スペックのホルダー
「うん?
あれは、パパサンさんじゃないのか?」
「その様ですわね」
街道の、ケモイヤー村へと繋がる枝道とは、
反対側に広がる森から出て来て、サスケらの馬車へと向かって来たのは、
サスケの部下であるサンの父親、狩人のパパサンであった。
「サスケ様、ミルク様、ご無沙汰して居ります。」
「こちらこそ、ご無沙汰です。パパサンさん」
「お久し振りですね」
「今、御着きになった所ですか?」
「ええ、ちょうど着きまして、
前に来た時には無かった案内看板があったので、
眺めていた所です。」
「ああ、この看板ですか、
サスケ様に失礼だから、止めとけってジュリーに言ったんですが、
『お頭は、シャレが分かる方だから大丈夫だよ』とか言って、
聞き耳持たんのですよ」
「はあ、まあ、それは確かに良いんですが、
これだけの看板を作るとなると、
大工のゲインさん達に頼んでも結構高かったんじゃないですか?」
「ああ、この看板はジュリーが作ったんですよ」
「えっ!?マジですか?」
「凄い出来栄えですわね」
「ええ、何か魔導具らしい指輪の中に、
沢山の材料を入れて運んで来たかと思うと、
自分で加工しながら組み立てて行って、
最後は絵まで描いてから帰って行きました。」
「休みの日とかに、ゲインさんとこで、
大工仕事の手伝いとかしてたのは知ってたけど、
これ程、上達していたとはな・・・」
「はい、驚きましたわ、
こちらの道でも、食べて行けそうな腕前ですものね」
「確かに、
それに、あの看板絵の出来栄えなんてカナリのもんだぞ、
普通の紙に描くのと違って、看板に大きく描くのって難しいんだよ」
「ええ、私共もビックリしましたよ」
「ジュリーって、意外と何やらせてもソツ無く熟して、
何気にスペック高いよな~」
「そうですわね」
「サスケ様、ここで、こうしてても何ですから、
村へと行きませんか」
「そうですね、そう言えばパパサンは森に行かれてたみたいですけど、
狩りにでも行ってたんですか?」
「いえ、今日は狩りでは無くて、
サスケ様方が、いらっしゃるとお聞きしたので、
これを、採りに行って来たんですよ」
パパサンは、腰に下げたカゴの蓋を開いて、
サスケの方へと向けながら、そう言った。
「えっ、何が入ってるんですか?」
サスケが、そう言ってカゴの中を覗きこむと、
そこには、細長い何かの幼虫が大量にウネウネと動いていた。
「ヒョェェェェェ~!!
も、も、も、もしかして、ソレって食べるんですか?」
「ええ、ポテラという蝶の幼虫なんですけど、
美味しくて栄養が沢山あるんですよ、
サスケ様だって、この前、来られた時に、
『美味しい、美味しい、ちょ~美味しい』って、
仰られてパクパク食べられていたじゃありませんか」
「えっ!?
あれってポテトフライじゃ無かったの?」
「ええ、ポテラフライですよ」
「ギョェェェェェ~!!
誰か、俺の記憶を消し去ってくれ~!」
「ミルク様、サスケ様は虫料理が苦手で、
いらっしゃるんですか?」
「ええ、イナゴとか、蜂の子もダメらしいです。」
「そうなんですか、蜂の子なんて、
とても美味しいんですけどね、
ウチの村でも、とても人気がありますよ」
「あら、そうなんですか、
マッスル王国のライ様の所で、ハニービーの巣が採れますから、
送って頂くように頼んでみますか?」
「ええ、是非に!」
「あの~、ミルク様、
サスケ様が『記憶よ消えろ!』と仰りながら、
木の幹に頭を打ち付けて、いらっしゃるんですけど、
お止めしなくても宜しいのでしょうか?」
心配したヒナギクが尋ねて来た。
「ええ、ああ成られてしまうと暫く元には戻りませんから、
様子を見る事と致しましょう。
多少、頭に傷が出来たところで、
サスケさんが造った良く効く治療薬がありますから、
直ぐに元通りですわ」
「傷が消えれば良いって訳でも・・・」
多少の問題はあったものの、
サスケは、久し振りにケモイヤー村を訪れる事となった。
「ハイサイチュ~ガナビラ!」
「だから!何で沖縄言葉なの!?」
「いや~、お久し振りですな、サスケ様」
「村長さんも、お元気そうで何よりです。」
ケモイヤー村の入り口で、サスケらを出迎えたのは、
村長のソンチョーである
「ご無沙汰して居ります。村長さん」
「ミルク様も、ようこそいらっしゃいました。」
「「「「「お世話になります。」」」」」
「キキ~!」
「皆さんも、どうぞ、ごゆっくりしていらして下さい。」
「村長さん、温泉客の方は順調ですか?」
「はい、お蔭様で、
勇者のライ様が、よく見得られるのに加えて、
サスケ様が英雄となられてからは、
英雄が造った温泉大露天岩風呂と聞き付けた
お客様方が、よくいらっしゃって頂いて居ります。」
「そうか、こんな俺でも、
ここの宣伝に、一役買ってると思うと嬉しいもんだな」
「ミルク様、サスケ様は何で、
この村に、こんなに入れ込んでいらっしゃるんですか?」
サスケの入れ込み様を不思議に思ったサリエは、
ミルクに尋ねてみた。
「何でも、サスケさんや、ライ様がいらした国では、
この村に、サスケさんが造った温泉というのが、
国民的に愛されていたらしいのよ」
「へ~、そうなんですか」




