野営イエ~イ!
獣人娘たちが風呂から上がったので、
晩飯を食べる事にした。
「よし、飯にするぞ、いただきます。」
「「「「いただきます!」」」」
「まずは、シモフーリボアで作ったボアカツからだな、
こっちの黒っぽいのがソースって言う調味料だ、
辛いのが好きなヤツは、
こっちの黄色いカラシと言う香辛料を付けると上手いぞ。」
「お頭、外側の衣はサクッと軽い歯ごたえで、
噛むと中から肉汁が溢れてきて美味しいです!」
「このソースって美味しいですね、
私はキャベツンて青臭くて苦手なんですけど、
ソースを付けると甘く感じて美味しいです。」
「カラシって言うのを付けると、
ツーンと鼻に辛みが抜けるけど、一味変わって美味しいですね。」
「モグモグモグモグ」
「喜んで貰えたようで何よりだ、
2杯目はボアカツドンだぞ。」
「これは、ボアカツとアマアマネギを卵で綴じているのですか?」
「そうだ、ご飯の上に、汁ごと具を乗せる丼物ってやつだな、
俺は丼物は究極のご飯料理って思うぞ。」
「味がしみたご飯と一緒に、具材を口に入れると格別ですね。」
「汁がしみこんで、しっとりしたカツの皮も美味しいです。」
「半熟卵とボアカツの生み出すハーモニーが絶妙です。」
「ガツガツガツガツ」
「よ~し、カツ尽くしの飯を食ったからには、
ラッスンの街の領主に勝つぞ!」
「「「「はい!お頭。」」」」
準備が整ったサスケたちは、
翌朝、新規に購入した馬車に乗ってピロンの街を出発する事にした。
「おはようございます。
ジャイケルさんとマクソンさん。」
街の入り口を警備していた2人に声を掛けた。
「おう、サスケか、おはよう!」
「馬車なんて乗って、どこか遠出でもするのか?」
「はい、ラッスンの街に用事が出来まして、行ってきます。」
「まあ、お前たちなら心配いらないと思うが、気を付けて行くんだぞ。」
「はい、ありがとうございます。気を付けます。」
御者台には馬を操るサンとサスケが座り、あとの3人は中に居る。
「お頭、中じゃなくて良いんですか?」
「おう、ここの方が景色が良く見えるし、
俺だけ馬車が操れないから、見て勉強しようかと思ってな。」
「そうですか、分かりました。」
「お頭、この馬車ぜんぜん揺れませんね。」
「本当、お尻が痛くならなくて助かるね。」
「馬たちも、馬車を引いているとは思えない程、軽々と歩いてるね。」
「魔法が上手く働いているみたいだな、
後は、たまに馬たちに疲労回復の魔法を掛けてやれば完璧だな。」
馬車の旅は順調に進み、
その日の夜は初めての野営となった。
まず、一日頑張ってくれた馬たちに、
川で水を飲ませてやり、エサや塩を与えてから、
汗を拭いてあげてからブラシ掛けをして疲労回復魔法を掛けると、
また直ぐにでも出発できそうな程、元気になった。
「お頭に飼われる馬は幸せですね。」
「俺は、自分の財産を良好な状態にしているだけだ。」
「はいはい、そう言う事にしておきます。」
「本当だぞ!純粋に資産価値を落とさない様にだな・・・」
サスケが何か言い訳をしているが、聞き流されている様だ。
馬たちが居るので、魔獣を警戒する為に寝ずの番を行う事にして、
獣人娘が2人づつ、サスケは一人でやる事にする。
「お頭は休まれていて良いですよ。」
「いや、一度やってみたかったんだよ、
野営の寝ずの番なんて冒険者っぽいじゃん。」
「はあ、お頭がやりたいなら、良いのですが。」
「今日の晩飯は野営の定番メニューである骨付き肉です!」
「まあ、肉料理は良く食べますけど、
骨が無い方が食べ易いんじゃないですか?」
「いいや、骨が付いている方が、
当社比8分の5ぐらい美味しくなると言うデータがある。」
「良く分からないデータですね。」
「まあ、お頭が作るご飯は、いつも美味しいから良いんじゃない。」
「肉は正義です。」
「肉料理賛成!」
「じゃ、骨付き肉で決定って事で・・・」
サスケは、人数分の焚火を起こして、
その両脇にY字の木を2本づつ立てていき、
その上に、両側から骨が突き出した肉の塊を乗せていった。
「味付けはシンプルに塩コショウのみだな。」
しばらくすると、火に焙られた肉から油が溢れ出して、
サスケがクルクルと肉を回転させると、
良い匂いと共にジュウジュウと音を発て始める。
ゴクリと誰かが唾を呑む音がした。
「うわ~っ!お頭、めっちゃ美味そうです!」
「早く、齧り付きたい!」
「この油が焼ける匂いがまた・・・」
「もう、食べられるんじゃないですか?」
「まだだ!肉の芯の部分に火が通るか通らないかの見極めが、
この料理の真骨頂だからな。」
皆が押し黙る中に、ジュウジュウと肉が焼ける音のみが流れて行く。
皆が見守る中、ジッと肉を見つめるサスケの目がカッと見開いた。
「今だ!お前ら、肉をかっ喰らうんだ!」
「「「「はい!お頭。」」」」
獣人娘たちはサスケと共に、
自分の前にある肉の両側から突き出た骨を握ると、
ガブリと喰い付いた。
「熱っ!美味っ!熱っ!美味っ!」
「う~、美味すぎる~。」
「外はカリッと、中はシットリですね。」
「ガツガツガツガツ」
「お~、想像を超える美味さだな、
野営で食べるというロケーションも一役買ってるんだろう、
たぶん、店で食べても、ここまで美味しく感じないだろうな。」
サスケは栄養バランスも考えて、
『魔倉』から野菜のサンドウイッチと、
特製野菜ジュースを取り出して獣人娘たちに与えておいた。
晩飯を終えて、一息ついたサスケたちは、
サスケが魔法で造りだした、汚れと匂いが消えるお湯で体を拭いてから、
特別、やる事も無いので馬車の中で寝る事にした。
「じゃあ、寝ずの番の順番は、
まずサンとジュリーがやって、
次にリンとロリーがやり、最後が俺って事で行くからな。」
「「「「はい!お頭。」」」」
いよいよ、サスケ待望の寝ずの番が始まる・・・




