ピンチヒッター・サブロー
「んじゃ、馬車の中で寝ているから、
何かあったら起こしてくれよ。」
みんなと一緒に朝食を食べ終えたサスケは、
ピロンの街へ向けて、出発した馬車の中で仮眠を取る事にした。
「はい、分かりました、お頭。
おやすみなさいませ。」
「おう、おやすみ。」
サスケが寝入ってから、暫くすると・・・
『また、お会いしましたね。』
『これは、夢か?』
『夢であって、夢で無いと言ったところでしょうか。』
『お前は、スクルじゃ無いんだな?』
『はい、あなたと話し易い様に姿を借りました。』
『じゃあ、昨夜の事は現実だったのか?』
『現実であって、現実ではありませんね。』
『なる程ね・・・お前何者だ?』
『私は、この世界シエラザードを見守っている女神フェルナです。』
『女神フェルナって言うと、
フェルナリア皇国が崇めているって神か?』
『そうですね、そのフェルナで合っていますよ、
もっとも、あの国の者たちも最近は信仰が薄くなって来ているので、
そろそろ、神罰を下す必要があるかと考えていますが。』
『まあ、その辺は一般人に被害が出ない様にしてくれれば、
俺的には是非にってやつだな。』
『あなたが皇国の貴族を嫌うのは尤もですね、
でも、責任の一端が私にもあるのです。』
『どう言う事だ?』
『皇国の勇者召喚によって、こちらの世界に来る勇者は本来、
あなたでは無かったのです。』
『誰かの変わりって事か?』
『はい、本来は、あなたと同じ高校に通っていた、
剣 龍馬と言う青年が召喚される予定だったのです。』
『剣 龍馬って成績は常にトップクラスで、
剣道部と空手部を兼任して、両方ともインターハイに連れて行った、
あの剣か?』
『はい、本来は彼が召喚されるところだったのですが、
私が介入して、あなたに変更したのです。』
『何で、そんな事したんだ?』
『はい、それは皇国が勇者召喚を行おうとした時点で、
召喚された勇者を、
魔族が利用しようと画策しているを分かっていたからです。』
『皇国のやつらに神の言葉として教えてやれば良かったんじゃ無いか?』
『今の皇国の神職には、神の言葉を聞ける者は居りません。』
『それもそうか~、
でも、何で俺に変えたんだ?』
『そっ、それは、剣 龍馬を魔族に利用された場合、
こちらの世界に大きな被害が出ると予測されたので・・・』
『なる程ね、無能な俺がピッタリだった訳だ。』
『い、いえ、無能とまでは言いませんよ、
何と言うか、影響が出にくい人と言いますか・・・
人畜無害な方と言いますか・・・』
『同じ事じゃねえか。』
『い、いえ、その様な事はありませんよ、
実際に、皇国の者たちが、ちゃんとあなたのステータスを鑑定して、
あなたに合った勇者育成をしていたら、
多大な被害が出ていたと思われますもの、
あなたが持つスペックも、かなりの物だと思いますよ。』
『それは、女神さまにも予想外だったんじゃないのか?』
『い、いえ、そ、その様な事はありませんよ、
皇国が勇者召喚の儀式を行った時に、とっさに介入して、
近くに居て、もっとも被害が少なくなる人物を検索した結果が、
あなただったのですよ。』
『何か、結果オーライのスメルがプンプンするな。』
『い、いえ、その様な事はありません、
今の状況は必然の為すものだったのですよ。』
『そうかな~?
まっ良いか、それで女神さまは、何の用で現れたんだ?』
『はい、世界の危機を回避する事が出来ましたので、
協力者の、あなたが望むならば地球にお返ししようかと思いまして。』
『地球に帰れるのか!?
そうか・・・帰れるのか・・・でも・・・
返さなくて良いや。』
『宜しいのですか?』
『ああ、家族とか、友人・・・は居ないか、
飼い猫のユキとか気になるけど、
俺は、こっちの世界に大事なやつらが出来ちまったからな。』
『そうですか、分かりました。
では、せめてものお詫びに、こちらの世界で暮らし易い様に、
私の加護を授けて置きますので役立てて下さいね。』
『おう、サンキュー!』
『では、あなたのシエラザードでの人生に幸多からん事を!』
「う、う~ん・・・」
「お目覚めですか、ご主人さま、良くお眠りだった様ですね。」
「お早うベル、俺、結構長く寝ていたのか?」
「はい、もうすぐお昼になりますよ、
サン様たちが昼食に使える場所を探していらっしゃいます。」
「もう、そんな時間か、
いつも眠りが浅い俺にしては、随分深い眠りだったな・・・
そう言えば、何か夢を見ていた様な気がするな、
かなり印象的な夢だった気がするんだけど思い出せんぞ?」
「そう言えば、ご主人さまが寝言を呟かれて居られましたね。」
「何て言ってたか分かるか?」
「はい、女神フェルナ様がどうとか・・・。」
「あっ!?思い出したぞ!
夢の中で、女神フェルナが何か能力をくれるって言ってたな、
本当の事だったのか調べてみるかな。」




