看板
翌朝となり、サスケ一行は次の目的地へ向けての、
出発の時を迎えていた。
「お世話になりました。ライさん」
「いや~、こちらこそ、
色々と、ご馳走になって、みんな喜んでたよ」
「そう仰って頂けると、
俺も嬉しいです。」
「でも、本当に良いのか?
調理魔導具を貰っちゃっても」
「ええ、サリエがいれば、
ウチは、また造れますから、
なっ!サリエ」
「はい、研究用に、
沢山の、雷魔法が付与された魔石を頂きましたから、
直ぐにでも造れます。」
「そうか、魔石の高効率化の研究に使う、
魔石が足りなくなったら、連絡くれれば直ぐに追加で送るからな」
「はい、ありがとう御座います。
でも、沢山頂きましたので、暫くの間は大丈夫だと思います。」
「そうか、その研究が成功すれば、
魔導具造りにも、一大センセーションを巻き起こす事になると思うから、
頑張ってくれよな」
「はい!ご期待に沿える様に頑張ります。」
「おう!頼んだぜサリエちゃん
あと、サスケ達は予定では、
これからケモイヤー村の温泉に寄ってから、
自領に帰るんだよな?」
「ええ、久し振りに温泉にでも浸かって、
ユッタリして来ようかと思います。
そうだ!ライさん達も、ご一緒にどうですか?」
「ああ、行きたいのは山々なんだが、
ここんとこ忙しいし、パサラ達の学校もあるからな、
再来月には学校も夏休みに入るし、俺の方も一段落すると思うから、
その時にでも、みんなで伺う様にするよ」
「分かりました。
そん時は、ウチの別荘も使って下さいね」
「ああ、俺達で使わせて貰って、
他の連中は、宿泊施設の方に泊まらせるよ」
「そうですか、別荘の鍵はロリーの家に預けてありますから、
そちらで、受け取る様にして下さい」
「おう、分かった。」
馬車の準備が整ったとの連絡が入ったので、
サスケ一行は、見送りのライらと共に、
コエドの街の門へと移動した。
「それじゃ、皆さん、お世話になりました。」
「お世話様でした。
ルクアさん、講師の件は、また連絡しますね」
「「「「「お世話になりました。」」」」」
「キキ~!」
「おう!いつでも歓迎するから、
また来いよな!」
「皆さん、また、いらして下さいね、
ミルクさん、連絡待ってるわ」
「スイーツご馳走様でしたわ」
「今度は、私も一緒に狩りに行くからな」
「また来なよ!」
「バイバイ」
「ホットケーキ美味しかったです。」
「「キキ~!」」
こうして、サスケらが乗った馬車は、
ライ達に見送られながら、コエドの街を後にした。
コエドの街から、ケモイヤー村方向への街道は一本道なので、
村が近付くまでは、ヒナギクらが御者を務めて居り、
いつもの様に、チビリンが馬車の屋根の上で、
周辺の警戒に当たっていた。
「なあミルク、さっき言ってた『講師の件』って何なんだ?」
馬車の中で、人心地ついた辺りで、
サスケが、そう切り出した。
「ええ、それなのですが、
ルクアさんから、子ども達の学校で、
ヴィン爺ィ様に、短期の講師をして頂けないか、
聞いてみて欲しいと頼まれたのです。」
「なる程、そういう事なのか、
ヴィン爺ィは、人にものを教えるのが上手いし、
子ども好きだから、引き受けてくれるんじゃないかな」
「はい、私も、そう思います。」
「もし、そうなったら、
助手でベル達と、護衛でレッド達を付けるから、
ミルクが引率してってくれるか?」
「はい、分かりました。」
ケモイヤー村へ向けての馬車の旅は、
途中で何度か、商隊の馬車とすれ違う程度で、
何の問題も無く進んで行った。
「サスケ様、何やら大きな看板が見えて来ましたが、
あの看板の所が、ケモイヤー村の入り口なんでしょうか?」
御者を務めていたタンポポが、
馬車を街道の端に寄せて停車させてから、尋ねて来た。
「看板だって?
お客さんが増えたから、村長さんが作ったのかな?」
サスケは、ミルクらと一緒に馬車から降りて見てみる事にした。
「あら・・・」
「・・・・・。」
馬車から降りたサスケらの目には、
『ケモイヤー村の星ジュリーが仕える、
英雄サスケ様が造った
温泉大露天岩風呂こちら』と書かれた
巨大な矢印看板が映し出されており、
その看板の端の方には、
良く似た似顔絵が描かれているのだが、
ジュリーの大きな笑顔の横に、申し訳程度に描かれた
小さなサスケの顔が笑っている
「あ、あら、良く描かれた似顔絵ですわね・・・」
ミルクも、どうフォローして良いのか分からなかったので、
取り敢えず似顔絵を褒めて置いた。
「う~む、このクオリティーの高さからいって、
大工のゲインさん達に頼んで作って貰ったんだろうが、
一体、いつの間に・・・」
「そうですわね、ゲイン様方は人気があって、
いつも、お忙しいから、
そうそう、この村の仕事ばかり受けられないと思いますものね」
「だよな」
「キキキ~!」
その時、周辺を警戒していたチビリンが、
注意を促す鳴き声を上げた。
「サスケさん、チビリンちゃんは何て?」
「誰かが、こっちに向かって来るってさ」




