ガッとしてググ~ッ
「よし、こんなもんで良いかな。」
サスケやサンたちによって、
小一時間で200個程の岩が集められた。
「お頭、この岩をどうするんですか?」
「こうする。」
サスケは忍者刀を取り出すと、
岩を5センチ幅程にスパスパと輪切りし始めた。
「他の岩も、そうするんですか?」
「ああ、この位の幅で切ってってくれ。」
「分かりました。」
サンたちも刀を取り出して切り始めた。
刀の切れ味が良いのも手伝って、
岩は10分も掛からずに切り終えた。
「よし、準備はこれでオッケーだな。」
サスケは輪切りになった岩を『魔倉』に収納した。
「サスケさん、コヒ茶がはいったから休憩しませんか?」
「ああ、そうしよう、
お前たち、お茶にするぞ。」
「「「「はい、お頭。」」」」
サスケは、『魔倉』からピロンの街で購入してあった、
クッキーの様なお菓子を出しながら、
皆に、今後の予定を説明した。
「一休みし終わったら、俺は鉄や黒魔鋼の採掘をするから、
サンたちは、ミルクとチビリンを連れて、
草原でビックラビッツやハンターウルフ辺りを狩って、
レベル上げをして来てくれるか。」
「剣の材料は、お頭の魔法で出すんじゃないんですか?」
「ああ、魔法でも出せるけど、
魔力の節約になるから、なるべく材料は用意しといた方が良いんだ。」
「分かりました。
それで、ミルクさんの装備はどうするんですか?」
「ああ、もう用意してあるぞ。」
サスケは『魔倉』から、ミルク用に造ってあった忍者服と武器を取り出した。
「白い忍者服と、ショートボウですか?」
「ああ、本来なら忍者服と白色っていうのは対極に位置するものだが、
ミルクが探索活動をする事は無いだろうからな、
それと同じく接近戦をする事も無いから、
武器は遠距離攻撃用のショートボウって訳だ。」
「ショートボウの攻撃力では、
大型の魔獣が出た場合に危険じゃないですか?」
「その辺は、ちゃんと考えてあるぞ。」
サスケは『魔倉』から沢山の矢を取り出した。
「色取りどりの矢ですか?」
「おお、赤い矢には火魔法、青い矢には水魔法、緑の矢には風魔法、
茶色の矢には地魔法、白い矢には白魔法が付与してあるんだ。」
「黒いのは普通の矢なんですか?」
「いや、黒い矢は非常事態の時に使うオリジナル魔法の矢だ。」
「どんな時に使えば良いんですか?」
「周囲を敵に囲まれた時だな、
真上に向けて、この矢を放つと、
自分を中心にして直径1メートル程のシールドが展開して、
そのシールドから、円形に周囲100メートル程が真空状態になるんだ。」
「え~と、それは、どの位の時間働くんですか?」
「たぶん30分位だと思うぞ。」
「アタイ達が一緒に居たら死んじゃうんじゃ・・・」
「その時は、矢を放つ際にシールド内に逃げ込むか、
100メートル以上遠くに逃げるかだな。」
「まあ、それを頭に入れておけば対処できますよね。」
「ああ、敵には分からないからな。」
「まあ、なるべく、黒い矢を使わなくて済む様に心掛けましょうね。」
ミルクは魔導ポーチに矢を仕舞いながら、サンたちに言った。
「「「「同感です。」」」」
「さてと、久し振りの採掘を始めるかな。」
休憩時間が終わり、
サンたちが、ミルクとチビリンのレベル上げに出掛けたので、
サスケも作業を始めた。
前にジョイケルに聞いて採掘に訪れた為、
この廃坑の地中深くには、結構、鉱石が残っているのを知っていたので、
今回は、最初から地中深くを探索して掘り出した。
「前の時も思ったんだけど、
結構、掘り残しが多いんだよな、
こういう鉱山って探索魔法で地中を探しながら掘らないのかなぁ?」
サスケの様な優秀な魔法使いを雇うには、
高額の報酬が必要であり、
増してや地中深くの鉱石を魔法で掘り出すなんて事は、
通常不可能である事をサスケは知らない。
「「「「「ただいま~。」」」」」
「キキキ~。」
昼頃になって、サンたちが狩りから帰って来た。
「お帰り~。
初めての魔獣討伐は、どうだった?」
「最初は、間違えて火魔法の矢を使ってしまったので、
獲物を黒焦げにしてしまいましたが、
水魔法の矢にしてからは素材を傷付けずに狩れる様になりました。」
「ミルクさんが仕留めそこなった魔獣も、
チビリンが的確に処理してましたから、
私たちが出る幕はありませんでしたね。」
「そうか、初めてにしては上出来だったな、
チビリンも頑張ったみたいだな。」
「キキキ~!」
「お頭の方は、どうでしたか?」
「ああ、今回の領主様が依頼された剣を造る為の材料が、
半分位は確保できたかな。」
「ええ~!半分も採れたんですか!?
ここって廃坑なんですよね。」
「ああ、地表から近い部分には残って無いんだけど、
深い部分には結構残っていたんだ。」
「深い部分って、どの位の深さなんですか?」
「30キロ位かな。」
「どんなに優秀な魔法使いでも、
普通は、そんな深くまで探知出来ませんし掘り出せません、
魔法を持たない人間では言わずもがなです。」
「サスケさんは、そんな深くにある鉱石を掘り出せるんですか?」
「ああ、地魔法を使って引っ張り上げてるんだ。」
「地魔法でですか、
ちなみにそれは、どんな風に魔法を使っているのでしょう?」
「それはだな、鉱石を発見したらガッとして、
ググ~ッとだな・・・」
「分かりました。
サスケさんにしか使えない魔法って事ですね。」
「ああ、感覚的なもんだから、その辺は説明のしようが無いな。
じゃあ、腹が減ったから昼飯の準備でもするか。」
「お頭、今日の獲物を食材にしますか?」
「おう、ハンターウルフの肉は美味くないから、
毛皮だけ剥がして肉は埋めちまおう、
ビックラビッツの肉は、炒めてパンに挟んだり、
シチューにでもするかな。」
「分かりました。お頭。」
皆で手分けをして調理を済まして、
ジンジャーを練り込んだパンを半分に切って、
その間にサンチャンと炒めたビックラビッツの肉を挟んだものと、
野菜と肉をタップリ入れたシチューを作った。
「じゃあ、食うか、いただきます。」
「「「「「いただきます!」」」」」
「キキ~!」
「みんな、食いながらで良いから聞いてくれるか、
実は、領主様の剣に付与する魔法術式を創った時に、
他の魔法も出来たんだけど、
それは、俺が不利益を被る発言を禁じられる魔法なんだよ。」
「その魔法が、どうかしたんですか?」
「この魔法を使えば、サンたちを奴隷から解放できるんだ。」
「「「「えっ!?」」」」
「奴隷から解放して戴けるのは嬉しいのですが、
宜しいのでしょうか?」
「ああ、サンたちは十分に貢献してくれてるし、
それに、隷属の首輪をしてないと言っても、
村に行ったら何か気付かれるかも知れないからな、
サンたちも、その方が良いだろ?」
「まあ、冒険者になって一旗揚げるって村を出て来たのに、
奴隷落ちをしたなんて、カッコが付かないのは確かですね。」
「と言う訳で、サンたちは奴隷から解放して、
今後は、パーティー仲間として雇用契約する事とする。」
「「「「ありがとうございます!お頭。」」」」
「良かったですね、みなさん。」
「キキキ~。」




