ベスボル賭博
「そう言えば、ピロンの街も大変だったらしいな。」
「ええ、タイミング悪く、
サスケさまのパーティーが出払っている時でしたので、
偶々(たまたま)街にいらした、
S級冒険者の方と、凄腕の魔法使いの方が居なかったら、
街が落ちていたかも知れません。」
「何て言う名前の人達だったんだ?」
「それが、記録に残したく無いので名前は伏せてくれとの事なんですよ、
討伐報酬も必要無いとの事で・・・」
「へえ、余程の有名人か、
この街に居た事がバレると不味い人達なのかな?」
「お金には困ってないから必要無いと仰っていましたよ。」
「へえ、一度で良いから言ってみたいセリフだな、
そう言う場合の討伐報酬ってどうなるんだ?」
「私が代表して受け取っておきました。」
「お前、仲間に誤爆しといて良く受け取れる・・・はっ!」
サスケは、その時ブタヅーラ村の村長が言っていた、
モモヨが地方の村に便宜をはかってやっていたのを思い出した。
「もしかして、冒険者ギルドの運転資金にするのか?」
「いえ、ベスボル賭博で負けが込んで、
借金が一千万ギル程ありますので返済に当てます。」
「お前は賭け事の才能が無いから、もう止めろ!!」
「それでは、こちらがクエストの達成報酬となりますので、
お確かめ下さい。」
「何か大分多くないか?」
「はい、調査の報酬に加えまして、討伐報酬も加算されておりますので、
その金額となっております。」
「なる程、了解した。」
「フレイムドラゴンの素材はいかが致しますか?」
「うん?ああ、フレイムドラゴンの素材は俺が使おうかと思ってな。」
「何とか血液と肝臓を譲って頂けませんでしょうか?」
「何でだ?」
「フレイムドラゴンの血液と肝臓は、
殿方の下半身に劇的な効果をもたらすので、
王族や貴族の方々に高価で買い上げて頂けるんですよ。」
「でも、王族や貴族に売る伝手なんてあるのか?」
「はい、たくさんのご予約を頂いております。」
「やっぱり、お前はフレイムドラゴンて知ってたんじゃねえか!!」
結局、フレイムドラゴンの血液と肝臓に加えて、
アースドラゴンの素材やハニーベア、アサシンパンサーの素材を、
ギルドで売却してからサスケたちは屋敷へと帰宅した。
「「「「「ただいま~!」」」」」
「「「「お帰りなさいませ、ご主人さま、みなさん。」」」」
「お帰りなさいませ、サブローさま。」
「サブロー、お帰り。」
「おう!みんな元気にしていたか?
ミルキィ様やヴィン爺ぃも・・・・・・うん?
ミルキィ様!?ヴィン爺ぃ!?何でここに!!
てか、ヴィン爺ぃ、死んだんじゃ無かったのか!?」
「サブローさまと一緒に居たくて国を捨てて参りました。」
「ワシが居ると、お主が旅立たないと考えて死んだ振りをしたんじゃ。」
「え~と、取り敢えずミルキィ様の詳しい話は後でお聞きしますので、
少々お待ち下さい。」
「はい。」
「ヴィン爺ぃ、死んだ振りするなんて酷いじゃないか、
俺は凄ぇ悲しんだんだぞ。」
「それは、申し訳ない事をしたが、
お主は旅に出た事を後悔しておるのか?」
「そ、それは・・・」
「今の暮らしを、どう思っておるんじゃ?」
「楽しい・・・最高に楽しいよ。」
「そうじゃろ、お主の顔を見れば一目瞭然じゃわい、
森に居た頃と比べて輝いておるからのう。」
「そうかな?」
「うむ、良い人々と出会えた様じゃな。」
「うん、確かに旅に出なくちゃ出会えない人達だったな・・・
分かった!俺は今の生活に満足しているから、
ヴィン爺ぃのやった事は確かに必要な事だったんだな、
俺を旅立たせてくれてありがとうヴィン爺ぃ。」
「うむ、そう言ってくれれば、
ワシも寂しいのを我慢して、
お主を旅に出した甲斐があると言うものじゃ。」
「ヴィン爺ぃも寂しいって思ってくれたのか?」
「当たり前じゃ、お主は唯一無二のワシの弟子じゃからな。」
「俺の師匠もヴィン爺ぃ唯一人だぜ。」
「何か、サブロー様とヴィン爺ぃ様の御関係って羨ましいですね。」
「そうだ!ミルキィ様、国を捨てて来たってどう言う事なんですか?」
「それが、お父様がサブロー様は川に落ちて死んだのだから、
アルビナ王国の貴族の方と結婚しろと仰って、
勝手に話を進めてしまったんですよ、
ですから、警備が緩んだ結婚式の日に逃げ出して参りました。」
「それにしても、良く逃げ出せましたね。」
「ええ、マッスル王国のライ様にもご協力を頂けまして。」
「なる程、勇者ライの協力を貰えたんですか、
そう言えば、王妃のルクレツェア様は友達だって仰ってましたもんね。」
「ええ、あちらの方もライ様のお妃様でS級冒険者のエルザさんです。」
「もしかして、
ピロンの街に押し寄せた魔獣を討伐したS級冒険者って・・・」
「ええ、エルザさんとヴィン爺ぃ様がご活躍なさいました。」
「そう言う、ミルキィさんも冒険者ギルドで、
負傷者の治療に当たってたじゃないか。」
「そうか、ギルドで治療していた魔法使いってミルキィ様だったんですね。」
「私の魔法なんて大した事ありませんわ、
それよりもサブロー様が造られたという中級治療薬の方が、
たくさんの命をお救いになっていました。」
「でも俺の知り合いも、ミルキィ様のお蔭で助かったって言ってましたよ。」
「お役に立てたなら嬉しいです。」
「エルザ様?ですか、俺はサブロ・・・今はサスケと名乗っていますが、
ミルキィ様や、ピロンの街のために御尽力頂いた様で、
本当に、ありがとうございました。」
「私の事はエルザと呼んでくれれば良いよ、
私もサスケさんと呼ばせて貰うからね、
ミルキィさんはルクアの友達だから、
私の友達も一緒さ、気にしないで良いよ、
この街を助けたのも、行きがけの駄賃ってとこだね。」
「でも、報酬を辞退されたと聞きましたが。」
「ああ、お金には困っていないし、
ルクアと、ミルキィさんの事を護るって約束したからね、
ミルキィさんを護っていて結果的に、この街を守ったって事さ。」
「分かりました。
エルザさん、ありがとうございました。」
「ああ、その言葉だけで十分さ。」




