くっ、殺せ・・・
「この村の男女の違いについては、
ワシの方から、ご説明致しましょう。」
村人と思われる老人が話し掛けて来た。
「あなたは?」
「ワシは、この村の村長であるハナククリンである!
とワシはオーク顔で、そう言った。」
「また、面倒くさそうな人が出て来たな・・・待てよ、
もしかして、ピロンの街のモモヨさんに何か頼まれましたか?」
「よく御存じで、冒険者のサスケ殿と言う方が村を訪れるから、
こう言う風に、出迎える様にと台本を渡されましたんじゃ。」
「アイツめ、また余計な事を・・・
村長さん、アイツの言う事は気にしないで、
普通に話して頂いて宜しいですよ。」
「それは、助かりますじゃ、
ワシも、自分でオーク顔とかって、
どうなんじゃ?と思っておったので。」
「冒険者ギルドの関係者が、ご迷惑をお掛けしました。
街に帰ったら本人に、スンゴイ罰を与えておきますんで、
どうか、ご容赦の程を。」
「いえ、ギルドには迅速に対応して頂いて、
村としても大助かりですので、気にしないで下さい。」
「そうですか?
モモヨを、死罪にして下さいと訴えられても良いんですよ。」
「いやいや、モモヨさんには大変お世話になっていますからな、
普通は、こんな小さな村からの依頼には、
冒険者ギルドは応じんものなのですが、
モモヨさんが、冒険者の方に頼んでくれますのじゃ、
ピロンの街の、周辺の村ではモモヨさんに感謝している村は、
沢山あると思いますぞ。」
「ヤメテ!罰を与える手が緩むから、
モモヨの良い所を聞かせないで!」
「それでは、先程の話も含めて、
今回の依頼に付いてのご説明をしますから、
ワシの家においで頂けますか?」
「分かりました。
それと、馬車や馬を置ける場所をお貸し頂けますか?
食材を持参していますので、
出来ましたら、空き家をお貸し願えると宜しいのですが。」
「おお、それでしたら、
ワシの家の隣に、街へと引っ越した息子夫婦が住んでいた、
空き家がございますじゃ、
納屋や馬小屋もあるので、ご自由にお使い下さい。」
「それは、助かります。」
サスケたちは、村長に案内されて、
村長宅へと向かった。
「あの建物をお使い下さい、納屋と馬小屋は裏手になります。」
「分かりました。
サンは、俺と一緒に村長さんの話を聞いてくれるか、
他3名は、馬に水と餌を与えてから、
馬車と、今晩の寝場所の準備を頼む。」
「「「「はい、お頭。」」」」
「それでは、サスケ殿、サン殿、こちらへどうぞ。」
サスケとサンは、村長宅の居間に通された。
「粗茶ですが、一息付いて下され。」
「これは、緑茶ですか?」
「ほう、サスケ殿は良くご存じじゃな、
この国は紅茶やコヒ茶が良く飲まれておるので、
緑茶は、この辺りでしか飲まれておらんのじゃがな。」
「はい、俺が生まれ育った国では、
良く飲まれていたお茶なんで、
良かったら、あとで分けて頂けますか?」
「ええ、この村では皆作っておりますので、
お分け出来ますよ。」
「ありがとうございます。」
「いやいや、こちらこそ村のお茶で喜んで頂ければ嬉しいですじゃ、
さて、では村の事からお話させて戴きますかの、
この村は、最初、オークに似ているが為に、
女子に相手にされない男たちが、
森を切り開いて作った村でしてな。」
「俺も、子供の頃から猿顔って言われて来たので、
身に詰まされる話ですね。」
「それで、顔はオークに似ていますが、
皆、穏やかで真面目な性格だったので、
畑仕事や牧畜に精を出して、
どんどん村を豊かにして行きましたんじゃ、
そんな、ある日の事、
この村を、オークの村と勘違いした姫騎士様が、
乗り込んでこられたんじゃ、
話をして、すぐに誤解と納得して頂いたのじゃが、
普段、貴族の政権争いや、
足の引っ張り合いに疲れ果てていた姫騎士様は、
この村の、のどかな暮らしに触れて感化されたのか、
そのまま村に、住み着かれてしまわれて、
しばらくしてから、村の者と一緒になりましたんじゃ、
何故か、その後も次々と姫騎士様が来られて、
今では、ご覧の通りの村となった訳ですじゃ。」
「姫騎士様が、見た目じゃ無くて、
中身を見てくれたんですね。」
「そう言う事ですな。」
「良い話ですね、お頭。」
「そうだな。」
「さて、次はギルドに出した依頼の方なのですが、
そろそろ、来るはずなんじゃが・・・」
コンコン!
村長さんが、そう言った時、タイミングよくドアがノックされた。
「メイシアかい?入りなさい。」
「こんばんは、村長さん。」
ドアを開けて入って来たのは、10歳位の女の子だった。
女の子は、男親に似ると言うが、
幸い、メイシアは母親に似た様で可愛らしい容姿だ。
「村長さん、この子は?」
「この子はメイシアと言う名で、
村で唯一、今回の原因らしき魔獣を目撃致しましたんじゃ。」
「ああ、大きなトカゲを見たって言う。」
「そうですじゃ、
メイシア、この方たちは魔獣を退治に来た冒険者の方たちじゃ、
挨拶をしなさい。」
「メイシアです。11歳です。」
「メイシアちゃんか、よろしくな、
俺は冒険者のサスケだ。」
「私はサンよ。」
「では、お前が森で見た物の話をしなさい。」
「はい、メイシアね、森に薬草を採りに行った時に、
大きくて、赤くて、羽が生えたトカゲを見たの。」
「フレイムドラゴンじゃねぇか!モモヨ~!」
フレイムドラゴンは、ドラゴンでも最強と言われる種であり、
物理・魔法を防御する障壁を常時展開しており、
そのブレスは、森を焼き尽くすと恐れられている。
「ええ、ワシたちも、多分そうだろうと思いまして、
モモヨさんに連絡したのですが、
ちょうど良い冒険者が居るから派遣するとの事でしたんじゃ。」
「あいつ、街に帰ったら絶対ぶっとばす!」




