束の間の息抜き
「それでは、サスケ公爵閣下も候補者の一人という事で宜しいですかな?」
「ああ、ミルクも、こう言ってる事だし立候補してみるよ」
「ありがとう御座います。公爵閣下
では、今夜にでも他のお二方にお声掛けを致しまして、
話し合いの場を設けたいと存じますので、
ご参加を頂けますか?」
「ああ、俺は良いぜ」
「畏まりました
早速、手配の方を致します。」
フェルナリア皇国の宰相バケテナーイは、
サスケの他の次期皇帝候補者に連絡を取る為に、
執務室から出て行った。
「さて、夜までは暇になった事だし、
久し振りに、城下の街にでも行ってみるかな」
「お供を致しますわ」
「キキ~!」
サスケ達は、貴族の服装から、
冒険者の時に着る服装へと着替えると、城下の街へと出掛けて行った。
「おばちゃん!久しぶり~!」
サスケは、城下の街にある一件の食堂へと入って行くと、
客席の間を忙しそうに移動しながら、
客達の注文を捌いていた中年の女性へと声を掛けた。
「あら、あんた!
もしかして、遊び人のサブちゃんじゃないのかい?」
「ああ、俺だよ、久し振りだね」
「久し振りも良いとこさ、
何年も顔を出さないで、何処でどうしてたんだい?
その格好からすると、遊び人を止めて冒険者にでも成ったのかい?」
「フッフッフッ、そう思うだろ、
ある時は遊び人のサブちゃん、又ある時は冒険者のサスケ、
しかして、その実態は・・・皇国大貴族のサスケ様とは俺の事だ!」
「あんた、止めときなよ、
貴族を語ったのが兵士の耳にでも入ったら、それこそ首が飛ぶよ、
大体、あんたの顔は貴族って柄じゃないだろ」
「アハ、やっぱ、そう思うよな」
「当たり前だろうが、ホントにもう・・・うん、後ろのお嬢さんは誰なんだい?」
「ああ、俺の嫁のミルクだよ」
「宜しく、お願い致します。」
「何だって!?
この、キレイな娘さんが、あんたの嫁さんだって言うのかい!?
あんた、どんな卑怯な手段を使って、
この、世間知らずそうな、お嬢さんを騙したんだい?」
「おいおい、人聞きが悪い事を言うなよ、
俺にだって、見る人が見れば分かる魅力があるのさ」
「何が魅力だい、
ピーピング・モンキーに、毛が生えた様な顔してるくせに」
「プッ!クスクスクスクス」
「キキキ~!」
「ミルクもチビリンも、何笑ってんだ?」
「ご、ごめんなさいサスケさん、
お二人の、やり取りが余りにも面白いのでつい」
「キキ~」
「ほらほら、男なら詰まらない事にケチ付けて無いで、
さっさと、奥さんを席に案内しなよ」
「詰まらない事って、おばちゃんが言った事じゃないかよ・・・
まあ良いや、ミルク、チビリン、空いてる席に座ろうぜ」
「はい」
「キキ~!」
空いてる席に腰を下ろしたサスケ達の元に、
素焼きのコップに水を入れたものを、木製のトレイの上に乗せた
おばちゃんが、やって来て其々の前に置いた。
「それで、今日は何にするんだい?」
「俺は、いつものヤツね」
「はいよ!モツ煮込み定食だね」
「ミルク、チビリン、何が良いか分からなかったら、
ここの、モツ定は一食の価値があるぜ」
「では、私もサスケさんと同じ物を、お願いします。」
「キキ~!」
「おばちゃん、チビリンも同じので良いってさ」
「はいよ!モツ定3つだね、
ところで、さっきから気にはなってたんだけれども、
その小さい、女の子は何なんだい?」
「ああ、俺の使い魔みたいなもんだな」
「使い魔って、魔法使いの連中が偶に連れてるアレかい?」
「ああ、アレと同じ様なもんだな」
(まあ、ゴーレムなんて言っても信じては貰えないだろうし、
使い魔って事にしとけば良いだろ・・・)
「へ~、私は初めてみたけど、
こんな、人間ソックリな使い魔も居るんだね」
「ああ、元はピーピング・モンキーなんだけど、
魔法で見た目を変えてあるんだよ」
「あんた、そんなに凄い魔法が使えるのかい?」
「ああ、今まで顔を出さなかった間、
世界的に有名な魔法使いの師匠に付いて、魔法の修行を積んでたのさ」
「あ~ハイハイ、大方ダンジョンででも、
見た目を変えられる魔導具でも、手に入れたんだろ、
じゃ、モツ定3つだね、今持って来るよ」
おばちゃんは、そう言うと厨房の方へと行ってしまった。
「おばちゃんのヤツめ、
全部ホントの事なのに、全然信じて無いな・・・」
「クスクスクスクス」
「ミルク~?」
「だ、だって、サスケさんとの、やり取りが面白くてププッ・・・」
「何か、こういう店に来るとホッとするんだよな」
「勇者候補として城に、いらっしゃった時にも、
サスケさんは、よく抜け出して城下の街にいらしてましたものね」
「あれ?ミルク、俺が城を抜け出していた事に気付いていたの?」
「え、ええ、騎士団長さまに、
ちょっと、お聞きした事が御座いまして・・・」
ミルクは、少し慌てた様子でサスケに、そう告げた。




