森のクマさん
「そんじゃ、今日から魔獣の調査を始めるから、
朝飯を食ったら出掛けるぞ。」
「「「「はい、お頭。」」」」
朝飯は簡単に済ませる事にする、
昨晩の餃子を作った餡が残っているから、
それを具にして中華風スープで味を調えた中華雑炊を作った。
付け合せは、ホロホロ鳥の卵を使ったフンワリ厚焼き玉子と、
キャベツの様な野菜をつかった浅漬けだ。
「お頭、昨夜食べた餃子って匂いは強烈でしたが、
とても美味しかったですね。」
「そうか、みんなが気に入ってくれたなら良かったな、
餃子には、まだ水餃子とか揚げ餃子とかがあるから、
また作ろうな。」
「楽しみです~。」
「でも、食後とか、次の日とかの匂いが気になるから、
バニカラの木が欲しいところね。」
「うん、欲しい欲しい。」
「あ~、バニカラなら匂いが消せるかもね。」
「バニカラの木って何だ?」
「私たちが育った村の森に生えている木なのですが、
樹液が、とても甘い匂いがしていて、
でも、そのまま舐めると凄く辛いんですよ、
だから、村の人間は水で薄めてウガイをしていました。」
「バニカラの木か・・・
もしかすると、俺が探してる物かも知れないな、
その木を見てみたいから、その内に案内してくれるか。」
「はい、久し振りに故郷へ帰るのも良いかも知れませんので、
ご案内します。」
「おう、頼むぜ。」
朝食を食べ終えたサスケたちは、魔獣の調査へと出掛ける事にした。
「じゃあ、村長さん、行って来ますね。」
「「「「行って来ます。」」」」
「ええ、みなさんお気を付けて。」
村長に見送られて村を後にしたサスケたちは、
小型の魔獣たちが移動していたのが目撃された森を、
魔獣たちとは逆方向、
つまり魔獣が恐れているものが存在していると見られる方向を目指した。
「そうだ、お前たちに対フレイムドラゴン用の魔道具を渡しておくから、
各自、装備しておく様に。」
「これは、手袋ですか?お頭。」
「付けても、特別何も感じませんよ?」
「ああ、手に付けるタイプの魔導具だな、
その魔導具は、発動させると、かなり体力を消耗するから、
本番でキーワードを唱えると発動する様になっているんだ。」
「キーワードは何ですか?」
「今、教えるとリンとかジュリーが面白がって使う恐れがあるから、
本番になったら教えるよ。」
「「ええ~っ。」」
「さすが、お頭、良く分かって居られますね。」
「ええ、ありそうな事だわ。」
「おっ、気配察知に何か反応したぞ。」
「どちらの方向ですか?」
「南側だな、風下だから俺たちの匂いに気付いて、
こっちに向かって来ているぞ、
あと10分程で来るから各自、戦闘準備!」
「「「「はい、お頭。」」」」
10分程で現れた魔獣は、
サスケの予測通りに3メートル程の大きさの熊だった。
「この魔獣はハニーベアですね。」
「ハニーベアって、ハチミツを嘗め取る時に使う手と、
肝が高く売れるんだっけ?」
「その通りです。」
「お前たちなら大丈夫だと思うが、
ドラゴンらしき気配に逃げていないって事は、
それなりの強さを持っていると思うから、油断しない様にな。」
「「「「はい、お頭。」」」」
「よし、じゃあロリーは弓で目を狙え、
サンとリンは動き回って撹乱しろ、
ジュリー、肝を傷つけない様に気を付けろよ。」
「「「「はい、お頭。」」」」
まずは、ロリーが見事に弓で片目を射抜いた。
『グワアアア~ッ!』
ハニーベアは、目を傷付けられてカナリ怒っている様だ。
「よし!良いぞロリー、
サン、リン、あいつの足を狙って行け!」
「「はい!」」
サンとリンが、すれ違いざまに忍者刀で足を傷つけて行く。
「ジュリー、俺が隙を作るから首に切りつけろ!」
サスケは手裏剣を投げて、ロリーが弓で潰した方と逆の目を潰した。
『グルワアアアッ!』
両目を潰されたハニーベアは、滅多矢鱈に両の手を振り回している。
「はあああっ!」
ハニーベアの攻撃を掻い潜って、
ジュリーがハニーベアの首に切りつけると、
何歩か歩いた後にドサッ!と倒れ込んだ。
「良くやったな、お前たち、
なかなか良いコンビネーションだったぞ。」
サスケはハニーベアの死体を『魔倉』に回収しながら、
皆を褒めた。
「はい、戦闘中の仲間の動きが感じられる様になりました。」
「敵をどう攻撃すると、後の人の攻撃がし易いか分かる様になったわね。」
「戦闘訓練の効果があった様だな。
おっ、ハニーベアの血の匂いに釣られて次が来たみたいだぞ、
15分後ぐらいに大きさ5メートル程の魔獣が来るぞ。」
次に現れたのは全高2メートル、
全長5メートル程の黒ヒョウの様な魔物で、
口から下向きに大きなキバを生やしていた。
「アサシンパンサーですね、動きが速いから注意が必要です。」
「見るからに毛皮が売れそうだが、どうなんだ?」
「はい、貴族にとても人気があるので、
これ程の大きさとなると高額で売れると思います。」
「やっぱりか、みんなには悪いが、
こいつは毛皮に傷を付けない様に、俺が倒すわ。」
「「「「はい、お頭。」」」」
「よし、『泥沼』『窒息』っと、どうだ?」
サスケが唱えると、アサシンパンサーは突然もがき始めて、
じきにガクッと体から力が抜けた。
「えっ!?お頭、今何したんですか?」
「足を土で動けなくしてから、顔の周りの空気を失くしたんだ。」
「うわ~、苦しそう~。」
「そんな、死に方はしたく無いな。」
「アサシンパンサーには悪い事したが、
この方法が一番毛皮に傷が付かなそうだったんでな。」
「確かに無傷ですね。」
「成仏しろよ、南無~。」
サスケは死体に手を合わせてから『魔倉』に収納した。
サスケたちは、その後も魔獣の調査を続けて、
時折現れる魔獣を討伐して行ったが、
森の中頃程で気配察知に大きな反応があった。
「ここから、2キロ程先に大きなヤツが居るな、
多分、20メートルはありそうな感じだ。」




