提案型地域交流の奨め
「サスケ様、あの温泉というには本当に素晴らしいですね」
「ホントホント、お湯から上がって時間が経っても、
ずっと体がポカポカしてるよ」
「何か肌がツルツルになった気がするわ」
「私、お湯を飲んでみたけど、何か胃がスッキリしたよ」
「そうか、みんなが気に入ったみたいで良かったよ、
それから、タンポポ、温泉は泉質によって飲めない物もあるから、
気を付けるんだぞ」
「はい、サスケ様、この村の人に聞いたら、
飲んでも体に良いって言ってたんで大丈夫です。」
「おう、そうやって確かめてからにした方が良いな」
「私は、もう少しお湯が熱い方が好みですね」
「ああ、実は俺もそうなんだが、
獣人の人達は、熱いお湯が苦手だから、
この温度に設定してるんだよ、
弱塩泉だから、ゆったりと長く浸かってれば、
上がってから湯冷めしにくいしな」
「あ~、私達のイガ村にも温泉があれば良いのに」
「多分、イガ村でも造れるぞ」
「そうですよね、そう簡単には・・・えっ!?造れるんですか!?」
「ああ、フェルナリア皇国とザドス王国の間に、
跨る様に聳え立ってる『フジヤマ』は、
頭の火口から上がる噴煙を見れば分かる様に、
現役バリバリの活火山だからな、
あの山から、割と近くに位置するイガ村なら、
かなりの確率で温泉が出ると思うぞ」
「あの~、サスケ様、ご相談なんですが・・・」
「ああ、俺が行って温泉を掘ってやるよ」
「宜しいのですか!?」
「ああ、形ばかりとは言えイガ村は、俺の領地になったんだからな、
領主が、自分の領地の発展に尽力を尽くすのは、
当たり前の事だろ?」
「「「「ありがとう御座います!!」」」」
「サスケ様、ミルク様、我が村のサービスは、
合格点が頂けましたかな?」
サスケ達の会話が一段落するのを見計らって、
村長が話し掛けて来た。
「ええ、先程の挨拶でも言いましたが、
一流と言っても過言では無いサービスが、
ちゃんと提供出来ていると思いますよ」
「はい、王宮で開かれるパーティーと比べても、
遜色が無い程に、料理や人の流れがスムーズに行われていると、
思いますわ」
「そう、お二人に仰って頂けて幸いです。
村の者達も、皆、喜ぶ事でしょう。」
「客足の方は順調そうですが、
相変わらず冒険者の客が多いんですか?」
「はい、お客様の主力としては、
依然、冒険者の方々が中心ですが、
最近では、一度お見えになられた冒険者の方達や、商人の方達が、
お休みの日に、ご家族連れでいらっしゃって下さる様にもなりました。」
「そうですか、そこまで来れば、
口コミで、一般人の人達が湯治で訪れて来る様になるまで、
もう少しですね」
「湯治ですか?」
「ええ、温泉に入ると体の調子が良くなるという話が広まれば、
元冒険者の人で、どこか体の具合が悪い人とか、
お年寄りなども来る様になるので、
長期滞在する、お客さんとかが増えるんですよ」
「でも、サスケさん、
元冒険者の方で、お金に余裕がある方などは兎も角、
一般の、お年寄りの方達が、高い料金を払ってまで、
それ程、長くご滞在なさるのかしら?」
「そこで、湯治客用の施設を新たに用意するのさ」
「湯治客用施設ですか?」
「ああ、一部屋、一部屋に台所を設けて、
自分で調理出来る様にして、
その分、宿泊費を安く設定する様にしたり、
長期滞在割引を作ったりするとかな」
「なる程、お客様の人数に余り波が出ない様に、
コンスタントに収入が見込めるプランを設ける訳ですな」
「ええ、今の宿泊施設を造る時に、
俺が貸し付けた分の返済も、もう直ぐ終わる事だし、
新しい施設を造るんなら、また喜んでお貸ししますよ」
「そうですな・・・分かりました。
村の者達とも相談しまして、ご返事する様に致します。」
「ええ、どうぞ、そうして下さい。
今のままでも、十分な発展は見込めると思うので、
一つの提案をされた程度に、
考えて貰えれば良いんで、
やる、やらないは村の方達の判断で結構ですよ」
「分かりました。
では、さっそくパパサンらに相談して来るとしますので、
暫し、席を外させて頂きますぞ」
「ええ、どうぞ」
「サスケ様、私達の村に温泉を造るとして、
先程の、村長さんとのお話の様に、
何かしらの特色を出した方が宜しいのでしょうか?」
ヒナギクが、そう尋ねて来た。
「ああ、最初の内は、イガ村の人達で楽しんでいれば良いと思うが、
他の村や街との交流に利用するとするなら、
何かしらの話題性があった方が良いな」
「やはり、そうですか・・・
利益を上げるのが目的で無い場合などは、
どの様な工夫をすれば良いですかね?」
「ズバリ!混浴だな」
「混浴ですか?
それは、どの様なものなのでしょうか?」
「男と女が、一緒に温泉に入るのだ」
「ええ~っ!?それは、ちょっと・・・」
「サスケ様、それは破廉恥過ぎるでは無いのでしょうか?」
「お年寄りなら兎も角、若い人には受け入れられないのでは?」
「私は面白いと思うけどな」
「おいおい、勘違いするなよ、
誰も、裸で入るとは言って無いだろ、
裸で入る男湯や、女湯の他に、
水着を来て入る混浴を造るんだよ」
「水着ですか?」
「ああ、水に入る時に着る服って考えれば良いぞ、
薄手だけど、水に透けない素材で作って、
着たまま温泉に浸かっても、
それ程、違和感を感じない様に造ってやるよ」
「それならば、恥ずかしくは無いですし、
男女が一緒に楽しめるかも知れませんね」
「そうだね、交流を深めるのに良いかもね」
「温泉に浸かるとリラックス出来るから、
意味の無い衝突とかも無くなりそうだしね」
「まさに、裸の付き合いって訳だね」




