懐かしの我が家へ
「それじゃ、これで俺達は失礼します。」
「皆さん、お世話になりました。」
「「「「「お邪魔しました。」」」」」
「キキ~!」
予定通りに、ケモイヤー村での3日間の滞在を終えた
サスケ一行は、いよいよ自領であるコウガ領へと向けて、
出発する事となった。
「サスケ様、ミルク様、お付の皆さん、
当村への、ご滞在ありがとう御座いました。
それから、サスケ様、湯治施設の件をお願いしますぞ」
「ええ、折角、村長さん達が、
俺の提案に乗ってくれたんですから、
コウガ領に戻ったら早々に計画を進めて、
大工のゲインさん達にも依頼を出します。」
「資金繰りやら、工事の手配やらを、
サスケ様に、お任せしきりで申し訳無いのですが、
何卒、宜しくお願い申し上げますぞ」
「俺も、好きでやってる事なんで、
そんなに恐縮しないで下さいよ、
俺は、ここの温泉が大好きなんで、
ここの人気が落ちて、無くなる事にでもなると困りますから、
自分の為にも動いてると思って下さい。」
「ありがたい事です。」
「サスケ様、娘達に宜しくお伝え下さい」
「ミルク様、ジュリーに、村の食べ物は十分だから、
もう、そんなに沢山送って来なくても良いと、
お伝え願えますか?」
「サスケ様、ミルク様、お付の皆さん、
またこの村に、いらして下さいね」
「接客術の方も、磨きを掛けてお待ちして居ります。」
こうして、サスケらはケモイヤー村の人達に見送られながら、
馬車へと乗り込んで、村を後にした。
「サスケ様、村の人達は皆、良い人ばかりでしたね」
「ホントホント、イガ村を思い出して、
なんか、懐かしかったよ」
「そうだな、俺もケモイヤー村とか、
イガ村に行くと、何かホッとするんだよな」
「そうですわね」
「キキッ!」
「サスケ様、いよいよ、次はコウガ領ですけど、
どんな所なんですか?」
「元々は、フェルナリア皇国の辺境だったんだが、
現在は、ルクシア共和国とマッスル王国の共有領地になってるんだよ、
辺境だっただけあって、領地の広さが結構あったんで、
ルクシア共和国からフェルナリア皇国へとか、
マッスル王国からルクシア共和国に行く時なんかに、
必ずウチの領地を通らなければならないんで、
流通の要所的なポジションを占めてるな」
「それでは、経済的には安定してそうですね」
「ああ、治療薬や回復薬、魔導具なんかの販売もしてるんで、
サリエが言う様に、経済的には、
かなりの余裕があるんだが、一つ問題があってな、
新たな領として発足する際に、
旧領で汚職をしていた役人達を一掃したもんだから、
その経済規模に対する人力が圧倒的に不足してるんだよ」
「そうなんですか」
「だから、みんなには将来的に、
ウチの領地で活躍する人材に育って欲しいんだよな」
「お役に立てる様に頑張ります!」
「お給金を、はずんで下さいね」
「コラッ!タンポポ!」
「私は、美味しいものを食べさせて貰えれば良いかな~」
「私も、タナーカの街に帰らないで、
こっちで暮らした方が、魔導具の研究が進むかな?」
「ハハハ、勿論、役に立つ人材になってくれたら、
幹部待遇を期待してくれて良いぞ、
それと、サリエも、こっちで暮らす様なら、
店ごと、親父さん達に越してきて貰っても構わないからな」
「はい、父達とも相談してみます。」
キレイに整備された街道を進む馬車の旅は、
その性能もあり順調に進んで、
その日の夕方には、
サスケの城がある、コウガの街が見えて来た。
「お頭~!!」
偶々、街の防護壁の上に居たジュリーが、
サスケらの馬車を目敏く見つけて走って来た。
「おう!ジュリー、久し振りだな、
俺の留守中、領内の警備ご苦労だったな」
ジュリーの声を聞き付けたサスケが、
停車した馬車の窓から顔を出して、声を掛ける
「いえ、それが私達の仕事ですから、
何でもありませんよ」
「そうか、それは中々感心だな、
その感心なジュリーに、特別にご褒美をやろうじゃないか、
ちょっと、こっちに来いよ」
サスケは、両手で何かを包んでいる様な感じに丸めながら、
ジュリーに、そう告げる
「え~、何をくれるんですか?」
ジュリーは、スタスタと近づいて行くと、
サスケの手を覗き込んだ。
「これだ!」
サスケは、丸めた手を解くと、
サスケの手元を覗き込む様に、
頭を下げていたジュリーの頭に、ウメボシをカマした。
「いだだだだ!何で私にウメボシするんですか?お頭」
「ケモイヤー村の入り口に出来た看板だが、
良い出来だったな、ジュリー」
「アレですか!
いや~ハハハ、ホントは、
もう少し、お頭も大きく描く予定だったんですけど、
思いの外、私の絵が大きくなってしまいまして、
已む無く小さくなってしまったんですよ」
「まあ、良いんだけどな」
サスケは、ウメボシを解除すると、
ジュリーの頭をポンポンと軽く叩いた。
「えへへへ~、お頭、ミルク様、お帰りなさい」
「おう、ただいま」
「ただいま、ジュリーさん」
こうして、サスケらの約3か月にも及ぶ旅が終わりを告げた。




