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転落勇者の人生大逆転物語  作者: シュウさん
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大の呼び声

「ヴィン爺、まずは何からすれば良い?」


「まずは、素質の取得に必要な知識を憶えるのじゃな、

この本の内容を頭に叩き込むのじゃ。」


ヴィン爺は3冊の本を俺に手渡した。

「『スライムでも分かる魔獣大百科』

 『わかる!ゴブリンも見分ける野草辞典』

 『できる!コボルト君の鉱石採取をしよう』

これって手書きみたいだけど、ヴィン爺が書いたの?」


「そうじゃよ、大きな街の図書館なら、

どこでも置いてると思うぞい。」


「そんなに、たくさん書くんじゃ大変だったんじゃないの?」


「普通の本は書き写すから大変な手間じゃが、

ワシは『複製』の魔法で作ったから、

書いたのは最初の一冊だけじゃぞい。」


「おお!ヴィン爺の魔法は万能だね。」


「ワシの『言霊魔導』は、何をするか強くイメージするだけじゃからな、

まあ、それが他の者には難しいらしいんじゃが、

こればかりは、人に説明できるもんじゃないからのう。」


「鳥に何故飛べるか聞くようなもんか・・・」


「なかなか上手い事言うのう、

まさに、その通りじゃよ。」


「それじゃ、まず3冊の本を暗記してみるね。」


「うむ、始めるが良いぞ。」


俺は、本を読み始めて直ぐに違和感に気付いた。

本の内容が簡単に憶えられすぎるのだ、

地球の頃の俺は大した成績ではなくて、

特に暗記物を苦手にしていたのだが、

現在は本のページを開いた瞬間に丸ごと頭にコピーされる感じなのだ、

分厚い本を3冊憶えるのに3時間程で済んでしまった。


「ヴィン爺、3冊とも憶え終わったよ。」


「何!?まだ3時間程しか経っとらんぞい。」


「何か、どんどん頭の中に入るんだよ。」


「では、試してみるぞい・・・」


ヴィン爺が幾つかの質問をしたが、

俺はスラスラと答えられた。

「ビックリしたのう、お主の記憶力は段違いじゃのう、

これなら次の修行に入っても良いかの。」


次の修行は、森の木の枝に沢山の丸太をぶら下げて、

始めはユックリと、

そして次第にスピードを上げて駆け抜けるというものだった。


「これは、回避力と走力を一度に鍛えられるから、

シーフ向きの修行なのじゃ。」


俺は最初はジョギング程度の速度で、丸太を躱しながら走っていたのだが、

段々と速度を上げて行くと、

オリンピックの短距離選手さえ、

軽く凌駕りょうがしてると思える程の速度で走れてビックリした。


最初は丸太を躱し損ねて掠ったりしていたのだが、

徐々に周囲の景色がスローモーションの様に見えて来た。


「どうやら、回避力と走力を習得したようじゃの、

では次に隠密と気配察知の修行を始めるとするかの、

サブローよ、森の中の獣道に移動するぞい。」


「うん、分かったよヴィン爺。」


俺たちは、森の中にある道幅1メートル程の道へと移動した。


「サブローよ、

お主は、ここで目を閉じてケモノや魔獣の気配を感じ取り、

同時に己を悟らせずにやり過ごすのじゃ。」


「え~っ!熊とかオークとか出て来たら殺されちゃうよ!」


「うむ、この森には、それ程強いケモノや魔獣は居らんと思うが、

一応、結界でも掛けて置くかのう『透壁とうへき

どうじゃサブロー、目の前に手を伸ばしてみるぞい。」


「おおっ!見えない壁がある!」


「オーガの攻撃でもビクともせんから、

安心して修行に励むが良いぞい。」


「ありがとう!ヴィン爺。」


ヴィン爺は夕方になったら迎えに来ると言い残して、

小屋に帰って行った。


俺は、1時間程、目を閉じて座禅を組んでいたのだが、

気配察知は何となく掴めた感じがする、

しかし、隠密は習得出来ない状態になってしまった。


俺は、今、青ざめた顔でダラダラと脂汗を流しているのだ、

何故かと言うと猛烈に大がしたくなってしまったからだ、

ヴィン爺から結界の解き方を教わっていなかったので、

パンチやキックを叩き込んでみたのだが、

結界はビクともしなかった・・・

何回かの強烈な波を乗り越えたが、

我ながら限界が近づいているのが分かった。


「仕方が無い、最後の手段を取るしかないか・・・」

俺は、その場でズボンを下ろして、しゃがみ込んだ。


「あんた、そんな所で何してるのよ?」


俺は、後ろから声を掛けられたのでソ~ッと振り返ると、

そこには10代中頃ぐらいの4人組みの冒険者らしき、

獣人の女の子たちが居た。


「何をしてるかって言えば、修行だな。」


「羞恥心を克服する修行?」


「いや、気配察知と隠密だ。」


「道の真ん中でケツを出しても気付かれないように?」


「いや、この体勢には別の事情があるんだ、実は・・・」

俺は、自分が置かれた危機的状況を女の子たちに切実に語った。


「何だ、そう言う趣味でやってるんじゃ無かったんだね、

それなら、私たちが結界を壊してあげるよ。」


「おお!それは助かる。」


リーダーらしき、

犬獣人で戦士タイプの子が剣で結界を叩いた。

カキ~ン!

「痛ぁ~い!何て硬さの結界なのよ、

黒魔鋼の剣じゃなかったら、折れちゃってたわね。」


「リーダー、次はアタイにやらせてよ。」

シーフタイプのネコ獣人の子が投剣を持って構えてから、

結界に向かって投擲した。

カキン!カキン!

投剣は2本とも跳ね返された。

「あちゃ~っ、ダメか~。」


「やっぱ私がやらないと駄目かな、

結界ごと首切っちゃったらゴメンな。」


「ゴメンで済むか!」


身長が190センチはありそうな、

ガッチリした体格の虎獣人で重戦士タイプの子が、

黒魔鋼製らしい大剣を構えて振り下ろした。

グワ~ン!

結界は壊れずに、虎獣人の子は後ろを向いてプルプルしている、

相当、手が痺れたらしい・・・


「これは、私たちじゃ手に負えないわね。」

背中に鷹のような翼を付けた、弓職の子が言った。


「と言う訳で、

私たちじゃ、どうしようも無いみたいだから、

私たちが居なくなってから用を足してね。」


「見捨てて行くのか!」

俺は、彼女たちの方を振り返って叫んだ。


「「「きゃ~っ!」」」

「ズボン下げたまま振り返るな!」


彼女たちが去って行き、

彼女たちの「地面に穴を掘って埋めれば被害が少ないんじゃ・・・」

と言うアドバイスに従って用を足し終えてから、

地面を掘って結界から出れば良かったんじゃね?と気付いた。




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