ミルキィ、ピロンに立つ。
サスケたちが、フレイムドラゴンの討伐へと出発した日の翌日、
ミルキィたちはピロンの街へと到着した。
「身分証明書もしくは、ギルドカードの提示をお願いします。」
街の入り口で、警備のジョジックが告げた。
「はい。」
ミルキィとマリィは、ライが用意したマッスル王国の証明書を、
エルザはギルドカードを提示した。
ちなみに、ヴィン爺ぃは身分を証明するものを所持していなかったので、
魔法で姿を消している。
「エルザさんは、S級冒険者の方でしたか!
私はS級の方にお会いするのは初めてです。
ようこそピロンの街へ!」
「よろしく。」
「そちらの方々も問題ありませんので、
どうぞ街へお入り下さい。」
「ありがとうございます。
少々、お尋ねしますが、
こちらの街で冒険者をされているサスケ様のご住まいはご存じですか?」
「もちろんです。
この街に暮らしていて、
あの馬鹿デカい、サスケの屋敷を知らないヤツは居ないですよ。」
「大きな、お屋敷ですか?
サスケ様は冒険者なのですよね?」
「ええ、冒険者としても出世頭ですし、
錬金術士としても一流ですからね、
あいつは相当稼いでいますよ。」
「そうなのですか、
よろしければお屋敷の場所を教えて頂けますか。」
「ええ、良いですよ。」
ミルキィは、ジョジックからサスケの屋敷の場所を教えてもらって、
皆と共に向かった。
「ホント、大きな屋敷だな。」
「あやつめ出世しおったな。」
「ミルキィ様、畑や厩もあるみたいですよ。」
「本当に、ここに、サブロー様がいらっしゃるのかしら?」
ミルキィは、屋敷の玄関で声を掛けてみる。
「ごめん下さい。」
「はい。」
ガチャッ!と玄関のドアを開けてダンミーツが出て来た。
「こちらは、サスケ様のお屋敷で間違いございませんでしょうか?」
(綺麗な人ね、もしかしてこの方が・・・)
「はい、そうですが・・・」
(この気品は貴族様かしら・・・)
「失礼ですが、サスケ様の奥様ですか?」
ミルキィは、ダンミーツの薬指に指輪が光っているのを見て訪ねた。
「いえ、ご主人様は独身です。
私はサスケ様の奴隷でダンミーツと申す者です。」
「ご挨拶が遅れました。私はミルキィと申します。
ダンミーツ様は奴隷と仰いましたが、
隷属の首輪はされていないんですか?」
「ご主人様が造って下さった、この指輪が同じ役割をしております。」
「まあ!そんなに小さいのに凄いですね。」
「私も、ご主人様の様な、凄い方には初めてお会いしました。
それで、ミルキィ様は本日、どの様な御用で来られたのでしょうか。」
「はい、実は私は行方知らずとなった婚約者を探しているのですが、
どうも、こちらのサスケ様が、その方らしいのです。」
「まあ!ご主人様のご婚約者様ですか!」
「はい、それを確かめに伺ったのです。
それで、サスケ様にお取次ぎ願いたいのですが、お願い出来ますか?」
「申し訳ございませんが、
ご主人様は冒険者ギルドのクエストで出掛けておりまして、
しばらく街を、お離れになられていらっしゃるんですよ。」
「そうなんですか。」
「では、この屋敷で待たせて貰えば良いぞい。」
「あの、こちらの方は・・・」
「ワシは、サスケの師匠じゃ。」
「まあ!ご主人様のお師匠様ですか。
申し訳ございませんが、私の一存で屋敷にお泊めする訳には行きませんので、
少々お待ち下さいませ。
チビリン、居ますか?」
「キキッ!」
ダンミーツが声を掛けると、
いつの間にかダンミーツの肩の上に何かが腰掛けていた。
「この方たちは、ご主人様のお知り合いらしいのだけど、
お屋敷にお泊めしても大丈夫かしら?」
チビリンは、ミルキィとヴィン爺ぃの顔を交互に眺めると、
「キッキキ~。」と指でOKサインを出した。
「チビリンが大丈夫との事ですので、
どうぞ屋敷にお泊り下さい。」
「あの~、その可愛らしいのは何なのですか?」
「この子はチビリンと言いまして、
ご主人様がお造りになったゴーレムなんですよ。」
「これがゴーレム!?まるで生きているみたいですね!」
「ほう、あやつめ腕を上げおったな。」
「こんなゴーレム見た事無いよ。」
「ミルキィ様、とても可愛いですね。」
「チビリンは、ご主人様のお力を分け与えられているので、
ある程度の判断を下せるのですよ。」
「ここまで自立したゴーレムを造るとはな・・・
あやつの成長速度は驚異的じゃのう。」
ダンミーツの案内で屋敷の中へと通されたミルキィたちは、
ウル、ベル、スクルを紹介して貰って、
お互いに挨拶を交わした。
夜はダンミーツとウルが腕を振るった夕食でもてなして、
ミルキィたちは、久し振りの大きなお風呂に身も心も癒された。
各人が部屋へと案内されて、
満足の内に床へと就いた深夜、事件が起こった。
カーン!カーン!カーン!カーン!
深夜の静寂が包み込んでいたピロンの街に、
突如、大きな鐘の音が鳴り響いた。
サスケの屋敷でも、皆が部屋から出て来て、
居間へと集まった。
「お母さん、あの鐘は何なの?」
スクルがダンミーツに尋ねた。
「多分、魔獣の襲来を知らせる鐘よ。」
「ええっ!?大丈夫なの?」
「街には防護壁があるから、きっと大丈夫よ。」
「私は、冒険者ギルドに行ってみるよ。」
エルザが皆に告げた。
「どれ、ワシも行ってみるかのう。」
ヴィン爺ぃも行ってみる様だ。
「私は回復魔法が使えるので、
何か手伝える事がないか、
フローラさんのお知り合いと言う、ギルドのモモヨさんに聞いてみます。」
「ミルキィ様が行かれるなら、お供します。」
ミルキィとマリィも冒険者ギルドに向かう様だ。
「みなさん、お気を付けて下さい。」
「ダンミーツさん達も、お気を付けて下さいね。」
「はい、家はチビリンが居るから大丈夫です。」
「キキ~ッ!」
「そう、チビリン頑張ってね。」
「キ~。」
「「「「では、行ってきます。」」」」
「「「「行ってらっしゃいませ。」」」」




