サスケの計画
「この紙幣を印刷するに際して、
ある特有の魔力が付与される様にしてあるんだけど、
マネが出来ない様に、数人分の魔力パターンをミックスしてあるんだよ」
「マネが出来ないのは良いのだが、
それを読み取る魔導具などが必要となるのでは無いのかね?」
「ああ、タクサンノ侯爵が言う様に、
真贋を読み分ける魔導具が必要となるね、
それが、コレになる」
サスケは『魔倉』から縦20センチ、横30センチ、高さ10センチ程の、
箱型の形状をした魔導具らしきものを取り出してテーブルの上に置いた。
「ほう、これが紙幣の真贋を判別する魔導具か、
してサスケ殿、この魔導具は、どの様にして使用するのだ?」
「使用方法は至って簡単、ブチクラース侯爵この本物の紙幣と、
何も書いて無いタダの紙を、順番に魔導具の上に乗せてみてくれるか」
「タダ乗せるだけで良いのか?良かろう、
ワシが、やってみようではないか」
ブチクラース侯爵は、サスケから紙幣と、タダの紙切れを受け取ると、
順番に魔導具の上に置いてみた。
すると、紙幣を乗せた時はピンポ~ン!と音がして、
魔導具本体が緑色に光り、
タダの紙切れを乗せた時にはブブ~ッ!と鳴って、
魔導具本体が赤く光った。
「これは、分かり易くて良いですな」
宰相のバケテナーイも感心した様子で頷いている
「しかし、造りは単純とはいえ魔導具では、
大きな商会などは兎も角、
個人経営などの、小さな店では購入出来ないのでは無いのか?」
「タクサンノ侯爵の心配は尤もなんだが、
この魔導具は、各地の領主を通してタダで配るから大丈夫だぞ」
「なんと!魔導具をタダで配ると申すのか!?」
「ああ、見た目は立派なんだが、
魔導具本体は、紙を作った残りの木材を利用しているし、
魔力の効率を極限まで高めているから、クズ魔石でも十分に機能するんだよ」
「まさしく『エロの精神』ですね」
「ジュリー、さっきも注意したが『エコの精神』だからな」
「あっ、また間違っちゃいました。テヘッ」
(こいつ、ワザと言ってるんじゃ無いのか?)
サスケは、疑惑の眼差しでジュリーを見たが、
エヘヘ~と微笑んでいる邪気の無い顔を見て、
(そりゃ無いよな)と思い直した。
「サスケ殿、原材料が安価とあっても、
それらを加工する手間などを鑑みると、
タダで配っていたのでは、到底、割に合わないのでは無いのか?」
「ただ紙幣の真贋を判別するだけだったら、
確かに、割に合わないだろうね」
「では、他にも何らかのメリットがあると?」
「ああ、この魔導具で真贋を判別した紙幣のデータが、
国の中央へと送られる仕組みになってるんだよ」
「それは良い事なのであるか?」
「それは、凄いですな!」
「うん?タクサンノ殿には理解出来るのか?」
「うむ、中央に居ながら、国内の金の動きを読み取れれば、
金の動きが活発な地域は、経済特区として何らかの優遇などの措置をとれるし、
逆に、金の動きが悪い地域なら、こちらから手を加えてやれば、
国全体の経済の活性化が図れるであろう」
「なる程、そういう事であったか」
「最初は結構な出費になるだろうけど、
そう遠く無い未来に、元が取れるだろう?」
「うむ、そうだな」
「分かり申したぞ、
サスケ殿に、経済面でも、これ程に明確なビジョンがあると言うのなら、
私も、今回の立候補は取り下げるとしよう。」
「では、ブチクラース閣下も、タクサンノ閣下も、
サスケ閣下を、次期皇帝として、
お認めになるという事で宜しいでしょうか?」
「うむ」
「認めよう」
「でも、俺は皇帝には成らないんだけどね」
「「「「「えっ!?」」」」」




