寄贈
「ふむ、普通の魔法は問題無いようじゃの、
では、いよいよ本番の『言葉魔法』を使ってみるかのう、
とは言っても特別な事をする訳では無いぞい、
魔法のイメージを強くする為にキーワードを唱えるだけじゃからのう、
適応していれば魔法の威力が格段に上がるが、
それ以外の者は威力が変わらんだけじゃぞい。」
「ヴィン爺は、どんな風に使ってるんだ?」
「ワシの場合は、先程の様な魔法なら『火弾』じゃのう。」
「じゃあ、俺も、それで行ってみるかな、『火弾』」
すると、先程の様な球形の火の玉ではなくて、
銃弾の様な形の火の玉が回転しながら土壁に飛んで行った。
チュド~ン!
標的の土壁を粉砕して、後ろの森が火の海に包まれた。
「こ、これは不味いぞい、『散水』」
森に大量の水が降り注いで鎮火した。
「ふう・・・あとは、『再生』」
焼け焦げた木々が、元通りに青々と茂った。
「ビ、ビックリした~、『言葉魔法』って、
あんなに威力があるもんなんだ・・・」
「いやいやいや、最初は少し強くなる程度じゃぞい、
サブローに適正があり過ぎたんじゃよ。」
「俺、『言葉魔法』に合ってるって事?」
「そうじゃの、これなら『言霊魔導』も使えると思うぞい。」
「それは、どうやるんだ?」
「いきなり使えるとは思えんが、
一応、今度は『氷弾』でやるんだぞい、
『言霊魔導』は魔法を発動する際に、氷を作る精霊、
それを飛ばす精霊、標的を破壊する精霊たちに、
魔力を捧げるイメージをするのだぞい。」
「分かったよヴィン爺、『氷弾』」
『ギャ~~~ン!』
今度は氷の龍が飛んで行きましたけど・・・
土壁を粉砕しましたけど・・・
森が凍りつきましたけど・・・
「ま、まさか、いきなり使いこなすとはのう・・・
まずは森を戻すかのう、『解凍』」
氷に閉ざされた森が元に戻った。
「今のが、『言霊魔導』なのか?」
「そうじゃ、サブローはワシを超える『言霊魔導士になるぞい、
フェルナリア皇国もバカをしたもんじゃ、
魔王以上に厄介な相手を敵に回したぞい。」
「ヴィン爺、『言霊魔導』が、もっと上手く使える様になるには、
どんな練習をすれば良いんだ?」
「攻撃系の魔法は十分じゃから、繊細な魔力操作を身に付ける為に、
氷や岩を使って像でも作ってみれば良いぞい。」
「了解、やってみるぜ、『氷像』」
皇国のミルキィ姫の氷像が現われた。
「なかなか上手いもんじゃのう、
この像にはモデルが居るのかのう?」
「うん、皇国のミルキィ姫だぜ。」
「ほう、なかなかの美人じゃのう、
しかし、この像は少々刺激的過ぎるぞい、
この世界には裸体の像など無いからのう。」
「ふ~ん、そうなんだ・・・
そうだ!良い事を思いついたぜ!
ヴィン爺、『言霊魔導』って空を飛んだり、重い物を運んだりできるか?」
「簡単な事だぞい、本人のイメージ次第で何でも出来る魔法じゃからのう。」
「それは良い事を聞いたぜ、
ヴィン爺、俺、今夜ちょっと出掛けてくるぜ。」
「お主なら、何があっても大丈夫じゃと思うが、
気を付けるんじゃぞい。」
「おう、分かったよヴィン爺。」
俺は、夜になったら山まで『飛翔』で飛んで行って、
『採掘』で大きな岩を切り出した。
魔法で岩を出しても良いのだが、材料があったほうが楽に加工できるのだ。
「ようし、『彫刻』・・・
おお!我ながら、なかなかの出来だぜ、よし!『運搬』」
次の日、フェルナリア皇国で大きな騒ぎが起こった。
「陛下!一大事です!」
「騒がしいぞ、何事だ?」
「街の広場に、大きな陛下の像が現われました。」
「どこぞの貴族の仕業ではないのか?」
「いいえ、それは絶対に違うと思われます。」
「そうなのか?
それで、その像は、どの様な物なのだ。」
「どの様な物と言われましても、私の口からはとても・・・」
「何じゃ?まあ、良いわ、我も見に行くとするかの。」
「陛下が見に行かれるのですか!?」
「そうじゃ、我の像なのじゃろ?」
「そうなのですが・・・」
「何だ?先ほどから煮え切らんの、
まあ、良いわ、馬車を用意せい。」
「はっ、畏まりました。」
城から馬車で街へと出かけた皇帝は、
広場が近づくに連れて像の全体が見える様になってきた。
「何じゃ、これは~!」
その像は全長30メートルはある巨大な岩で出来た、
皇帝の裸像で、そのナニは皮が被って小さく作られたいた。
「我のモノは、あんなに粗末ではないぞ!」
街の広場に、フェルナリア皇国の皇帝、カムリ8世の怒声が響いた。