呪いの・・・
次の日の朝、『鳥の骨亭』の食堂で朝食を食べた俺たちは、
さっそく訓練を始める為に、街の近くの草原に向かう事とした。
いつもの様に街の出口門に来たら、
見掛けない警備兵が2人立っていた。
「おはようございます。
冒険者のサスケと申しますが、
ジョイケルさんはいらっしゃいますか?」
「はい、先輩でしたら詰所に居るので、呼んできますね。」
「ありがとうございます。」
暫くすると、ジョイケルさんがやって来た。
「おはようサスケ、俺に何か用だって。」
「はい、昨日、言っていた剣が出来ましたので、
お届けしようかと思いまして。」
「えっ!?もう出来たのか?
お前は何やらせても凄いな。」
「いえ、それ程でも・・・
この剣ですけど、如何でしょうか?」
サスケは『魔倉』から鉄剣を取り出して、
ジョイケルへ手渡した。
「うん?見た目は鉄剣みたいだけど、
やたらと軽いな、鉄じゃないのか?」
「いえ、鉄ですよ、重量軽減が付与してあるから軽く感じるんですよ、
ついでに破壊防止と身体強化と疲労回復も付与しておいたので、
警備の時は身に付けておいて下さい。」
「付与って・・・お前・・・
付与の付いた武器なんて、
大きな街の一流武器店で、目ん玉飛び出る様な値段で売ってるんだぜ。」
「俺は、たまたま付与魔法が得意なだけなんで、
気にしないで使って下さい。」
「そうか、分かったよ、ありがたく使わせて貰うぜ。」
「はい、是非使って下さい。
そう言えば、門の警備に新しい人が増えたんですか?」
「おお、前々から4人で回すのはキツイから増やしてくれって、
お偉いさんにお願いしてあったんだが、
やっと増員してくれたんだよ、
おい、新人共、こいつはサスケって言う名の、
この街を代表する冒険者だから、
仲よくしておいた方が良いぜ。」
「サスケです。
よろしくお願いします。」
「この度、門の警備に配属されましたジョジックです。
サスケさん、よろしくお願いします。」
「同じくマンソンです。
よろしくお願いします。」
(憶えきれないから、もう、同じような名前は勘弁して欲しい・・・)
草原に来たサスケたちは、
手裏剣やクナイの投擲を練習する事とする、
「この、薄くて十字になった武器を手裏剣と言う、
重量はそれ程ではないので、主に相手への牽制などに使用する、
こっちの投剣みたいなのがクナイって言って、
それなりの重さがあるから殺傷能力もあるな、
状況によって上手く使い分けるように。」
「「「「はい!」」」」
「では、的を用意するから、
各自、投擲してみる様に。」
サスケは『造形』の魔法で土人形を4体造った。
「お頭、あの土人形は牛獣人の女性に見えますが、
何か意味があるんですか?」
「いや、的を造る時には、
いつも、あの形にしているから無意識に同じになっただけだ。」
「そうなんですか、誰かモデルとなった人が居るんですか?」
「ああ、あいつは実在する人物だ、
その内、お前たちに暗殺を命ずる事になるかも知れない人物だから、
本番に備えて、集中して狙うように!」
「「「「はい!」」」」
サスケの『配下登録』のスキルや、
忍者服に付与された能力のお蔭で、
獣人娘たちの投擲術はメキメキ上達して、
お昼になる頃には、皆、狙った場所に当てられる様になっていた。
「よ~し、みんな、止まった的には問題無く当てられる様になった様だな、
昼食を摂って一休みしたら、
午後からは動く的に当てる訓練を始める。」
「「「「はい!」」」」
「お頭、昼食は街に戻って摂るんですか?」
「いや、お前たちが訓練している間に、
ジューシーラビッツやホロホロ鳥を狩ってきたので、
これを調理して食べるとする、
『魔倉』って言う、俺のアイテムボックスの中には、
野菜や調理道具が入っているからご馳走するぞ。」
「お頭が作るんですか?」
「お頭に作って頂く訳には行きません!」
「ああ、気にするな、
今までは一人だったから作らなかったが、
料理は趣味みたいなもんだから、俺も息抜きになるからな。」
「そう言う事でしたら、ご馳走になります。」
サスケは、ジューシーラビッツは香辛料を塗り込んでから丸焼きにして、
ホロホロ鳥は野菜と一緒に煮込んだ。
料理が完成したので、
各自にパンと飲み物を配ってから食事を始める。
「「「「!?」」」」
「お頭!もの凄く美味しいです!」
「この、ホロホロ鳥の煮込みの味わい深さは何でしょう・・・」
「それより、このジューシーラビッツの焼き加減はスゲエぜ、
肉のうま味を閉じ込める様に外はカラッと焼いているのに、
中は肉汁が溢れる程に軟らかいんだ!」
「お頭!アタイの嫁になってくれ!」
「みんなが喜んでくれて何よりだ、
俺は生産系の職業を究めているから、
『調理』のスキルも使えるからな。」
「お頭は何でもありですね。」
「ホント、お頭に買われて良かったわ。」
食休みを終えたサスケたちは午後の訓練に入った。
「お頭、動く的に当てる訓練て、魔獣でも狩るんですか?」
「いや、不規則な動きをする魔獣は、
まだ難しいから、俺が土人形を魔法で動かすよ。」
サスケは、また『造形』で土人形を造ると、
『仮命』で命を吹き込んだ。
『コンニチハ、ワタシ、モモヨ、
ヒトノ、イキギモガ、ダイコウブツナノ。』
カクカクとした非常にキモい歩き方で近づいて来る。
「お頭、喋らせなくても良いんじゃないですか?」
「何か、ちょ~不気味なんですけど・・」
『ミナサン、ヒンニュウデスネ、カワイソウニ。』
「なんか、とても攻撃に集中出来そうな気がして来たわ。」
「みんな、殺るわよ!」
「「「おう!」」」
その日、ピロンの街の冒険者ギルドで受付をしていたモモヨは、
時折、全身を襲う謎の痛みに悩まされたと言う。




