知ってるぞ。
「お頭、時間だよ。」
馬車で寝ていたサスケは、リンに声を掛けられて目が覚めた。
「おっ!俺の番がきたんだな。」
「そうです。」
「よし、お前らは、もう休んで良いぞ。」
「「お休みなさい、お頭。」」
「お休み~。」
サスケは、焚火の火を絶やさない様に何本か薪をくべてから、
傍らに腰を下ろした。
「寝ずの番と言えば、コーヒーだよな。」
こちらの世界では、コーヒーは無いのだが、
コヒ豆から作られたコヒ茶という物が飲まれていて、
味や香りがコーヒーに良く似ている。
サスケは粉状になったコヒ茶をカップに入れて、
焚火で沸かしておいた、お湯を注いだ。
ズズ~ッと一口啜って、
「ふ~っ、星空の下で飲むコヒ茶も良いもんだな。」と洩らした。
コヒ茶を飲み終えると、
途端にやる事が無くなって静寂に包まれる、
聞こえるのは焚火のパチパチと木が爆ぜる音だけである。
静寂の中で、夜の闇に包まれていると、
サスケは誰かの視線を感じるような気がして来た。
気配察知に反応が無いので、
周囲には何も居ない事は分かっているのだが、
暗闇が錯覚を引き起こすのである。
「そこから、見ているのは分かってるんだぞ。」
サスケは、何となく言って見るが、
もちろん答えは返って来ない。
「お前が、そこに居るのは「お頭、静かにして下さい。」
はい、すいません。」
再び、サスケを静寂が包み込む。
ふと、夜空を見上げると、
そこには降り注ぐ様な星空が広がっている、
こちらの世界にも星座の概念があって、
各国ごとに好き勝手に名付けているようだ、
サスケが居たフェルナリア皇国では、
北の空にオレンジ色の温かい色を放ちながら輝くフェアリー星を中心にして、
王女の名前から『ミルキィ座』と名付けられた星座があった。
『ミルキィ座』を見つめていると、
ミルキィ姫と過ごした幸せな日々が思い起こされた。
「ミルキィ~!「「お頭、うるさいです。」」
ごめんなさい。」
「一人で、じっとしているから、
色々考えちゃうんだな、
少し体を動かしてみるか。」
サスケは、地球に居た頃に好きだったカンフー映画の動きを真似てみる、
あちらの世界では、少し動くと関節や筋を痛めていたが、
こっちに来てからの体は、サスケが思う通りに動いてくれるので、
その動きは、どんどん洗練されて行って、
アクションスター顔負けの動きになっており、
サスケのテンションも最高潮となっていた。
「ホォアチャ~ッ!!「「「「うるさ~い!!」」」」
申し訳、御座いません。」
サスケの一人遊びの夜が明けて、地平線に朝日が昇って来た。
「やっと朝か・・・
寝ずの番は、一人では暇すぎるから、
ウチのパーティーも一人増やして6人にした方が良いかな?」
「お頭、お早う御座います。」
「お頭、おはよ~。」
「寝ずの番は、いかがでしたか?」
「ぐうぐうぐう・・・」
「おう、お早う。
やはり、寝ずの番は話し相手が居た方が良い様だな、
暇で死にそうだったよ。」
「そうですね、喋っていた方が眠くもなりにくいですからね。」
「そうだな、
そろそろ、朝飯を作るからジュリーを起こしてくれるか。」
「分かりました。」
朝飯は、凝ったメニューにはせずに、
シモフーリボアのベーコンを軽く焙ったものに、
ホロホロ鳥の卵で作ったスクランブルエッグを添えたオカズだ。
それに、暴れモロコシのポタージュスープと、
自家製食パンのトーストを付けた。
「よし、食べよう。」
「「「「いただきます!」」」」
「お頭が作ったパンて、軟らかくて美味しいですよね。」
「ホント、こんな軟らかいパン、食べた事無いよね。」
「ほのかな甘みがあって美味しいです。」
「もぐもぐもぐもぐ。」
「ああ、こっちのパンは原料や作り方が違うからな、
スープなんかに浸して食べる分には良いけど、
そのまま食べるには硬すぎるよな。」
朝飯を食べ終えて、一休みしてからの出発となるが、
今日は、いよいよ一行がラッスンの街へ到着する予定だ。




