鉄拳制裁
「ボンビーさん、今日のお薦め料理を9人分お願いします。」
「いらっしゃいませ、サスケ様。
お薦めコースを9名様分ですね、畏まりました。ホワッツ!」
「ご主人様、私たちも同じ料理を頂いても宜しいのでしょうか?」
「ああ、サンたちも、いつも俺と同じ料理だぞ。」
「サン様たちは、戦闘奴隷なので体が資本ですから、
ご主人様と同じ料理でも、おかしくは無いですが、
私たちは一般奴隷ですので・・・」
「俺んとこは、同じ料理を一緒に食べる事にしているから、
構わんぞ。」
「そうですか、ご主人様がそう仰って下さるなら、
ご一緒させて戴きます。」
「おう。」
しばらくすると、ボンビーが料理を運んで来た。
「うわ~、美味しそう!」
食べ盛りのスクルが嬉しそうにしている、
他の者も奴隷商では大した物を食べさせては貰えないだろうから、
久し振りの豪華メニューだろう。
「遠慮しないで、たくさん食べて良いからな。
では、いただきます。」
「「「「はい、ご主人様。いただきます!」」」」
「「「「いただきます。」」」」
食事を楽しんでいると、
突然、ガラガラン!という音が響いた。
音の方を見てみると、スクルが食べていた料理の器を、
冒険者らしい男たちが落としたらしい。
「何だぁ!この食堂は、奴隷と一緒の物を食べさせるのか!」
「奴隷は、俺たちが目に付かないとこで食べさせやがれ!」
スクルは泣きそうな顔でオロオロしている。
俺は、まだ手を付けていない料理をスクルの前に置いて、
「これを食べて良いぞ。」と、頭をポンポンと撫でながら言ってやった。
「お前が、この奴隷たちの主人か?
奴隷を食堂で食べさせてんじゃねえぞ!こら!」
「ふざけたマネしてんじゃねえぞ!
常識ってやつを教えてやるか!こら!」
ドカッ!バキッ!
サスケは無言で、絡んできた冒険者たちをぶっ飛ばした。
「アゴの骨を砕いておいたから、
しばらく食堂で食事する必要は無いだろ。
誰か、他に飯を食えなくして欲しいヤツは居るか?」
「「「「「・・・・・・・・」」」」」
「居ねえみたいだな、じゃあ食事を続けるか。」
サスケは席に戻って食べ始めた。
床に転がっている冒険者たちは、
ボンビーがズルズルと引きずって、どこかに連れ去った。
「ご主人様って、お強いんですね。」
「ああ、アタイたちは元Dクラス冒険者なんだけど、
4人掛かりでも、お頭には全然敵わないからね。」
「実力的にはAクラスでも問題無いと思いますよ。」
「Aクラスって言ったら、大きな街に行かないと居ませんよね。」
「そうだな、大概、その街の冒険者ギルドの主力だよな。」
「お頭は、腕っぷしの強さも然る事ながら、
錬金や鍛冶も熟すんだから凄すぎるよな。」
「まあ!ご主人様は錬金や鍛冶もできるんですか!?」
「ああ、私たちが使っている武器も、
全部、お頭が作った物だし、
治療薬や魔力回復薬も作ってくれるんだよ。」
「どうりで私たちを買うのに、ポンと200万ギルも出せる訳ですね。」
「「「えっ!?200万ギルも払ったんですか!お頭。」」」
「リンにも言ったんだが、
ウサ耳には、それだけの価値があるんだよ。」
「ううっ・・・私たちはタダで手に入れたのに・・・」
「鷹に耳は無い・・・」
「お頭、料理お代わりしても良いですか?」
「お代わりしても良いぞ、ジュリー、
それと、サンたちを手に入れた頃は、今ほど稼げていなかったからな、
4人を買う金はあったが、生活していくのは難しかっただろうな。」
「それでしたら、仕方がありませんね。」
「お頭に買われたのは幸運でしたしね。」
「モグモグモグモグ。」
「そう言えば、ダンミーツの旦那さんは病気で亡くなったと聞いたが、
最近の話なのか?」
「はい、主人が亡くなったのは3か月前なのですが、
病気の方は2年ほど患っていました。」
「2年も病人を看病しながらの生活じゃ、大変だったろう。」
「はい、幸いにも我が家は、
それなりの広さを持った農地と牧場がありましたので、
それらの土地を少しずつ売りながら生活していました。」
「旦那さんは、ちゃんとした医者に見て貰っていたのか?」
「はい、ご領主様に、
ご紹介して頂いた、お医者様に診て頂いておりました。」
「誰の紹介だって!?」
「ご領主様です。」
「どこで、領主と知り合ったんだ?」
「はい、ウルとスクルが下働きに通っていた、
名主様のお屋敷に来られた事がありまして、
その後、何度か主人のお見舞いと申されて、
我が家に来られていました。」
(旦那さんは、本当に病死だったのか?)
「ダンミーツたちは、最初からカモネーギの奴隷商に行ったのか?」
「はい、ご領主様は知り合いの奴隷商に高値で買う様に、
ご紹介下さると仰って頂いたのですが、
うちの主人と、カモネーギさんは知り合いだったので、
そちらに、お願いしたのです。」
(こりゃ、怪しいなんてもんじゃねえな、
こちらに付いても調べてみた方が良いかな・・・)
食事を終えて、ダンミーツたち家族は他に4人部屋を取って休ませてから、
サンたちの部屋に行って、今日の聞き込みの成果を聞く事にする。
「店の方の聞き込みは、どうだったか?」
「はい、ここ2年程の間に、
食材や物資などがフェルナリア皇国から、
豊富に輸入される様になったみたいです。」
「飲食店では、皇国の名物料理などのメニューが増えるのに伴って、
かなりの人数の料理人も皇国から来ているらしいです。」
(料理人の中に間者が入り込んでるかもな・・・)
「皇国からの荷物は、どこの街から送られているんだ?」
「はい、食材、物資ともエクサリアの街からとの事です。」
「皇国のエクサリアの街って言うと、領主はバビントン辺境伯か。」
「はい、その通りです。
良くご存じですね、お頭。」
「ああ、前に皇国の地理について勉強した事があってな。」
「そうなんですか。」
「そうすると、この街の領主が頻繁に手紙を送っている相手も、
バビントン伯かな?」
「そうです。
手紙を運ばせるのに、それなりの腕前を持つシーフを雇っていました。」
「じゃあ、取り敢えずは、
その手紙に何が書かれているのかを探ってみるか。」
「その方が良いですね。」
「まあ、そちらは俺が対処するから、
お前たちは交代で、一人はダンミーツたちの護衛に残る様にして、
残り3名は、皇国から来た料理人で、
不審な行動を取るヤツが居ないか調べる様にしてくれ。」
「「「「分かりました。お頭。」」」」




