様式美
「おお、ロリーのお袋さんが、
時々、掃除をしてくれてたから、キレイなもんだな」
「そうですね」
村長への挨拶を終えたサスケ一行は、
ロリーの家に寄って鍵を借りてから、
別荘へと到着していた。
「サスケ様、この建物の造りは、
私達の村の建物の造りと似てますね」
建物の中を、物珍しそうにキョロキョロと眺めながら、
タンポポが言った。
「ああ、俺が設計したんだけど、
日本風の和風建築って形なんだよ」
「ああ~、やっぱりそうなんですか、
私達の村の建物の形も、サイゾウ様が造られた物を、
真似た形で代々造りかえられて来たそうですから」
「ああ、確かに和風建築だったな」
「あちらにある釜戸は現役なんですか?」
「いや、あれらは形を似せてあるだけで、
中身は、みんな魔導具に改造してあるんだよ」
「流石は、サスケ様の別荘ですね、
私達の村では、釜戸が現役で薪を焚いていましたものね」
「でも、ゴハンを炊いたりする時は、
釜戸で炊いた方が美味しく出来るんだぞ、
俺も、ここの魔導具を、本物の釜戸に近付けるのに、
えらい苦労をしたからな」
「そうなんですか?」
「ええ、本当よ、
サスケさんは凝り性だから、納得が出来る物が出来上がるまで、
何回も造り直していたわよね、チビリン」
「キキ~!」
「サスケ様程の、お方でも新しい魔導具を造り上げるのには、
それ程の苦労をされるんですね」
同じ、魔導具を造り出す者として、
サリエは、何かしら心に感じ行った様だ。
「そりゃそうさ、中々上手く行かないからこそ、
完成した時の、喜びが一入なんだぜ」
「はい、分かる気がします。」
「よ~し、各自、部屋に荷物を納めたら、
温泉に入ってサッパリしてから、
ケモイヤー村で開催してくれる宴会に行くぞ」
「はい、分かりましたわ」
「「「「「は~い!」」」」」
「キキ~!」
各々、好きな部屋に荷物を入れると、
着替えや手拭いを持って温泉へと向かう
チビリンは一応、護衛の為に、
ミルクらと女湯に向かったので、
男湯の方は、サスケのみであった。
サスケは、『浄化』の魔法を自身に掛けてから、
ザッと掛け湯をして、そろそろと湯船に身を沈めていった。
「ふぃ~、やっぱり温泉は良いな~」
サスケの他にも、チラホラと入浴客が居るものの、
大露天岩風呂自体が巨大なので、広々としていた。
「何か温泉自体も、こなれて来たのか、
出来た当初から比べると、お湯が柔らかくなった感じがするな」
「ほう、やはりお分かりになりますか」
「ああ、村長さんも入られていたんですか」
「ええ、今、来たところです。」
「ところで、先程の『分かった。』とは?」
「それなのですが、最近、
源泉の、落ち葉などを掃除に行った者が気付きまして、
源泉から湧き上がるお湯に気泡が多く含まれる様に、
なっているらしいのですよ」
「なる程、それでお湯が柔らかく感じる様になったのか、
しかし、その気泡っていうのは何なんだろうな?
空気とか炭酸とかなら良いけど、
火山性のガスとかだったら、
濃度が高くなると危険も考えられるよな・・・」
「その者の話では、刺激臭では無かったとの事でしたな」
「そうですか、人族より嗅覚が優れている、
獣人の方が、そう仰ってるなら大丈夫かな」
「はい、源泉周辺の鳥などの様子も、
変わり無いとの事でしたので、
恐らく心配は無いものと思われます。」
「なら、温泉のマッサージ効果が上がったって事で、
万々歳ですね」
「はい、前より疲れが取れ易くなったとか、
湯冷めしにくくなったとか、お客様には好評です。」
「それは、良かったですね」
「はい、ありがとう御座います。」
「キキキ~!」
その時、男湯と女湯の間に立ってる、
仕切り板の上に、チビリンが現われてサスケに向かって、
何かを告げた。
「はて?
チビリン殿は、何を言って居られるのですかな?」
「ええ、女性陣が、そろそろ上がるので、
俺も上がって、一緒に宴会に向かおうとの事です。」
「そうでしたか、
それでは、私も一緒に上がって、
宴会の準備の手伝いにでも向かうとしますかのう」
「何か、お手伝い出来る事とかありますか?」
「今日は、ゆっくりとしていて下さいませ、
サスケ様は、村の者達の、接客の上達振りを見ていて頂けますか」
「分かりました。
今日は、持て成される側で過ごす事としましょう。」
「はい、お願い申し上げます。」
サスケが、男湯から出ると、
ミルクらは、マッドパイソンの乳で作った
冷えたフルーツミルクを楽しんでいるところであった。
「美味そうだな、俺も貰うとするかな」
「ええ、とても美味しいですわよ、
はい、サスケさん、どうぞ」
ミルクが、新しいフルーツミルクの封を切って、
手渡してくれたので、
サスケは、ゴクゴクと喉を鳴らしながら、
それを、飲み干した。
「プハ~!こりゃ美味ぇな~、
冷え過ぎず、温過ぎずの絶妙な温度管理だな」
「サスケ様、さっきチビリンちゃんもやってんですけど、
フルーツミルクを飲む時に、腰に手をやるのは何か意味があるんですか?」
「ああ、単なる様式美だから気にするな」
「はあ・・・」




