ダンディ
今日も、馬車は順調に進んで、
この分なら、暗くなる前にラッスンの街へ到着しそうだった。
「じきに街が見えて来ると思うから、
各自、カラーウイッグとグラサンを付けるのを忘れない様にな。」
「「「「はい、お頭。」」」」
「そう言えば、変装は良いけど、
街の入り口でギルドカードとか調べられないのか?」
「はい、お頭のカードだけですね、
私たちは隷属の首輪をしているので、
お頭の所有奴隷かを聞かれるだけです。」
「なら、隠れて街に入る必要は無いな。」
「はい、大丈夫です。」
太陽が地平線に近づき、
周囲の景色がオレンジ色に染まり始める頃、
ラッスンの街の防護壁が見え始めた。
「今日は、すぐ暗くなってしまうから、
聞き込みなんかは明日からになるんだけど、
お前たちが使っていた宿屋以外で、
どこか良い宿屋を知っているか?」
「そうですね・・・
多少、割高ですが食事が美味しいと評判の宿屋を知っていますが、
そちらで良いでしょうか?」とサンが訪ねる。
「おお、資金は十分にあるから、
値段は気にしないで良いぞ。」
「では、街に着いたら、そこに向かう様にします。」
「おう、頼むぞ。」
街の入り口に近づくと、
ピロンの街の様に警備をしている兵士が立っていた。
「そこで馬車を停めろ、
変わった服装だが冒険者か?
冒険者ならギルドカードの確認をするから提示する様に。」
「はい、ピロンの街の冒険者でサスケと申します。
ギルドカードは、こちらになります。」
「ふむ・・・大丈夫みたいだな、
後ろの派手な娘たちは、お前の奴隷か?」
「はい、俺とパーティーを組んでいる戦闘奴隷です。」
「そうか、奴隷が何か騒ぎを起こしたら、
主人の責任となるから気を付ける様にな。」
「はい、分かりました。」
「よし、じゃあ通って良いぞ。」
「ありがとうございます。」
馬車は無事にラッスンの街へ入る事が出来た。
「お頭、それでは私が知っている宿屋に向かいます。」
「おう、頼む。」
少し馬車を走らせて、街の中心街から200メートル程入ってから、
サンは馬車を停めた。
「ふ~ん、『豚の骨亭』か、
名前からして料理が美味そうな宿屋だな。」
「馬や馬車が置ける場所を聞いて参りますので、
少々、お待ち下さい。」
「分かった。」
サンが宿屋の人に聞きに行っている間に、
サスケは明日の予定を考える事にする。
「お前たちの中で、この街に一番詳しいのは誰だ?」
「そりゃ、アタイですね。」
「そうだな、リンはクエストが休みの日には街に遊びに出ていたからな。」
「特に、飲食店には詳しいわよね。」
「よし、じゃあ明日は、
リンに俺と街の説明がてら行動して貰う様にして、
あとは各自、情報を集める様にしてくれ。」
「「「はい、お頭。」」」
宿の人に聞きに行ってたサンが出て来た。
「お頭、馬と馬車は宿の人が移動してくれるそうなので、
ここで降りてしまって良いそうです。」
「そうか、じゃあ皆、行くぞ。」
「「「「はい。」」」」
宿の入り口を入ると正面にカウンターがあった。
「いらっしゃいませ~!
『豚の骨亭』にようこそお出で下さいました。
私、当宿の女将を務めておりますダンディ・イタイノと申します。グワッツ!」
そこには、真っ黄色のジャケットとタイトスカートを身に付けた、
うっすらと髭が生えているオネエが立っていた。
「女将って、あなた男ですよね。」
「いいえ、女です・・・心は。」
「心はって・・・
名前もダンディじゃないですか。」
「正式にはダンディライオンです。」
「タンポポかよ!!」
「ええ、そのイメージを尊重して、全身イエローで決めてみました。」
「最後の、グワッツ!って言うのは?」
「ただの口癖です。」
「えらい口癖だな!!」
チェックインで多少の騒ぎはあったものの、
サスケたちは部屋へと移動する、
部屋割りは、サンとロリーで一部屋、リンとジュリーで一部屋、
夜遊びに出掛けようと考えたサスケは一人部屋を取った。
「少し時間的に早いけど、
部屋に荷物を置いたら食堂で夕飯にしようぜ。
衣類なんかは部屋に置いて良いけど、
金目の物は魔導ポーチに入れておけよ。」
「「「「はい、お頭。」」」」
宿の食堂に行くと、時間的に早い所為か席はガラガラだった。
「やっぱり、ちょっと早かったようだな。」
皆で席に付いてから、食事を注文をする為に係の人を呼んだ。
「すいません!注文をお願いして良いですか。」
「は~い!ただ今、承ります。」
注文を取りに来たのは、女将にソックリな顔をしているが、
ツギハギだらけの服を着たウエイターだった。
「あの~、さっきの女将じゃ無いですよね?」
「ええ、双子なので良く間違われるのですが、
私は弟のボンビー・イタイノです。ホワッツ!」
「こっちが、ホワッツだよ!!
女将、弟に服買ってやれよ!!」




