空の心
キョンシーラビッツの討伐クエストを受けたサスケたちは、
冒険者ギルドが管理している隔離施設を訪れた。
「こんちは~。」
「ああ、サスケさん、お久し振りですね。」
ギルドから派遣されている施設入り口の警備員が答えた。
「ああ、こいつらを鍛えていたからな。」
「そちらの、お嬢さんたちは?」
「パーティーを組もうと考えて戦闘奴隷を購入したんだ。」
「一度に4人もですか?」
「そうだ。」
「さすがはピロンの街で若手成長株NO.1と言われている、
サスケさんだけの事はありますね。」
「いや、それほどでも無いさ、
そう言えば、この前のベスボルの試合見たか?」
「もちろんですよ!見ている方も、手にサオ握る熱戦でしたね。」
「ああ、俺も、まさかあそこで出すとは思ってもみなかったな。」
「ええ、ディフェンディング・チャンピオンのガ・マンジル選手も、
さすがに我慢が出来なかったんでしょうね。」
「そうだな・・・
あっ!そうだ、こいつらの紹介が、まだだったな。
お前たち、こちらは冒険者ギルドから派遣されているソーローさんだ、
各自挨拶する様に。」
「「「「はい!お頭。」」」」
「サンです。よろしくお願いします。」
「リンだ。よろしく!」
「ロリーと申します。よろしくお願いします。」
「ジュリーだ、よろしく頼む。」
「ソーローです。こちらこそお願いします。」
「よし、挨拶が済んだ事だし、
さっそくクエストを始めるか、
ソーロー、これがクエストの登録書だ。」
「はい・・・確認しました。
では、ゲートを開きますので、お気を付けて行って来て下さい。」
「おう。」
サスケたちは、ゲートを潜って中に入った。
「お頭、ファンシーラビッツって名前からすると可愛い響きなんだけど、
やっぱり可愛いの?」
「まあ、見る人が見れば可愛く感じる人も居るかも知れんな、
ごく一部だろうが・・・」
「えっ?今、最後の方、声が小さくて良く聞こえなかったんですけど、
何て言ったんですか?」
「そろそろ、来るぞ!
総員、戦闘準備!」
「「「「はい!お頭。」」」」
草叢の中からキョンシーラビッツが10匹程現れた。
「「「「・・・・・・・」」」」
「あれが、討伐対象のキョンシーラビッツだ、
総員、討伐せよ。」
「え~っ!?ファンシーじゃ無いんですか~!」
「気持ち悪いです~!」
「ああっ!こっち来ますよ。」
「我が心、既に空なり・・・」
ジュリーが悟りを開いたみたいな事を言ってるが、
現実逃避をして目を閉じているだけである。
「あいつらに噛まれるとゾンビになるから気を付ける様に、
ほらほら、早く倒さないと包囲されるぞ。」
「分かりました。やってみます・・・」
「サン、アタイと裏側に回り込もうよ。」
「手裏剣で牽制しますね。」
「我が心」ボカッ!「痛ぁ~い!」
ジュリーはサスケに拳骨を落とされた。
「お頭!こいつら切っても倒れませんよ!」
「手裏剣が当たっても効きません!」
「この様に、アンデット系の魔獣には通常攻撃が効かないんだ、
そこで、お前たちの武器には白魔法の『聖光』が付与してある、
キーワードは『聖なる光よ』だ唱えてみろ。」
「「「「『聖なる光よ』」」」」
「お~っ!忍者刀が白く光りだしたぞ!」
「手裏剣もよ!」
「その状態なら倒す事が出来るぞ、
『聖光』が発動している時間は2時間程で、
空気中の魔素を吸収しているから、一晩で元通りになる、
じゃあ、討伐を再開しろ。」
「おお~っ!倒せます。お頭!」
「手裏剣でも一発です。」
獣人娘たちは『聖光』の効果が切れる2時間程で、
隔離施設に居たキョンシーラビッツの8割程を討伐した。
「お頭、全滅させなくても良いんですか?」
サスケは、地面に落ちている魔力石を拾い上げて言う、
「ああ、この魔力石は魔力回復薬の原料になるんだ、
売り上げは冒険者ギルドの収入になるから、
キョンシーラビッツが増えすぎたり減り過ぎたりし過ぎない様に、
調整しながら管理しているって訳だな。」
「へ~、そうなんですか。」
「飼ってるものはアレですが、牧場みたいなものですね。」
「そんな所だ、ちなみに魔力回復薬は俺が造っているから、
ウチの重要な収入原でもある。」
「えっ!?お頭が造ってるんですか?」
「そうだ、治療薬も中級が造れるのは、
ピロンの街では俺だけだな。」
「どうりで、お頭がお金持ちの訳だわ。」
「何か、お頭ってスペック高すぎて胡散臭いですね。」
「あと、私たち獣人は生活魔法ぐらいしか使えないので、
余り詳しくは無いのですが、
お頭の魔法って他の魔法使いと違いますよね?」
「お前たちには話しても良いか・・・
そうだ、俺の魔法は一般的な魔法使いが使う『属性魔法』とは違って、
『言霊魔導』って言うんだ。」
「それって、もしかして大賢者さまが使っていたやつですか?」
「おお!ヴィン爺を知っているのか、
そうだ、大賢者ヴィンセント・オナルダスは俺の師匠だぜ、
そして、唯一『言霊魔導』を受け継いだ弟子が俺さ。」
「大賢者さま唯一の弟子なんて・・・」
「さすが、お頭だぜ!」
「どうりで何でも出来ると思いました。」
「嫁にして下さい。」
ジュリーの戯言はスルーして、サスケは獣人娘たちに告げる。
「この事が、貴族や国に知れると面倒な事になるので、
皆、絶対に話さない様にする事、
特に、リンとジュリー分かってるな!
もし外部に、この情報を漏らしたら2人ともカエルに変えるからな。」
「まさか、人をカエルにするなんて出来る筈無いじゃないですか~。」
「ホント、冗談キツイですよ、お頭~。」
「・・・・・・・」
「出来るんですか!?」
「ぜっ、絶対に喋りません!!」
「2人も分かった様だし、魔力石を回収して街に帰るぞ。」
「「「「はい!お頭。」」」」
サスケたちは魔力石を回収してから、
ソーローに声を掛けてピロンの街へと帰還した。




