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転落勇者の人生大逆転物語  作者: シュウさん
31/238

幕間4

「は、初めましてミルキィ姫、

お、俺、いや私はサブロー・イタジマ・・・じゃ無かった。

タナカです。」


「初めまして勇者サブロー様、ミルキィで御座います。

タナカと名乗る様にお願いしたのは父でしょうか?」

(伝説の勇者イチロー・タナカにあやかろうって事でしょうか?)


「は、はい、王様がタナカと名乗った方が、

早く、この世界に認められるとの事でしたので・・・」


「そうですか・・・確かに、そうかも知れませんわね。」

(勇者サブローさまって、ピーピングモンキーに似ていらっしゃるわ・・・)

ピーピングモンキーと言う魔獣は、

この世界では数少ない、人に危害を加えない魔獣で、

その習性は変わっており、女性が川や泉で水浴びをしていると、

木の陰などから前屈まえかがみになりながら覗くと言うものだ。


「お、俺、いや私は勇者として、フェルナリア皇国の為に頑張りますので、

よろしくお願いします。」


「こちらこそ、よろしくお願い申し上げますわ。」


それから、勇者サブローは騎士団との戦闘訓練や、

文官による勇者学の教育などを受け始めたのだが、

漏れ聞こえて来る評判はかんばしくなかった。


いわく、幾らも訓練に参加しない内に、

「今日は、この辺で勘弁してやる。」などと言って引き揚げてしまう。


曰く、衛兵の目を盗んでは城下の街へと遊びに行ってしまう。


曰く、風呂で侍女に背中を流させている最中に、

突然、全裸のまま振り返って「ここも洗ってちょ!」と言って、

侍女に悲鳴を上げさせている・・・などであった。


「お父様、勇者サブロー様の評判を漏れ聞きましたが、

あの様な行いをする方が、

魔王討伐などと言う大業を成し遂げるのでしょうか?」


「魔王討伐なぞ必要が無いぞ、

勇者サブローには、勇者と言う肩書があれば、それで良いのだ。」


「でも、聖教会の法王様が、

『魔王復活のきざしあり、勇者を召喚せよ。』との、

ご神託が下ったとの発表をされたではありませんか。」


「あれは、勇者を召喚する為の理由付けをするために、

わしが教会に多額の寄進をして法王に発表させたものだ、

実際には魔王など現れん。」


「その様な事をして大丈夫なのでしょうか?」


「何、魔王が現れなかったところで、

勇者に恐れをなして逃げ去ったと言えば良いだけの事だ。」


「それで良いのでしょうか・・・?

では、勇者サブロー様は、あのまま放って置かれるのですか?」


「そうだ、勇者自身に力が無くとも、

周りにちからを持った戦士や魔導士を就ければ良いからな、

ようは、『我が国には勇者が居るから正義』との、

図式が描ければ良いだけの事だ。」


「やはり、私は勇者サブロー様に嫁がねばならないのでしょうか?」


「もちろんだとも!

お前には勇者サブローと一緒になり、

間違っても他国へと行かない様に、

引き止めると言う重要な役割を努めて貰わねばならぬからな。」


「そうですか・・・」

(あの様な方に嫁ぐなんて・・・)


心に迷いのあるミルキィ姫は、

王子を生んだ後の肥立ちが悪く、地方の別邸にて療養中の王妃を訪ねた。


「お母様、ミルキィは、あの様な勇者様には嫁ぎたくありません。」


「ミルキィ、あなたの気持ちは分かりますが、

勇者サブロー様は本当に噂通りの方だったのですか?

人の話に惑わされるのではなく、

自分の目で確かめて見なければ、本当の姿は見えてきませんよ。」


「お母様は、今の勇者様の姿は本当ではないと仰るのですか?」


「それは、まだ、直にお会いした事も無いので分からないわ、

ただ、真実を確かめない内に結論を出すのは早いと言っているのよ。」


「真実を・・・お母様、分かりました!

ミルキィは、自分の目で勇者様を確かめて見ます。」



数日後、いつもの様に、城下の街へと出掛けて行く勇者サブローの後を、

少し離れて付いて行く影があった。

護衛の騎士と共に、平民に扮したミルキィ姫である。

「姫様、こんな事がバレたら私の首が飛びますので、

くれぐれも離れない様に、お願い申し上げます。」


「ええ、無理を申してすいません。

でも、どうしても自分の目で確かめたかったのです。」


2人が後から付いて行くと、

勇者サブローは食堂らしき建物に入って行った。


「こんちは~!」


「あら、遊び人のサブちゃんじゃない、いらっしゃ~い!」

「おお!サブちゃん、こっちの席に来いよ!」

「サブちゃん、耳よりの話があるから、次はこっちな!」

勇者サブローは顔が売れている様だ。


ミルキィ姫と騎士は離れた席に付いて様子を見る事にする、

店の者が注文を取りに来たので、

飲み物を注文がてら聞いて見る事にした。

「あのサブちゃんて人、ずいぶん人気があるのね。」


「ええ、世間話が好きな人で、

商人や冒険者の人たちに色んな事を聞いては、

食事をご馳走したりしてるんで人気があるんですよ。」


「色んな事って?」


「この国や他国の情勢や生産物の話なんかが好きみたいだけど・・・」


「成る程、商人や冒険者は、何か国にも渡って活動する者が多いので、

新しい情報を集めるには適していますね。」

騎士は感心した様にしている。


結局、その店を出た後も勇者サブローは数件の店に寄って、

同じ様に話を聞いて回っていた。


(遊んでいた訳では無かったんですね・・・)

城へと戻ったミルキィは、噂とは違った勇者サブローの姿を見て、

戸惑っていた。


頭の中でグルグルと考えが巡って、

結局、眠れぬ夜を過ごしたミルキィは、

空が明るくなって来たのを見て、

気分を変えようと思い顔を洗いに部屋を出た。


ふと、廊下の窓から外を見ると、

鎧を着込んだ勇者サブローが城壁から外に出て行くのが見えた。

「こんなに朝早くから、どちらにいらっしゃるのかしら?」

衛兵に話して城壁の外が見える場所に案内して貰う、

すると、城壁の周りを鎧を着たまま走っている勇者サブローが見える、

何周か走り終えると、次は剣を振り始めた。


「姫様、お早いですね。」

何者かが話掛けて来た。


「まあ、騎士団長さま、おはようございます。」


「おはようございます。

勇者サブロー様の訓練を見ていらしたのですか?」


「はい、そうです。

勇者様は、毎朝、こんな訓練をされているのですか。」


「ええ、毎朝、欠かさずですね。」


ミルキィは、今の勇者の姿が、

噂とは結びつかなく感じて、騎士団長に直接聞いて見る事にする。

「騎士団長さま、勇者サブロー様は騎士団との訓練に余り熱心ではなく、

すぐに引き上げてしまうとお聞きした事があるのですが、

それは真実ですか?」


「いいえ、それは違います。

勇者様は、こちらの世界へと来られた時に、

まだ、一般人にも届かない体力でいらっしゃいました。

自分が参加していては、騎士団の訓練がとどこおってしまうので、

体力が付くまでは途中までしか参加しないとおっしゃったのです。」


「それで、ああして走ったりされているのですね。」


「そうです。

周りの者が色々言っている様ですが、私は勇者様は本物だと思いますよ、

現に、最近は訓練にも最後まで着いて来れる様になりましたし、

剣の腕前は既に見習い騎士を凌駕しております。

訓練を始めてからの時間を考えれば、

その上達の早さは驚異的と言えましょう。」


「何で、勇者様は、そこまで頑張れるのでしょうか?」


「男が頑張る理由なんて、そんなにありませんよ、

惚れた女の為なら何でも出来ます。」


「は?」


「勇者様が頑張り始めたのは、姫様とお会いしてからですよ。」


「そ、そうですか・・・」

ミルキィは、自分が耳まで赤くなっているのを感じていた。

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