言霊魔導士
「それはそうとサブロー、お主少し匂うておるぞい。」
「ああ~、濁った川に落ちたからな~。」
「どれ、『洗浄』
これで良いじゃろ。」
「おおっ!体が服ごとキレイになったぜ、
ヴィン爺の魔法は凄えなぁ、
でも、ヴィン爺の魔法って他の人と違う感じがするなぁ・・・」
「おお、サブローよ良く気付いたな、
確かにワシの魔法は一般に使われている属性魔法とは違うぞい、
ワシの魔法は『言葉魔法』の上位である『言霊魔導』じゃ。」
「『言霊魔導』?」
「そうじゃ、『言葉魔法』と言うのは、
勇者イチローが創ったとされている魔法なのじゃが、
これは、起こしたい現象を頭の中に鮮明にイメージして、
キーワードを唱える事によって具現化する魔法なんじゃ、
ところが、この世界の人間は現象をイメージするというのが苦手なようでの、
ワシが若い頃に通っていた魔法学校には、
教師を含めると300人からの魔法使いが居たんじゃが、
『言葉魔法』を習得できたのはワシだけじゃった。」
(漫画やアニメに出てくる魔法とかイメージしたら、
使えそうな魔法だよな・・・)
「俺にも使えるかな?」
「そうじゃな、勇者イチローと同じ世界から来たサブローなら、
使えるやも知れんのう。」
「それで、『言霊魔導』っていうのは、
『言葉魔法』と、どう違うの?」
「ふむ、『言霊魔導』というのは、
『言葉魔法』を元にしてワシが創りだしたものなのじゃが、
ワシは『言葉魔法』でキーワードを唱えた際に、
魔力が、どこへ消費されているのかが気になったのじゃ、
属性魔法の場合は火、水、風、土の4大精霊に魔力を捧げて、
魔法を発動しておるのじゃが、
『言葉魔法』を使った時も魔力が減るという事は、
それを受け取る存在が居ると考えたのじゃ、
それを突き詰めた結果、ワシは一つの結論に達した、
この世界の精霊は4大精霊だけではなくて、
すべての物に精霊が宿って居ると考えれば納得できるとな、
それからのワシはキーワードを唱える際に、
その現象を起こす精霊に魔力を捧げるイメージをするようにしたら、
さらに強力な魔法が発動するようになったんじゃよ。」
(なるほど、日本で言うところの八百万の神って訳か・・・)
「その発見を、他の人には教えてあげなかったの?」
「この世界では、4大精霊が信仰されて居るからのう、
すべての物に精霊が居るなぞと言えば異端者扱いされて、
下手をすれば処刑されてしまうんじゃよ。」
「そうか~、一途な信仰心っていうのは怖い物だもんね。」
「そうじゃな、誰もが自分が信ずる物を否定されるのを嫌うものじゃ。」
「そうだね、でも俺が元々暮らしていた国では、
すべての物には神様が宿ってるって考えがあったから、
ヴィン爺の考えはシックリ来るかな。」
「そうなのか、そのような下地があれば、
サブローは『言霊魔導』を習得できるやも知れんのう。」
「そうなの!?やった~!」
「ふむ、じゃが、
まずは魔法より先に身体的な強さを優先せねばならんぞ、
いくら強い魔法が使えようとも、
不意を突かれて一撃で死んでしまうようではいかんからのう。」
「それも、そうだね、最初は何から始めたら良いかな?」
「そうだの~、
そう言えばサブローよ、お主は鎧と剣を装備しておったが、
戦士や騎士の素質があったのか?」
「素質って・・・?
これは、皇国の人に使えって渡されたから装備しただけで、
素質とか分からないんだけど・・・」
「何!?ステータスを調べて装備したのでは無いのか?」
「うん、それらしい事を調べた記憶は無いなぁ。」
「勇者に似合うからと言うだけで、鎧と剣を与えた訳か・・・
皇国が、そこまで腐っとるとはのう、
どれ、『看破』・・・
ふむ、お主にはシーフ、錬金術師、鍛冶師の素質があるようじゃのう、
それにユニークスキルを持って居るぞい。」
「ユニークスキルって、その人特有のスキルってやつ?」
「そうじゃ、滅多に持つ者は居らんからのう、
流石は異世界よりの召喚者というところじゃのう。」
「それで、どんなスキルなの?」
「ふむ、『4日大僧正』となっとるの。」
「何か、余りカッコイイ名前じゃないね。」
「スキルの強さは名前とは関係ないぞい、
どれ、『詳細』・・・何じゃと!
サブローよ、これは凄いスキルじゃぞ!」
「ほんと!どんなスキルだった?」
「ふむ、このスキルは素質がある職種の練習を、
4日真剣に取り組むだけで所得できるばかりか、
上位職へと転職するのも早まるようじゃ。」
「それって、凄いの?」
「当たり前じゃ!普通は素質がある職種の練習を、
数か月から数年積まねば所得できんのじゃぞ、
しかも、その上位職ともなれば到達できん者が殆どじゃよ。」
「へ~、それを4日で身に付けられるのか、
3日坊主の俺にはピッタリのスキルだな。
そう言えば、皇国での訓練も最初の日だけは真面目にやったけど、
次の日からは、いかに楽するかだけ考えていたもんな・・・」
「と言う訳で、
サブローの訓練はシーフ、錬金術師、鍛冶師の素質を伸ばす方向で、
行うとするぞい。」
「ヴィン爺は全部、教えられるの?」
「うむ、ワシのユニークスキルである『知識の泉』は、
知りたい事の答えを殆ど答えてくれるからのう、
効率的な訓練を組んでやるから頑張ってやるのじゃぞい。」
「ヴィン爺のユニークスキルも、相当なレアスキルだね。」