ドラゴンのクエスト
「お頭が気配を捕えた相手は移動中ですか?」
サンが訪ねて来た。
「いや、一か所に、ずっと留まっているから巣とかじゃないのか?」
「その場所の地形は分かりますか?」
「もっと奥の森の中だと思うぞ。」
「そこが巣だとしたら、相手はフレイムドラゴンでは無いかも知れません。」
「何でだ?」
「フレイムドラゴンは高い場所を好むので、
小高い丘とか、山に巣を作るんですよ。」
「なる程な、森の中に巣を作っているとすると、
他の魔獣の可能性が高いって事か。」
「その通りです。」
サスケたちが、森の中を暫く進むと、
魔獣の気配が濃くなって来たので、
相手に気付かれない様にニンジャの能力『隠密』を発動した。
「まずは様子見だな。」
「「「「はい、お頭。」」」」
森の木々に隠れながら覗いて見ると、
そこには薄茶色い体をした翼が無いドラゴンが眠っていた。
相手を確認したので、サスケは手でサインを送って、
一度、皆を下がらせた。
「やっぱり、フレイムドラゴンじゃ無かったな。」
「はい、あれはアースドラゴンですね。」
「え~と、砂のブレスを吐いて、障壁は無いんだっけ?」
「そうですね、対象物を削り取る物理的なブレスを吐きます。」
「じゃあ、指輪や忍者服の物理攻撃防御で防げるから大丈夫だな。」
「はい、大丈夫だと思います。」
「よし、では対フレイムドラゴン戦に備えて、
アースドラゴンで戦闘訓練を積むとするか。」
「「「「はい、お頭。」」」」
「今回はドラゴンの強さを感じる為に、
まず、お前たちで考えて攻撃してみろ。
頃合いを見て俺も戦闘に参加するぞ。」
「「「「はい、お頭。」」」」
サンたちは、いつもの対魔獣戦の様に、
まず、ロリーが遠距離から弓で攻撃をする事にした様だ。
「はっ!」
ロリーが眠っているアースドラゴンの、
目と思われる場所に向かって矢を放つとカッ!と音を発てて、
跳ね返された。
「ウソ!?障壁が無いのに、あんなに硬いの!?」
その証拠に、アースドラゴンは攻撃されたと認識していない様子で、
矢が当たった部分が痒かったのか、前足でポリポリと掻いている。
「もっと近づいて攻撃しないと駄目ね、
私とリンで直接攻撃してみるから、
ロリーはジュリーに守って貰いながら、
もう少しドラゴンに近づいて攻撃してみて。」
「「「了解。」」」
サンとリンは、忍者刀を抜いてドラゴンに切り掛かってみた。
『グラアアアアアアッ!』
さすがに攻撃が通った様で、ドラゴンが目を覚まして咆哮を上げた。
「行くわよ、『剛弓』」
ロリーが弓職のスキルを使って矢を強化してドラゴンを傷付けた。
「駄目ね、当たった時は傷が付くけど、
すぐに塞がってしまうわ。」
ドラゴンは治癒力が優れている様で、すぐに傷が治ってしまう様だ。
「傷は付くんだから毒を使えば良いんじゃない?」
ジュリーが提案してみる。
「そうね、試してみる価値はあるわね。」
ジュリーの提案に乗って、
サンたちは武器にポイズンスパイダーから採取される毒を塗り付けた。
「行くわよ!」
「「「おう!」」」
再び、サンとリンが切り掛かって行く。
「はっ!」
ロリーは、サンたちが傷を付けた場所を狙って、
毒付きの矢を射って行った。
『グルルルオワァァァァオウッ!』
最初は同じ様に、傷が塞がっていたが、
次第に塞がった部分が黒く変色し始めた。
「効いてるわよ、動きが鈍くなって来たわ。
もう、ジュリーも攻撃に参加して良いわよ。」
「オッケ~。」
ジュリーも、皆より大きめの忍者刀を持って攻撃に加わった。
「はああああっ!」
ジュリーが切り付けると、ドラゴンの体に大きな傷が付いて、
血飛沫が上がった。
「やったわ!」
「やった~!」
ドラゴンの体が大きくよろめいたのを見て、
サンとリンは歓声を上げた。
「気を付けろ!ブレスが来るぞ!」
サスケの声に、ハッとして見ると、
ドラゴンがサンたちの方向に向かって口を開けているのが見えた。
ゴオオオオオオオッ!
灰色のブレスがサンたちに向かって放たれたが、
多少、サンとリンに当たったものの指輪と忍者服によって防御されたので、
2人に怪我は無かった。
「ドラゴンは、他の魔獣と比べると、かなりタフみたいだから、
最後まで気を抜くなよ。」
「「すいません、お頭。」」
「まあ、あいつも最後の苦し紛れのブレスみたいだったから、
全体としては合格点をあげても良いかな。」
サスケの言葉通りに、アースドラゴンは最後の力を使い果たしたのか、
その場から動かなくなっている、
体が上下に僅かに動いている事によって、
辛うじて呼吸をしているのが分かる程度だ。
「よし、止めを刺してやるか、
おっと、その前に『解毒』っと。」
サスケが唱えると、アースドラゴンの体で黒ずんでいた毒が消え去った。
『グラアアアアアアッ!』
「はあああああっ!」
体内の毒が消えたので、再び動ける様になったドラゴンが咆哮を上げたが、
天高く飛び上がったサスケが忍者刀でドラゴンの首を切り付けた。
ザシュッ!と言う音の後で、
一瞬の間をおいてドサッ!とドラゴンの首が落ちた。
わずかに血が噴き出すが、ドラゴンの血は高く売れるので、
サスケは、すぐに『凍結』の魔法で凍らせてから、
本体ごと『魔倉』へと放り込んだ。
「お頭、何で毒を抜いたんですか?」
「死んでからだと『解毒』が効きにくくなるからな、
ドラゴンは色々素材が取れるし、
肉も美味いらしいから先に毒を抜いたんだ。」
「なる程、毒入りじゃ食べられないですもんね。」
「そうだ、毒を使うのは中々のアイデアだったが、
冒険者ならば、利益も考えなくてはならないぞ。」
「確かにそうですね、お頭ならばどう戦われましたか?」
「そうだな・・・
サンとリンに陽動して貰うのは一緒だが、
アースドラゴンが障壁を持たないならば、
顔を狙って『水撃』を撃ち続けて窒息させるかな。」
「ああ、アサシンパンサーの様にですね。」
「そうだ、あの時は真空を使ったが、
アースドラゴンは水系統の魔法が弱点だからな。」
「そこまで計算されての『水撃』なのですね。」
「ああ、勝負は早い方が良いから、効果的な攻撃を心掛けなきゃな。」
「分かりました。」
「お頭、何で、あんなに硬いアースドラゴンの首を、
一撃で切り落とせたんですか?」
「ああ、あれは刀に魔力を通していたからだよ。」
「魔法が苦手なアタイたちには使えない攻撃ですね。」
「まあ、その辺は考えてあるから、
フレイムドラゴン戦では大丈夫だぞ。」
「そうなんですか、それを聞いて安心しました。」
「よし、今日の調査はこの辺までにして、
続きは明日にするぞ。
アースドラゴンの肉が手に入ったから、
村に帰って、村の人たちにも振る舞って、
みんなで楽しむとするぞ。」
「「「「はい、お頭。」」」」
「やった~!ドラゴンの肉楽しみ~。」
「そうね、生まれて初めて食べられるわね。」
「ドラゴンの肉なんて、高くて庶民には手が出ないもんね。」
「ステーキ・・・煮込み・・・蒸し料理・・・」




