ドラゴンのイート
「ただ今戻りました。」
「おお、サスケ殿、本日はいかがでしたかな?」
「残念ながらフレイムドラゴンは見つかりませんでした。
でも、森の奥の方でアースドラゴンを見つけたので狩って来ました。」
「おおっ!さすがですな、
あの森の主を倒されるとは、モモヨさんが自信を持って送り出したのも、
頷けますのう。」
「あの森にアースドラゴンが居るのをご存じだったんですか?」
「はい、村の狩人が目撃した事がありましてのう、
しかし、ワシらがどうこう出来る魔獣では無いし、
アースドラゴンは、ワシらが何かせねば、
基本的に自分の縄張りから出ませんから放っておいたのですじゃ。」
「じゃあ狩る必要も無かったですかね。」
「いいや、フレイムドラゴンに追われて、
村の方に来る可能性も無きにしも非ずですからのう、
狩って頂いて正解ですじゃ。」
「そうですか良かったです。
それで、アースドラゴンの肉を村の皆さんと楽しみたいのですが、
宜しいでしょうか?」
「ワシらは大歓迎ですが、宜しいのですか?
ドラゴンの肉と言えば貴重ですから、
街に持って行けば高値で売れますぞ。」
「ええ、素材は売れますし、
他にも森で珍しい魔獣を狩れましたから、
ドラゴンの肉は皆さんと食べようかと思います。」
「分かりましたぞ、
それでは、ありがたくご馳走になりますじゃ、
村の者にも食事の準備を手伝う様に声を掛けて来ますじゃ。」
「ありがとうございます。
それと、俺も料理を作って皆さんに食べて貰いたいのですが、
畑から野菜を頂いても良いですか?」
「ええ、もちろん宜しいですぞ、
村の者には話しておきますから、ご自由にお採り下され。」
村長は村の者たちに声を掛ける為、歩いて行った。
「そんじゃ、俺はジュリーと畑に野菜を採りに行ってくるから、
サンたちは村の人たちと一緒に調理の準備をしてくれるか。」
サスケは『魔倉』から釜戸作りに使う岩や鉄板、
鍋、薪などを次々と取り出して置いていった。
「「「分かりました。お頭。」」」
畑に着いたサスケはジュリーに指示を出す。
「この縦に長い野菜を収穫してくれるか。」
「はい、お頭。
この野菜はピロンの街では見かけませんね。」
「おお、俺も、この国に来てからは初めて見たな、
俺の居た国では割とポピュラーな野菜だったんだが、
寒くなると出てくる野菜だったんだが、
この村では、一年中採れる様だな。」
「へ~、そうなんですか。」
2人で採っているので、
あっと言う間に30個程が収穫出来た。
「あとはサラダに使えそうな野菜を、
いくらか採って行くかな。」
「はい、お頭。」
しばらく、トマトやキュウリやニンジンに似ている野菜を収穫してから、
サスケはジュリーに声を掛けた。
「よし、こんなもんで良いぞ。
『魔倉』に詰め込んで村に戻ろう。」
「はい、お頭。」
村に戻ると、サンたちと村人たちが協力して、
調理場を作り上げていた。
薪も火熾ししてあるので、
すぐに料理が始められる状態だった。
「俺は鍋料理を作るから、
サンとリンとジュリーは村の人たちとステーキを焼いてくれ、
ロリーは同じく村の人たちに手伝って貰って、
肉を蒸してからサラダを作ってくれるか。」
サスケは『魔倉』から肉やマヨやタルタルに加えて、
先程収穫して来たサラダ用の野菜を取り出して渡した。
「「「「はい、お頭。」」」」
「さて、俺は鍋を作るかな。」
サスケは大きな鍋の底に、先程採って来たハクサイっぽい野菜を、
一枚ずつ並べて敷き詰めていく、
それが終わったら、次は薄切りされたドラゴンの肉を同じ様に敷き詰める、
上にパラパラと塩を撒く、
同じ作業を繰り返していき、鍋の上の方まで敷き詰めていくと、
何層にも渡る野菜と肉の層が出来上がった。
「よし、これで良いぞ、
あとは蓋をして火に掛けるとするか。」
「サスケ殿、水は入れませんのか?」
近くでサスケの作業を物珍しそうに眺めていた、
村長が訪ねた。
「ええ、野菜から出てくる水分で十分なんですよ、
味付けも塩を振るだけで、
あとは肉から出る旨味成分と野菜のエキスだけで、
絶品な味わいとなります。」
「ほう、この様な調理法があるとは知りませんでしたのう、
これは、どこの調理法ですのじゃ?」
「これは、俺が育った島国のジャパンと言う所の調理法です。」
「ほう、そうでしたか、
この料理は他の肉でも出来そうですのう。」
「ええ、普段作るならシモフーリボアとかの肉で作っても、
美味しいですよ。」
鍋を火に掛けて、しばらくするとグツグツと煮立ってきたので、
サスケが蓋を開けると、
何とも言えぬ良い匂いの湯気が立ち昇った。
「おおっ!?野菜から出てくる水分だけで、こんなにも煮えるのですか。」
「ええ、この村の野菜は良質で新鮮だから、
さらに瑞々(みずみず)しいですね。」
他の料理も出来たので、
村長の挨拶の後に、サスケの乾杯の合図で食事会が開催となる、
サスケは『魔倉』から、大人にはハッポーシュやチューハイを、
子供には果実水を振る舞う事にした。
「それでは、この村の安全と平和の為に、
フレイムドラゴンの無事な討伐を願ってカンパ~イ!」
「「「「「「「カンパ~イ!!」」」」」」」
「おおっ!サスケ殿、このハッポーシュと言う酒は料理に合いますな。」
「チューハイと言うのも、甘くて飲みやすいです。」
「サスケ殿が作った鍋は美味いですな、
肉の旨味がしみ込んだ野菜の美味さと言ったらもう!」
「このステーキの美味さも負けてませんよ、
一噛みするごとに最高に美味い肉汁が溢れてきます。」
「肉美味っ!肉美味っ!酒美味っ!肉美味っ!」
「お酒が苦手な方は、オニギリも召し上がってみて下さい。」
サスケは『魔倉』に常に入れてある、
ホカホカのオムスビも大量に皿に盛りつけた。
「ほう、甘みがあって味わい深い穀物ですな。」
「ええ、俺の国の主食でコメと言う穀物です。
コメに水を加えて炊いて、ゴハンにして食べるんですよ、
ゴハンを食べやすい大きさに握ったのが、このオニギリです。」
「米ですか、育てるのは難しいのですか?」
「本来は手間が掛かるのですが、
この米は俺が品種改良した物なので、
病気にならずに早く育ちますよ、
水を張ったタンボと言う所で育てるのですが、
連作障害なども無いのでお薦めの穀物ですね。」
「ほう、それは非常に興味深いですな、
今回の騒動が収まりましたら、是非詳しく教えて頂けますかな?」
「はい、俺も米作りをしてくれる人が増えるのは嬉しいので、
喜んでお教えしますよ。」
「お願い申し上げますじゃ。」




