未来の車
翌朝となり、
廃坑まで、鉄を採りに行くサスケとサン達を、
ミルク達が、城の入り口にある門まで、見送りに来ていた。
「じゃ、俺達は出掛けるけど、
ヒナギク達の事を頼むぜ、ミルク」
「はい、分かりました。
行ってらっしゃいませサスケさん、
みんなも、サスケさんの事を頼むわね」
「「「「はい!ミルク様、行って参ります!」」」」
元気よく、サン達が返事を返した。
「気を付けて行って来るんじゃぞ」
「「「「行ってらっしゃいませ、ご主人様」」」」
「「「「「行ってらっしゃいませ、サスケ様」」」」」
「「「「「キキ~!」」」」」
「ああ、分かったよヴィン爺ィ、
みんなも、見送りご苦労さん、じゃ行ってくるわ」
サスケ達は、皆に見送られながらコウガ城を後にした。
「よし、ジュリー、この辺で出してくれるか」
コウガの街を出てから、暫く街道を進んだ辺りで、
サスケが、ジュリーに告げた。
「はい、お頭」
ジュリーは、ナニワ星のコテコテから貰った
指輪型の収納器具『空間庫』からエアカーを取り出した。
「おおっ!これがエアカーか!」
「お頭は、このフワフワ浮いてる箱みたいのを、
ご存じ何ですか?」
サンが尋ねて来た。
「ああ、見るのは初めてだが、
概念としては知ってるんだ、
俺や、ライさんが居た世界で、『将来的に現れるであろう』と、
言われていた乗り物なんだよ」
「では、コテコテ様の国は、
お頭やライ様の居られた国よりも進んでいるのですか!?」
「そういう事、何だろうな」
「お頭が、お持ちの知識にも驚かされるというのに、
それ以上となると、想像が付きませんね・・・」
「全部が全部、進んでるとは限らないし、
俺やライさんだって、こっちに来た時は魔法にビックリしたぜ」
「それは、そうですね」
「よし、じゃあ出発するから、
みんな乗り込んでくれるか」
「「「「は~い!」」」」
エアカーは3人掛けのソファーの様な座席が3列あり、
合計9名が乗り込める大きさになっている、
一番前の列の、中央の席の前にバイクの様なハンドルが付いていて、
それで、操縦する様であった。
「ふ~ん、バイクのハンドルと同じで、
右側のハンドルレバーを手前に回すと前に進むんだな、
戻すとブレーキが掛かって、奥に回せばバックか、
全部、手元で操作出来るのは楽で良いな」
サスケが、ハンドルレバーを手前に回すと、
エアカーは、ス~と滑る様に音も無く発進した。
「わっ!わっ!お頭、動き始めました!」
「全然、音がしないんですね」
「馬車と違って、振動も全くありません」
ジュリーと違って、初めてエアカーに乗る3人は驚きの声を上げている
「ああ、音がしないのは、
多分、重力を使った移動をしてるんだろうな、
振動がしないのは、見ても分かる通りに浮いてるからだな」
「重力での移動ですか?」
「ああ、手に持ってる物を放すと、地面に向かって落ちるだろ?
それは、地面に向かっての重力が働いてるからなんだ、
このエアカーの場合は、何らかの手段を用いて、
重力を地面では無くて、進行方向へと働かせているんだろうな」
「では、この車は前に向かって、落ちて行っているという事ですか?」
「簡単に言えば、そういう事だな」
「は~、凄い技術ですね・・・」
「ああ、全くだな」
エアカーの乗り心地は快適の一言に尽き、
コウガの街から、10キロ程離れた場所にある廃坑まで、
僅か10分程で着いてしまった。
「流石に、早かったな」
「はい!是非、操縦の仕方を憶えたいものです!」
「あ~、ロリーに教えるのは危険な気もするが、
一番、上手く操縦が出来そうな気もするんだよな・・・」
「お頭が、いらっしゃらない時にでも、
操縦が出来る者を、作って置いた方が良いかも知れませんね」
「そうだな、転移魔導具で行く事が出来ない、
初めて行く場所なんかに、行く場合は馬車より便利だから、
俺以外にも、操縦が出来るヤツが居た方が良いよな、
よし!帰り道は、ロリーに操縦の仕方を教える事にするか」
「ありがとう御座います!」
サスケ達は、エアカーをジュリーの『空間庫』に仕舞うと、
廃坑の入り口にあった朽ち果てた柵を動かして、
廃坑の中へと踏み入れた。
「お頭、この廃坑って、まだ鉄が採れるんですか?」
サスケに、そう質問をするリンの頭には、
サスケが『魔倉』から取り出して、皆へと配った
魔導ヘッドランプが、光を放っている
「ああ、ここは、鉄を掘り尽くして廃坑になった訳じゃなくて、
隣のルクシア共和国で、
ここより、かなり良質の鉄が採れる鉱山が発見されたんで、
掘るのを止めたそうなんだよ」
「なる程、では掘れば、まだまだ鉄は採れる訳ですね」
「ああ、質の方は俺が魔法で『錬成』すれば良いだけの事だしな」
「昔の人達は何で、お頭みたいにしなかったんですかね?」
「『錬成』なんて、金とかミスリルでもなければ使わないからな、
鉄を『錬成』してたら、雇った魔法使いに支払う手間賃で、
大赤字になっちまうよ」
「それも、そうですね」




