新天地
「さてと・・・
こうして旅立ったけど、これからどうしようかな?
それなりの能力は身に付けたから、
定番のパターンとしては冒険者になって金を稼ぐ方向だよな、
でも、フェルナリア皇国じゃ、俺は悪い方で顔が売れているから、
この国の冒険者ギルドで冒険者登録をするのは危険だな、
となると最初の目的地は、
ここから比較的に近いルクシア共和国にするか。」
現在のサブローの装備は、
皇国の首都を出た時のオリハルコン製の鎧と剣ではない、
服装は忍者のような黒装束で、同じく黒い頭巾を被っている、
これは、闇蜘蛛という魔獣が紡ぐ糸を使って、
サブローが作った服で、驚くほど軽いのに、
強靭な防御力を有している、
武器はオリハルコンの鎧と剣を加工して、
忍者刀、手裏剣、クナイ、まき菱などを、
同じくサブローが作った。
手裏剣や、まき菱などをオリハルコンで作るなんて、
勿体ないかと思ったのだが、
何と魔法の糸を繋いでおくと、手元に戻ってくるのである、
リサイクル精神溢るる優れものなのだ。
サブローは、冒険者となるべくルクシア共和国を目指す事にしたのだが、
森での暮らしには必要なかったので、資金不足なのに気が付いた。
「やっぱり、国境を超える時とか、冒険者登録する時に金が掛かるよな?
魔獣でも狩って素材を売るか、
薬草を加工して治療薬を売るのが手っ取り早いかな。」
そこで、定期的に魔獣が狩られているので出現が少ない街道では無く、
魔獣が多く現れる草原や森の中を進んで行く事にした。
「え~と、毛皮や肉が高値で売れる魔獣や、
高品質な薬が造れる薬草に限定して『感知』っと・・・
おっ!反応が結構あるぞ、こりゃ良い稼ぎになるな。」
サブローは3時間程の狩りや採取で、
良質な毛皮や、美味しい肉質で人気が高い、
ビックラビットやシモフーリボアを数匹と、
高品質の治療薬が造れるトンデモハップン草を採れた。
大量の獲物を、どう運搬するかと言うと、
ファンタジーに定番のアイテムボックス的な物が欲しかったサブローは、
『言霊魔導』によって『魔倉』という魔法を創り出した。
この魔法は物体を謎空間に保管しておくものだが、
時間が止まっている為に、中の物は劣化しないばかりか、
任意で素材の解体や加工も出来ると言う優れものである、
この魔法によってサブローは、
高品質の毛皮、肉、治療薬を入手できたので、
街へ行って売り捌いて資金を手に入れる事にする。
フェルナリア皇国の中で、
もっともルクシア共和国寄りにある街はシャルムの街である、
この街は海洋貿易が盛んなルクシア共和国から、
様々な物資が皇国の王都へと運ばれる要所になっている為、
地方にしては大きな街を形成している。
「へえ、首都ほどではないけど、なかなか大きな街だな・・・」
サブローは街に入るので頭巾を取って、
魔法で別人の物に改造した身分証明を門兵に提示した。
「うん?お前、変わった服装をしているな、
どこの国の衣装なんだ?」
「はい、この服はザドス王国でシーフ職を育てる村である、
トザーワ村で作られている服です。」
「成る程、確かに動きやすそうだから、
シーフにはピッタリかもしれないな、
色も黒いから夜活動するのにも目立たなそうだしな。」
「さすがに皇国の兵士の方は良く分かって居られますね、
我々シーフは、兵士さまの様な力強さは無いので、
夜陰に紛れて行動せねばならないので、
この服は好都合なんですよ。」
「ハハハ、そうかそうか、
うむ、身分証に特別問題は無いようだから、
通行を許可する、街に入って良いぞ。」
「はい、ありがとうございます。」
(ピロリ~ン!サブローは人と波風を立てない為の、
オベッカを憶えた!)
サブローは頭の中でRPGのログの様な言葉を浮かべながら、
街へと入った。
「さてと・・・
素材は、どこで売れば良いんだ?」
サブローは、素材を売れる店を探してキョロキョロとしている。
「兄ちゃん、何か探し物か?」
年の頃は20代中頃ぐらいに見える、
荷馬車に乗った犬獣人らしい商人が話し掛けて来た。
「ええ、この街を初めて訪れたのですが、
魔獣の素材や治療薬が売れる店がないかと探していたのです。」
「ああ、それなら俺がこれから行く、
お得意さんの店で扱っているから、一緒に行くかい?」
「宜しいのですか?」
「ああ、そう遠くもないから馬車に乗ってけよ。」
『真意』サブローは商人に気付かれない様に、
小声で呪文を唱えて考えを探ってみた。
「ありがとうございます。
それでは、お世話になります。」
サブローは魔法で相手に悪意がないのを確かめたので、
商人の好意に甘える事とした。
「ルクシア共和国へと向かう旅をしているギロッポンと申します。
よろしくお願いします。」
「ああ、俺は見ての通り商人をしているレトリバーと言う者だ、
そうか、ギロッポンはルクシアへ向かってるのか、
俺の店もルクシアのピロンって街にあるから、
近くに来たら寄ってくれよ。」
「ええ、その際は、寄らせて戴きます。」
「おう、約束だぜ!
ああ、着いた着いた、ここが俺のお得意さんの店だぜ、
色んな商品を取り扱っているから、大概の物なら買い取ってくれるぜ。」
その店は、この街の中でも大分大きい店構えをしている。
「店名は『何でも屋ケンちゃん』ですか・・・」




