縁起かつぎ
サスケはサンとリンを伴って、
まず、レトリバーの店『何でも屋ゴールデン』を訪れた。
「「「こんにちは~!」」」
「おう、お前たちか、今日は何だ?」
「ええ、魔力石が大量に手に入ったので、
魔力回復薬を造って持って来たのと、
馬車を購入するので、床に敷く毛皮と毛布を購入に来ました。」
「そうか、魔力回復薬は何本だ?」
「今日は100本持って来ました。」
サスケは『魔倉』から取り出して、
カウンターの上に並べた。
「・・・99、100と、ちょうど100本だな、
じゃあ1本5000ギルだから、50万ギルだな。」
「はい、ちょうど戴きました。」
「あと、毛皮と毛布だっけ?」
「ええ、馬車の床に敷きたいのですが、
何か良い毛皮がありますかね?」
「そうだな・・・
保温性を考えるならフンワリギツネの毛皮だけど、
馬車の振動を和らげるならバネバネベアの毛皮だな。」
「馬車の振動は魔法で対応するので、フンワリギツネでお願いします。」
「分かった。
それで、馬車の広さは、どの位なんだ?」
「今、ロリーとジュリーに買いに行かせているのですが、
5人がゆったり寝転がれる大きさと伝えてあります。」
「それなら20枚もあれば十分だな、毛布は5枚で良いのか?」
「少し余裕を見て8枚で、お願いします。」
「了解。
フンワリギツネの毛皮が1枚3000ギルだから6万ギルで、
毛布が1枚5000ギルだから4万ギル、
合計で10万ギルだな。」
「ちょうどで、お願いします。」
サスケは金貨を出して払った。
「まいどあり~!」
「そう言えば、
この前、俺が造った魔導ポーチは、
モモヨさんが全部買って行ったって仰ってましたが、
あれは、やはり冒険者同士に軋轢を生まない為にだったんですかね?」
「何、言ってんだ?
モモヨは俺の店から10万ギルで買った魔導ポーチを、
フェルナリア皇国の冒険者ギルドの知り合いに頼んで、
貴族に一個100万ギルで売って、ぼろ儲けしたって言ってたぞ。」
「そんな事だと思ったよ・・・」
「あれは、ポーチ自体が小さすぎて、
他の錬金術士じゃ造れないから、余り市場に出さない方が良いな、
トラブルの元になるぞ。」
「そうですか、
両手が使えて冒険者向けに良いかなと思って造ったので残念です。」
「いや、発想は良いと思うぞ、
小さすぎるのが問題なんだから、もう少し大きく造れば良いんだよ。」
「でも、あれ以上大きくなると、嵩張りそうですよね。」
「お頭、腰に付けるんじゃなくて、
背負うなら良いんじゃないですか?」
「そうか!リュックみたいにすれば良いな、
レトリバーさん、こんな風に背負うバックを作って貰えませんか。」
サスケは、地球のリュックをイメージしてスケッチしたものを、
レトリバーに見せた。
「成る程、肩紐が調節できる様になっているから、
色んな体型に対応している訳か・・・」
「ええ、獣人とかドワーフでも使える様にしたいので。」
「収納量は、また馬車1台分ぐらいに、しておいた方が良いぞ。」
「分かりました。」
「値段は幾らにしておくか?」
「魔導ポーチが10万ギルでは安すぎたみたいなので、
今回は30万ギルにしませんか?」
「そうだな、その値段なら冒険者にも買えるぐらいだから、
ちょうど良いかも知れないな、
そう言えば、今回は何て名前で売り出すんだ?」
「そうですね・・・魔導リュックにしましょう。」
「魔導リュックだな、分かった。
それで、元になるリュックは何個ぐらい作れば良いんだ?」
「取り敢えず、100個作って下さい。
それだけあれば、ピロンの街の冒険者には行き渡ると思うので。」
「他の街では売らないのか?」
「俺は、これを本業にする気は無いので、
この街の冒険者のみの特権と言う事で、お願いします。
あと、モモヨ販売禁止で。」
「まあ、サスケには儲けさせて貰ってるから分かったよ、
この街の冒険者だけに売る様にするぜ。
あと、買った冒険者にも、モモヨに売らない様に釘を刺して置くよ。」
「ありがとうございます。」
レトリバーとの、打ち合わせを終えたサスケは、
店を後にした。
「サン、ピロンの街から、ラッスンの街へは馬車で何日ぐらい掛かるんだ?」
「2日もあれば十分だと思います。」
「そう言えば、ラッスンの街の冒険者だったサンたちが、
何で、ラッスンの街に向けて運ばれていたんだ?」
「たまたま、フェルナリア皇国の冒険者ギルドで、
クエストを受けていた時に失敗してしまったので、
地元に送られていたんですよ。」
「それって、フェルナリア皇国の奴隷になるんじゃないのか?」
「はい、冒険者ギルドは世界的な組織なので、
冒険者の管理は、その冒険者が登録したギルドになるんですよ、
今回も、違約金はラッスンの街のギルドが肩代わりして、
私たちはラッスンの街の奴隷となるんです。」
「成る程、それでラッスンに向かっていたのか、
領主も、その辺は心得ていた訳だな。」
「そう言う事だと思います。」
「よし、今夜はカツを食べて、領主への復讐に備えるかな。」
「カツですか?」
「ああ、俺が生まれ育った国では、
『敵に勝つ』に通ずるって事で、戦いに望む前にカツを食べたんだ。」
「そうなんですか、
カツって言うのは、どんな料理なんですか?」
「えっ!?カツって、この国じゃ食べないのか?」
「はい、聞いた事が無い料理です。」
「アタイも、知らないです。」
「そうなのか、
よし!今夜は、腕に縒りを掛けて作るから楽しみにしておけよ。」
「「はい!お頭。」」
サスケは2人を連れて、旅の間に食べる食料と、
今夜のおかずの材料を買い込んでから帰宅した。
館に帰ると、サスケたちの気配を察知したのか、
ロリーとジュリーが館から出て来た。
「お頭、馬と馬車を購入して来ました。
何か、この街では良質な馬と馬車がダブついているみたいで、
思ったより安く買えました。」
ロリーは、余った300万ギルを返して来たので、
馬と馬車は200万ギルで購入出来た様だ。
「大分、予定より安く買えたな、
でも、何でダブついていたんだろうな?」
「何でも、最近、沢山の盗賊団が討伐されて、
そいつらの隠れ家から押収したらしいですよ。」
「そうだった!
金目の物以外は、街の兵士に任せておいたんだっけ。」
「お頭が討伐したんですか!?」
「おう、優秀な盗賊ホイホイのレトリバーさんに協力して貰って、
結構な数の盗賊団を潰したんだ。」
「馬や馬車は貰わなかったんですか?」
「おう、お宝や武器なんかで結構な額になったんで、
馬や馬車は兵士の皆さんに処分して貰ったんだ。」
「自分であげた物を買うなんて、
お頭も変な事していますね。」
「まあ、しばらくは、この街から離れる予定なんて考えて無かったからな、
街の利益に貢献出来たと考えれば良いさ。」
サスケたちは厩舎に馬を見に行った。
「おお~っ!これは良い馬だな。」とリンが言えば、
「体も丈夫そうだし良い買い物ですね。」とサンも絶賛している。
正直、サスケには馬の良し悪しは分からないが、
2頭とも頭が良さそうな顔つきだと思った。
「名前は決まっているのか?」
「はい、タロウとハナコだそうです。」
「記入例かっ!!」
続いて納屋に行って馬車も見てみる。
「おお、ちょうど良さそうな大きさの馬車だな。」
「はい、もともと反物の輸送に使われていたそうなので、
大きくて頑丈な作りだそうです。」
「どれ、『軽減』『浮遊』と、
リン、馬車を引っ張ってみろ。」
「はい、お頭。
わ~!めちゃくちゃ軽いですよ、これなら2頭引きで大丈夫ですね。」
「そうか、予定通りで行けそうだな。
よし、確認は、この辺にしておいて、風呂と飯にするぞ。」
「「「「はい、お頭。」」」」
風呂を入れて獣人娘たちを入らせると、
サスケは夕食作りに取り掛かる。
シモフーリボアの肉を叩いて軟らかくしてから、
小麦粉をまぶして、
ホロホロドリの卵を溶いたものに通し、
パンを崩したものにまぶす。
シモフーリボアのラードを火に掛けて溶かしてから、
肉を放り込んだ。
肉が揚がる時間を利用してキャベツンを刻む、
キャベツンは見た目は地球のキャベツに似ているが、
直径が1メートル程あるので切り分けて売られている。
キャベツンを千切りした上に揚がったカツを半分乗せて、
残りの半分はアマアマネギと一緒にホロホロドリの卵で綴じた。
「こってりメニューだから、汁物はあっさりが良いかな。」
サスケはモッコリダケをスライスして、
薄味のだし汁に、薄塩で味付た鍋に入れた。




