新たな試み
「この国に、コレを導入しようかと考えているんだ」
サスケは『魔倉』から、何かを取り出すと、
侯爵らへと差し出した。
「まあ!お父様達のお顔が・・・」
サスケが差し出した物を、
侯爵らと共に覗き込んだミルクが驚きの声を上げる、
それと言うのも、1万ギルと書かれた物には前皇帝の肖像画が、
そして、5千ギルと書かれた物には前王妃が、千ギルと書かれた物には弟君が、
それぞれ描かれていたのだ
「ああ、ミルクに断りを入れる時間が無かったんで悪かったんだが、
コレには、国との関わりが強い人物の肖像画を描くのが定番なんだよ」
「そうなのですか、私の事なら気にしないで下さいませ、
こうして、家族の事を思い出せるだけでも嬉しいですわ」
「そうか、ありがとうなミルク」
「サスケ殿に、お尋ねするが、
これは、紙か?
この様に質が良い紙は、初めて見るな・・・」
「ふむ、金額が記入してあるところから見ると、
貨幣として使うのであろうかの?」
「サスケ閣下、コレはどの様にして書いたのでありまするか?
何枚ずつか同じ物がありますが、ソックリ同じですぞ」
「ええ、コレは紙で出来た貨幣で『紙幣』と言うんだけど、
先日、マッスル王国へと赴いた際に『魔の森』で、
原料となる木を見付けたんだ、
ライ国王からは、造った紙の2割を納めるという約束で、
自由に伐採しても良いという許可を貰ってるよ、
ちなみに、バケテナーイの質問の答えだけど、
コレは手書きで書いてるんじゃ無くて、魔導具で書いてるから、
全部ソックリ同じに出来てるんだよ、
俺の師匠と協力して、紙に文字や絵を記入できる『印刷機』ってもんを発明したのさ」
「サスケ殿の師匠?」
「初耳ですな」
「侯爵閣下さま方、
サスケ閣下の、お師匠殿は『ヴィンセント・オナルダス』
かの『大賢者』様ですぞ」
「何と!?
かの『大賢者』殿が、サスケ殿の師匠であると申すか!?」
「ご存命で居られたのだな、
今の口振りから見ると、陛下とバケテナーイは知っていたのだな?」
「はい、サスケ閣下とミルク様が、前皇帝陛下と和解される前に、
お二人の事を、お調べさせて頂いた際に判明を致しました。」
「ふむ、そうであったか」
「陛下も、お人が悪いな、
我々にだけは、お教えして頂いても良かろうに」
「陛下は、それを知られる事により、
サスケ閣下の、我が国での知名度が上がるのを恐れて居られでました。」
「なる程のう、かの『大賢者』殿の弟子という肩書が与えるインパクトは、
我が国では重大であるからのう」
「然り然り」
「サスケ閣下、少々話が逸れましたが、
閣下のお考えとしては、この『紙幣』でしたか?
これを、我が国の新たな貨幣として、国内へと流通されるお考えなのですか?」
「ああ、そう考えている、
前々から、思っていたんだが、
俺みたいな『魔倉』持ちや、アイテムボックス持ちの連中は兎も角として、
皮袋に、金貨や銀貨などの、
重みのある硬貨を入れて持ち歩く一般の人達が大変だってな、
この『紙幣』なら軽いし、まとめて束ねれば持ち歩くのにも便利だからな」
「しかし、国内に流通させるとなれば、
かなりの量の紙が必要となると思われますが、
先程、閣下が申された『魔の森』にあると言われる、
原料となる木が枯渇をして、しまわれないのですか?」
「ああ、それについては心配いらないぞ、
あの森は強い魔力で覆われている所為か、
木を伐採する際に、切り落とした枝を地面に植えて置けば、
1か月程で、元の木と同じ大きさまで育つんだよ」
「あっ!それって知ってます!」
今まで、皆の話を黙って聞いていたジュリーが声を上げた。
「何がだ?ジュリー」
「お頭に造って頂いた地球の事が書かれている本に載ってました。
自然が枯渇しない様にと、世間に働き掛ける運動ですよね、
確か・・・そう!『エロジジィ!』」
「おしい!それを言うなら『エコロジィ』だな、
『エロジジィ』だと、作者も含めて、
若い女性に言われると、心が深く傷つくナイスミドルが沢山居るから言わない様にな」
「は~い、分かりました。お頭」
「では、話を続けるけど・・・うん?皆さん、どうしました?」
「い、いや、突然の胸の痛みに襲われただけだから、
気にしないで話を続けてくれ」
「うむ、臓腑を抉られる様であったな・・・」
「私は、立ち直るまでに、もう暫しの時間を要する様です。」
「そうですか・・・?
では、話を続けますけど、
今回、俺が造った紙幣のメリットは軽いだけではありませんで、
印刷をする際に、偽造の防止の意味も込めまして、
ある仕掛けが施してあります。
それと、言うのは・・・」




