リベンジャー
ピロンの街へと戻ると、
廃坑の場所を教えてくれたジョイケルが、
まだ門の警備をしていたので声を掛ける。
「ただ今、戻りました。」
「おお、サスケか、廃坑はどうだった?
何か鉱石は採れたのか?」
「はい、お蔭さまで、俺が趣味で使うには十分な量が採れました。
教えていただいて、ありがとうございました。」
「おう!良いって事よ、何か作ったら俺にも何かくれるか?」
「ええ、鉄剣でもプレゼントしますよ。」
「おお、それは楽しみだな!
うん?後ろの女の子たちは何だ?」
「ええ、パーティーを組もうかと考えまして、
戦闘奴隷を購入したんですよ。」
「へ~、稼いでいるとは思っていたけど、
一度に4人とは凄いな、それも可愛い子ばかりじゃないか、
一般人としては羨ましいばかりだな。」
「ええ、自分でも順調に行ってると思うので、
この街に、もっと貢献しようかと思います。」
「おお、頼んだぜ!」
4人を街へと入れる手続きをして貰ってから、
当座の生活用品や服などを購入する為に、
レトリバーさんの店を訪ねた。
「こんにちは~。」
「おう、サスケか、今日はどうした?」
「ええ、奴隷を購入したので、
生活用品や服を揃えようかと思いまして。」
「へ~、奴隷を買ったのか、どんなヤツ・・・ってサマンサたちかよ!」
「「「「レトリバーさん!?」」」」
「知り合いなんですか?」
「おう、俺はラッスンの街にも行商にいってるからな、
俺が出入りしている店の常連だったんだよ、
それにしても、何でお前たちが奴隷になってんだ?」
「それが、いつもの様に薬草の採取クエストを受けていたのですが、
不自然な程に失敗が続いて、違約金が払いきれなくなってしまったんです。」
「へ~、腕利きのお前たちが採取クエストに失敗し続けるなんてな・・・」
「彼女たちは、レトリバーさんから見て優秀に感じていたんですか?」
「ああ、そう思うぜ。」
「俺はレトリバーさんの、人を見る目を信用しているので、
彼女たちのクエスト失敗は仕組まれたものかも知れませんね。」
「何ですって!?」
「確かに、おかしいとは思ったんだけど・・・」
「アタイたちが、あれ程、見つけられないなんて変だもんね。」
「運が悪すぎるとは思ってたが、
仕組まれていたとすれば納得できるな。」
(この手の話は、テンプレだとすれば・・・)
「お前たち、何かのクエストで貴族と揉めた事が無かったか?」
「貴族と揉め事ですか?」
「あっ!あれじゃない、
領主をフェルナリアまで護衛した時の・・・」
「「「あっ!」」」
「何かあったのか?」
「はい、ラッスンの街の領主様を、
フェルナリア皇国の首都まで護衛したのですが、
その時に領主様が、
私たちに愛人になれと、しつこく言い寄っていたんですよ。
私たちは冒険者を止める気は無いと断ったんですけど、
ラッスンの街に戻るまで誘い続けていました。」
「ズバリ、その領主の仕業だな、
それなりの地位を持ってるんだろうから、
人を使って妨害とか簡単だろうからな、
奴隷にしてから、自分で購入する予定だったんだろうな。」
「何て事!許せないわ!」
「絶対、復讐してやるぜ!」
「お前たち、復讐をしたいか?」
「ご主人さまが、お許し下さるなら・・・」
「よし、俺の戦闘訓練に着いて来れたら、
お前たちの復讐を手伝ってやるぜ。」
「もちろん、やります!」
「ああ、恨みを晴らす為なら、どんな訓練にも耐えてみせるさ。」
「やるよ!」
「ああ!」
「よし、分かった。
では、レトリバーさん、俺たちは取り敢えず帰りますんで、
さっき頼んだ物を揃えて貰えますか。」
「ああ、今、揃えるぜ、
それとサスケ、お前なら心配いらないと思うが、
相手は領主だぞ、気を付けろよ。」
「ええ、なるべく、戦闘では無くて、
社会的な地位を奪う形で復讐しようかと思いますので、
その辺は大丈夫ですよ。」
「そうか、それなら大丈夫かな。」
レトリバーに品物を揃えて貰ったサスケは、
全て『魔倉』へと収納した。
「ご主人さまは、アイテムボックスをお持ちなんですか?」
「ああ、アイテムボックスとは違うんだけど、
空間魔法の一種だな。」
「さすが優秀でいらっしゃるんですね。」
「お前たちにも魔導バックを造ってやるからな。」
「魔導バックは、とても高価な物だと聞いた覚えがあるのですが・・・」
「ああ、そうらしいな、
でも、俺は自分で造れるからバックの値段だけだぜ。」
「ええっ!造れるんですか!?」
「ああ、商売にする気は無いから、
身内にしか造らないけどな。」
「お売りになれば、とても儲かると思いますが?」
「俺は、冒険者が気に入っているからな、
錬金や鍛冶は、飽くまで冒険者業の傍らだ。」
「鍛冶も、なさるんですか?」
「おう、お前たちの武器は俺が造ってやるよ、
ちなみに、これは俺が造った物だ。」
サスケはサマンサたちに忍者刀を見せた。
「これは!?もしかしてミスリル製ですか?」
「そうだ、剣と鎧を溶かして、
俺が造り直した物だ。」
「美しい波紋ですね、
見ただけで切れ味が分かる様な刀です。」
虎娘が、うっとりとした顔で見ている。
「お前たちの武器はミスリルって訳にはいかないが、
黒魔鋼の良いのが手に入ったから、
それで作ってやるよ。」
「黒魔鋼でも高級素材ですよ、
私たちが使うのなら普通の剣で十分です。」
「いや、俺の鍛冶の練習にもなるから、
黒魔鋼で造るぜ。」
「そう言う事でしたら、ありがたく頂戴致します。」
サマンサが辞退した時は、『何て事を!?』って顔をしていた虎娘が、
ホッとした顔をしていた。
(そう言えば、前にフェルナリアの森で会った時に、
虎娘は黒魔鋼の大剣を使っていたな・・・)
「じゃあ、我が家に帰るとするか。」
「「「「はい!」」」」
レトリバーの店から、少し歩いて自宅へと到着する。
「この大きな屋敷が、ご主人さまの家なんですか?」
「そうだ。」
「どんな悪い事すれば、こんな家が買えるんですか?」
「人聞きの悪い事言うなよ、
ちゃんと真っ当に盗賊団を幾つか潰して稼いだ金で買ったんだぜ。」
「盗賊団を幾つか潰すのが、真っ当かは分かりませんが、
ご主人様が凄い事は分かりました。」




