんだジュリー、
俺たちは冒険者だぜ、屋根があるだけで万々歳さ。」
「じゃあ、どうぞ家に泊まって下さい。」
「おう、世話になるぜ。」
「お邪魔しますね、ジュリーさん。」
「キキ~。」
サンたちは、各々(おのおの)の実家へと帰って行き、
サスケはミルク、チビリンと共に、
ジュリーの実家を訪れていた。
「お頭、ミルクさん、チビリン、どうぞどうぞ。」
「邪魔するぜ。」
「お邪魔します。」
「キキッ。」
ジュリーの実家は、
入り口のドアを入ると広い土間になっていて、
調理用の釜戸などが置かれていた。
土間を上がると、
中央に囲炉裏が座っている10畳ほどの広さの居間で、
奥に8畳程の部屋が2部屋あるそうだ。
「おお~っ!囲炉裏があるじゃん、
それに、この人数なら十分な広さだぞ。」
「それは、良かったです。
お頭、囲炉裏をご存じなんですか?」
「ああ、おれの親父の田舎にもあったからな、懐かしいぜ。」
「そうなんですか、囲炉裏は勇者イチローが広めたと言われてて、
最近では、地方でも余り見掛けなくなりましたが、
家では、爺ちゃんが気に入っていたんで残ってたんですよ。」
「へ~、そうなのか、
村の近くに川があったら、魚を釣ってきて囲炉裏で塩焼きにするかな。」
「おっ!お頭、通ですね、
村の近くにサンズノ川って呼ばれている、
川があるんですが、
そこで、獲れるハマサキ魚を串に刺して塩焼きにすると、
頭ごと食べられて美味しいんですよ。」
「あちら側に渡りたく無い名前の川だけど、
魚はアユっぽい感じで楽しみだな。」
その時、コンコン!とジュリーの家のドアがノックされて、
ガチャッ!と開いたドアからリンが顔を出して告げた。
「お頭、歓迎会の準備が出来たから、
村の広場まで来てくれってさ。」
「おう!了解した。
みんな、行こうぜ。」
「はい、サスケさん。」
「久し振りの村のご馳走か、楽しみだな~!」
「キキキ~!」




