帰還
レッドたちやゴーレムウルフを造った場所で、
もう一晩の野営をしてから、
いよいよ、サスケたちはピロンの街へと帰る事になった。
夜は、疲れ知らずのゴーレムウルフたちが番をしていたので、
みんな、ぐっすりと眠る事が出来た。
「よし、みんな準備できたか?
じゃあ、ピロンへ帰るとするぞ。」
「「「「はい、お頭。」」」」
「「「「キキ~!」」」」
「「「「「バウワウ!」」」」」
ゴーレムウルフたちは馬車の周囲に散開して、
魔獣の警戒に当たっている、
レッドたちは一人づつゴーレムウルフの背中に跨っていた。
その日の道中は特別問題も無く、
夕方近くになってピロンの街が見える所まで辿り着いた。
「お頭、何か街の様子がおかしくないですか?」
パーティーの中で一番目が良いロリーが言って来る。
「そうか?どれどれ、『遠見』っと・・・
うん?街の防護壁や門が、やたらと傷ついている様だな。」
魔法で視力をアップさせたサスケの目に、
街の惨状が飛び込んで来た。
馬車が街に近づくに従って、
街の周辺の地面が荒れているのや、多くの血痕が見てとれた。
「お頭、こりゃ魔獣の襲撃ですかね?」
「そう見た方が良いだろうな。」
「ダンミーツさん達は、大丈夫でしょうか?」
「見た感じ、傷ついてはいるものの、
防護壁や門は無事の様だから、街の被害は無かったんじゃないか。」
「そうですね、ジャイケルさん達や、
冒険者ギルドの、みんなが撃退したんですね。」
「そう言う事だと思うぞ。」
しばらく進むと、
ようやく、街の門で警備をしているマクソンが見えて来た。
「マクソンさん、ただ今戻りました。
この惨状は魔獣の襲撃ですか?」
「おう、サスケたちか、お帰り。
そうだ、三千頭に上るマッドパイソンの襲撃があったんだぜ。」
「三千頭のマッドパイソン!?
よく、街を守りきれましたね。」
「ああ、普通なら、お前たちが居なけりゃ撃退は難しかっただろうな、
だけど、偶々(たまたま)この街に居合わせたS級冒険者の人と、
凄い魔法使いの爺さんと、ついでにモモヨさんの活躍で撃退できたんだよ。」
「へ~、世界に数人しか居ないS級冒険者が偶々居たなんて、
ラッキーでしたね。」
「おう、その冒険者の人と、
魔法使いの爺さんは誰かの護衛で、この街に来ていたらしいぞ。」
「へえ、そんなビップが来るなんて領主様のところですかね?」
「いや、モモヨさんが案内して来たらしいから、
冒険者ギルド関係じゃないのか。」
「そうなんですか、それ程の襲撃じゃ街の人も負傷したんじゃないですか?」
「おう、結構な数の怪我人は出たが、
お前の治療薬と、冒険者ギルドに居た腕利きの白魔法使いのお蔭で、
死者は出さずに済んだぜ。」
「それは、不幸中の幸いでしたね。」
「そうだな、
もっとも、負傷者の半数はモモヨさんの魔法の誤爆で怪我したんだがな。」
「アイツ何やってんの!?」
「それと、さっきから気になっていたんだが、
あの赤いゴーレムっぽいのと、背中に跨っている人形は何なんだ?」
「あれ?マクソンさんは、まだチビリンを見た事がありませんでしたっけ。」
「チビリンって・・・あれか!ジャクソンさんたちが騒いでいた、
生きてるみたいなゴーレムってやつか。」
「そうです。
お前たち、この人はマクソンさんだ、挨拶をするんだ。」
「「「「キキッ!」」」」
「うおっ!動いたぞ!近くで見るとリンにソックリだし、
本当に生きてるみたいだな。」
「小さいけど中々優秀なシーフなんですよ、
それと、あの赤いのは屋敷の警備用に造ったゴーレムウルフです。」
「へ~、ホントにお前は凄腕の錬金術士なんだな、
あんな凄ぇゴーレム、生まれて初めて見たぜ。」
「俺を鍛えてくれた師匠が凄かったんですよ、
錬金の腕は、まだまだ師匠には敵いませんね。」
「お前以上の腕前って、想像も付かないな。」
街へと入ったサスケたちは、
屋敷に帰る前に冒険者ギルドへ寄って、
クエストの完了報告を済ます事にした。
「ただ今戻りました。」
冒険者ギルドの入り口のドアを開けて声を掛けた。
「あらサスケ様、お帰りなさい。
赤トカゲの討伐は終わりましたの?」
受付に座っていたモモヨが返事を返す。
「赤トカゲじゃねえ!
フレイムドラゴンだったじゃねえか!」
「まあ!何と言う事でしょう!
赤トカゲと思われた討伐対象がフレイムドラゴンだったなんて!?」
「ブタヅーラ村の村長さんは、
モモヨさんに、赤くて羽根が生えていたと伝えたって言ってたけど。」
「ええ、ですから新種の『飛び赤トカゲ』かと思いまして。」
「そんなトカゲは居ねぇ!」
「まあ、討伐対象が何にしましても、
サスケさまのパーティーなら問題無しと判断して、
依頼をご紹介致しました次第です。」
「まあ、それ程の問題があった訳でも無かったがな、
それに、あの村は良い所だったしな。」
「ええ、私も、あの村は大好きなんですよ、
あの村をお救い戴いて、ありがとうございました。」
「おう、何だか、いつものモモヨさんと違って調子狂うな、
あの村に知り合いでも居るのか?」
「ええ、私は、あの村のホクホク芋を、
こよなく愛しておりますので。」
「芋かよ!!」




