試食会
昨晩のヤキニク祭りは、
ダンミーツたちや、ミルクたちにも絶大なる評価を貰って、
肉とタレをセットで売り出せば大ヒット間違いなしとの事だった。
そして、タレをサンプルとして持って行くよりも、
実際に焼き方や、食べ方も見て貰った方がヤキニクの素晴らしさを、
理解して貰えるとの意見を取り入れて、
今晩、冒険者ギルドのモモヨと、肉屋のおっちゃんを招待しての、
ヤキニク祭り第2夜が開催される運びとなった。
「俺は今晩の祭りに備えて、
必要な魔導具や、付け合せの食い物を造らなきゃならないから、
モモヨさんと肉屋のおっちゃんへの連絡は、
サンとダンミーツが行ってくれるか。」
「はい、お頭。」
「畏まりました。ご主人様。」
「お頭。魔導具って何を造るんですか?」
「ああ、ヤキニクは鉄板で焼くよりも、
網焼きした方が美味いから、魔石に火の魔法を付与した物を使った、
魔導グリルを造ろうかと思ってな、
本体の作成なら鍛冶のスキルを与えた、
お前たちにも出来るから手伝って貰うぞ。」
「「「「はい、お頭。」」」」
「ご主人さま、付け合せの食べ物とは何を作るのでしょうか?」
「俺的にはヤキニクはご飯に合うと思うんだが、
この世界ではパンが主食だろ、
だからパンを使ったメニューを考案しようかと思ってな、
ダンミーツとウルで細長いパンを焼いてくれるか、
ベルとスクルは、俺が魔法で畑に野菜を造るから、
それを収穫してくれるかな。」
「「「「畏まりました。ご主人様。」」」」
「サスケよ、ワシらは何をすればええかのう?」
「今回の提案が通って商売として成り立つようになったら、
ヴィン爺ぃたちにも手伝って貰う様になると思うから、
魔導具の製作工程や、野菜の造り方を見ていてくれるかな。」
「分かったぞい。」
「「分かりました。」」
サスケたちは、ヤキニク祭りに必要な物を次々に揃えていって、
ピロンの街を照らす夕日が暗くなり始める頃になり、
サスケの屋敷を、冒険者ギルドのモモヨ、肉屋のおっちゃん事ミンチ、
そして『何でも屋ゴールデン』店主のレトリバーが訪れた。
「今晩、皆さんにお集まり戴きましたのは、
俺が考えた、マッドパイソンの肉を大量に消費する案を確認して戴く為です。
レトリバーさんに参加して貰ったのは、
この料理を作る際に使う調理用魔導具も、
同時に売り出そうかと考えたからです。」
「サスケ様、特殊な調理器具が無いと作れない料理なのでしょうか?」
「いや、一般家庭の台所でも作れるんだけど、
この調理用魔導具を使って作った方が、美味しさや雰囲気作りに良いんだよ。」
「雰囲気作りですか?」
「ああ、この料理は調理過程も美味しさや楽しみの一つなんだ。」
「それは楽しみだな、さっそく頂いてみようぜ。」
「俺も、ミンチさんに賛成だな。」
ミンチとレトリバーは興味津々(きょうみしんしん)の様子だ。
「まずは肉の加工ですが、
一般的にはステーキやブロックで食べる事が多いですが、
今回は薄切りにするので、
この様な魔導具を造ってみました。」
サスケが造った魔導具に大きめにカットされた肉を乗せると、
薄くスライスされていった。
「こりゃ便利な道具だな、肉を均一の厚みにスライスできるのか。」
「ええ、肉が厚すぎると焼けるのに時間が掛かってしまいますから、
この魔導具を使えばミンチさんの様なプロでは無くても、
一定の厚みで肉をスライス出来る訳です。」
「なる程、技術が無い者でも、大量に加工出来るのは便利ですわね。」
「ああ、ミンチさんは、ピロンの街で食べる分を作るだけで大忙しだろうから、
他の街へ売る分の肉の加工は、
ギルドが人を雇うなりして作らなきゃならないからな。」
「つまり、サスケ様は今回の料理が、
他の街へも大量に売れると踏んでいる訳ですね。」
「自信満々だな、サスケ。」
「ええ、では実際に加工した肉を食べて頂きます。
これが先程、お話しした魔導調理器具で、魔導グリルと名付けました。
魔石に火の魔法を付与して作成しているので、
大量の魔石は冒険者ギルドから購入する様にして、
本体の販売はレトリバーさんに委託しようかと思います。」
「サスケ、スライスした肉を、
この魔導グリルとか言う魔導具の上に乗せて焼けば良いのか?」
「はい、焼く部分が網になっているので、
余分な油は下に落ちますので肉の旨味が引き出せます。」
「なる程な、良く考えてあるな、
美味いステーキを食べさせる店は、肉と油のバランスが絶妙だからな、
この食べ方は肉を薄く切る事によって、
素人でも肉の焼け具合が分かり易いって訳か・・・」
「さすがミンチさんですね、こと肉の事に関しては素晴らしいご慧眼です。」
「自分たちで焼きながら食べるのか?」
「はい、お肉を一番美味しく食べるには、
常に熱々の状態で食べるのがベストですからね。」
「確かにステーキなどでも、
最初の熱い時と、冷めてしまってからでは味が全然違いますものね。」
「では、みなさん、自分で焼いてみて頂くのですが、
片面を軽く焼いたら裏返して焼いて、
最後に、このタレを付けて食べて下さい。」
「何か食欲をそそる香りがする調味料ですね。」
「ああ、色んなスパイスが入っているみたいだな。」
モモヨたちは魔導グリルの上に肉を乗せていって、
程よく焼けたらタレに付けてから口に運んだ。
「これは!?」
「う・ま・い・ぞ~!」
「うお~!エールを呑みながら食いてえぜ!」
「ええ、濃いめの味付けのタレなので、お酒にもピッタリですよ。
次に、辛みを付けたミソと一緒に、
この野菜に包んで食べてみて下さい。」
「レタスに似た野菜ですね。」
「ええ、ヤキニクに合う様に品種改良をしてみました。
そうですね・・・サンチャンと名付けましょう。」
モモヨたちは、ヤキニクをサンチャンに包んで食べてみる。
「なる程、これはサッパリした感じで美味しいですね。」
「体には、この食べ方の方が良さそうだな。」
「肉の味と、ミソの辛みがサンチャンとの相性バッチリだな。」
「マッドパイソンの肉の売り上げと共に、サンチャンが売れる様でしたら、
ブタヅーラ村などの地方の村に委託して、
サンチャンを作って貰おうかと考えています。」
「それは助かりますわ、サスケ様。」
「最後に、この細長い反割れになったパンに、
サンチャンと一緒に挿んで食べてみて下さい。」
「これも食べ易くて良いな。」
「屋台で売ったら人気が出そうですわね。」
「弁当に持って行っても良いぞ。」
「いかがでしょうか?
これらのメニューを冒険者ギルドの酒場や、
街の食堂、屋台などで売れば、
他の街から来た冒険者や商人などによって、
口コミで広まるんじゃないかと思うんですけど。」
「私は十分に行けるんじゃないかと思いますわ。」
「ああ、肉の新しい食べ方として革命が起きると思うぞ。」
「あの、魔導グリルってやつも、価格を控えめにすれば、
店から一般家庭まで売れる大ヒット商品になると思うぜ。」
「では、取り敢えず、
魔導スライサーをミンチさんのお店に1台と、冒険者ギルドに3台、
魔導グリルを50台、タレを100個造りますので、
みなさんの知り合いのお店などに無償で配って貰えますか?」
「無償で良いのか?」
「ええ、すぐに人気が出て元が取れると思いますので、
宣伝費と考えれば安いもんですよ。」
「サスケ、お前なかなか商売ってもんを分かっているな。」




