意外な展開
『ご主人様が、フェルナリア皇国の皇帝にですか!?』
「いや、正しくは候補になっただけ、なんだがな」
フェルナリア皇国の皇都にいるサスケらは、
城下の街で昼食を取った後、
城へと戻ってから、魔導通信機を使ってコウガ領へと現状報告をする事としたのである、
サン達は、代官のダンディを伴って、
側室の披露パーティーの余興を依頼する為に、
皇国では有名な劇団である『ヅラジョ歌劇団』まで外出中との事だったので、
留守番をしていたダンミーツに伝えて置く事としたのであった。
『でも、ご主人様が最有力候補なんですよね』
「まあ、宰相のバケテナーイの話では、
そう言う事だがな」
『ご主人様が皇帝と成られるとすれば、
側室となる予定の私達は、皇帝の側室となるかも知れないのですね』
「ああ、まあ正確には皇帝じゃ無いんだがな・・・」
『それは、どういう・・・?』
「まあ、その話は取り敢えず置いといて、
サン達や、ダンディにも、今回の次第を伝えて置いてくれるか?
それと、さっきの指示をジュリーに伝えるのを忘れないでくれよ」
『畏まりました。ご主人様』
夜になり、皇都の皇城にある会議室には、
皇国公爵であるサスケの他、宰相のバケテナーイよりの連絡を受けた
皇帝候補のブチクラース侯爵とタクサンノ侯爵、
そして、話し合いの進行役としてバケテナーイが参加していた
ミルクは、バケテナーイより参加を打診されたが、
今回は、他の候補者に、いらぬ警戒感を抱かせない様に、
自分が居ない方が良いとの考えを示して、
参加を見合わせていた。
「では、ただ今より、
次期フェルナリア皇国皇帝陛下の御座を、
どなたにお受け頂くかの話し合いを始めたいと思います。」
進行役のバケテナーイが、そう宣言をする
「うむ、皆の衆には申し訳御座らんが、
話し合いを始める前に、ワシの話を聞いて頂けぬか?」
軍部に大きな影響力を持つブチクラース侯爵が、
そう発言をした。
「お二方は、宜しいでしょうか?」
「ええ、良いですよ」
「構わん」
サスケとタクサンノ侯爵が肯定の意思を示した。
「では、ブチクラース閣下、ご発言をどうぞ」
「うむ、では話をさせて貰うが、
まず最初に告げたい事は、
ワシは今回の候補から降ろさせて欲しいという事じゃ、
それと言うのも、ワシは当初、この話を聞いた時に、
現状の我が国に置いて、他国への睨みを利かせる事が可能であるのは、
ワシを置いては他には居ないと考えたからじゃ、
ワシ以外で、それが出来そうなサスケ殿は過去の柵や、その性格から考えて、
引き受けては頂けないであろうと思ったのでな、
しかし、今日、こうしてサスケ殿が参加されてるのを見て、
ワシよりは、平和的な他国との外交を行えるであろうという考えによって、
候補を降りるという訳じゃ」
「なる程、閣下の、お考えは理解出来ました。
他のお二方は、ただ今のブチクラース閣下の、
お申し出に対するご意見が御座いますか?」
「いや、任せてくれるって言うなら、
頑張るとしか言い様がないな」
「私も、ブチクラース殿の話と、その御心は十分に理解出来たが、
他国間との平和的な外交は兎も角、
現状の我が国の財政問題を、サスケ殿では解決出来るとは思えぬのだが・・・」
「それは、サスケ閣下が財政の面でも解決策を示せば、
タクサンノ閣下も候補から降りられるという事ですか?」
タクサンノの口振りから、そんなニュアンスを感じ取ったバケテナーイは、
そう質問をする
「うむ、私は元々、人の上に立つタイプでは無いからな、
参謀の様なポジションが性に合って居るのよ」
「そうで御座いますか、サスケ閣下、
タクサンノ閣下が、こう仰って御座いますが、
この国の財政を立て直す為の、
何らかの、お考えは御座いますでしょうか?」
「ああ、一応はあるんだがな、
それを証明する為の物が、そろそろ届く事になってんだけど・・・」
その時、サスケの発言を遮る様な形で、
会議室のドアがコンコン!とノックされた。
「ああ、来たかな?」
サスケは、そう言って席を立つと、
会議室のドアまで移動してから、ノブを捻ってドアを開けた。
開いたドアの外にはミルクが立って居り、
サスケの顔を確認すると、
「サスケさん、ジュリーさんが見えられましたよ」と告げた。
「皆さん、この国の財政を立て直す為の、
切り札が、ただ今、到着したみたいだから、
ご足労ですけど、パーティーホールまで移動して貰えますか?」
「パーティーホールですと?
こちらの部屋では、ダメなのでしょうか?」
バケテナーイが不思議そうな顔をしながら、
サスケに尋ねる
「ああ、ここじゃ、ちょっと小さ過ぎるからな」
「ここが、小さ過ぎる・・・」
バケテナーイは、50畳はあると思われる会議室を見渡しながら、
唖然とした様子で、そう呟いた。




