マッチポンプ
「そんじゃ、馬車に乗ってる奴隷の契約をして貰おうかな。」
「畏まりました。」
カモネーギは、馬車の檻に付いている鍵を開けて、
中の奴隷たちに声を掛ける、
「お前たち出てこい、お前たちのご主人さまが決まったぞ。」
「「「「はい。」」」」
奴隷たちが返事をして、檻から出て来た。
「ただ今、奴隷たちの主人は私に仮契約してありますので、
解除いたしましてからサスケさまとの本契約となります。」
「分かった。」
カモネーギは魔導具らしきものを、
奴隷たちが付けている首輪に近付けて、
何らかの作業をしている。
「これで、仮契約は解除できましたので、
サスケさまの血を首輪に付けて頂いて契約の作業をいたします。」
サスケは、忍者刀で指を少し傷つけて、
奴隷たちの首輪に血を付けて行った。
カモネーギが、先程の魔道具で何か作業をすると、
奴隷たちが付けている首輪がピカッと光った。
「これで、契約が出来ました。
お前たち、サスケさまは優秀な冒険者だから、
心して仕えるんだぞ。」
「「「「畏まりました。
サスケさま、よろしくお願いします。」」」」
「お前たち、何で冒険者から奴隷になったんだ?」
「私たちを知ってるんですか?」
犬獣人の女性が訪ねた。
「俺だよ。」
サスケは、忍者装束の頭巾を脱いだ。
「「「「あっ!」」」」
「確かフェルナリアの森で会った・・・」と、鷹獣人の女性に続き、
「モロ出し君だ!!」と、ネコ獣人の女性が言った。
「モロ出し君は止めろ。
俺はサスケって言うんだ、よろしくな。」
「あなたが私たちの、ご主人さまなんですか?」
基本的に質問は元リーダーの犬獣人の女性が行うようだ。
「そうだ、こう見えて俺は優秀な冒険者に成ったから、
お前たちを養って行くぐらいの甲斐性はあるぞ。」
(奴隷の購入費が浮いたから、資金的には余裕だな。)
「そうですか、私たちも戦闘ならお役に立てると思いますので、
よろしくお願いします。」
「おう、よろしくな。」
「ご主人さまは、どこの街のギルドに所属しているのですか?」
「ピロンの街だ。」
「じゃあ、これから私たちもピロンに行くんですね。」
「そうなるな。」
「サスケさま、少しお話させて頂いても宜しいでしょうか?」
カモネーギが声を掛けて来た。
「ああ、構わない。」
「実は、私共の護衛に付いていた傭兵たちの遺品を回収したいのですが、
お付き合い願えますでしょうか?」
「親しい者たちだったのか?」
「ええ、彼ら4人は同じ村で育った若者たちで、
一緒にラッスンの街へと出て来て傭兵ギルドに登録したのですよ、
最近は大分、実力を付けて来ていて、
村から恋人を呼んで結婚するんだと言っていました。」
(やめろよ~、そう言うの聞いちゃうと心が痛むだろ~)
「せめて、ご家族や恋人の方に遺品を渡してあげたいのです。」
(仕方が無い、奥の手を使うか。)
「では、まだハンターウルフが居るかも知れないので、
俺が行って回収してきますよ。」
「ご主人さま、私たちも連れて行って下さい!」
犬娘が言って来る。
「お前たちは、まだ武器や防具が無いだろ、
ハンターウルフぐらい何十匹居ても問題無いから、
ここで、カモネーギさんを護っていろ。」
「何十匹居ても問題無いとは凄いですね、
分かりました、私たちは、ここでお待ちしております。」
「ご主人さま、気を付けてね~。」
「おう、行ってくる。」
先程の場所へと戻ると、
まだ、ハンターウルフたちが傭兵の遺体を食い荒らしていたが、
皆、鎧を着込んでいたので胴体部分は残っている。
(胴体が残っていれば楽勝だな。)
サスケは、食事に夢中で周りに注意を払っていないハンターウルフに、
『隠密』を使って近付いて行き、次々と忍者刀で屠っていく、
ハンターウルフの毛皮は売れるので、
死体は『魔倉』に収納していった。
「よし、全部討伐したな、
次は『蘇生』×4と・・・」
「あれ?」
「俺たち、どうしたんだ?」
「確か、ハンターウルフに襲われて・・・」
「傷が無くなってるぞ?」
「カモネーギさんに頼まれて、私がお助けしました。」
(マッチポンプだけどね・・・)
「あなたは?」
「私はピロンの街で冒険者をやっているサスケと申します。
カモネーギさんがハンターウルフに襲われている現場に、
たまたま出会わせまして、お助けしたのですが、
皆さんのご心配をしていらっしゃったので、
私が見に来た次第であります。
傷は治療薬を持ち合わせていたので治しておきました。」
「それは、何から何までお世話になってしまいまして申し訳御座いません、
それでは、カモネーギさんはご無事なんですね?」
「ええ、この先にご無事でいらっしゃいます。」
「では、その場所へとご案内して頂けますか?」
「ええ、こちらです。」
傭兵たちと、しばらく歩くと、
カモネーギさんの馬車が見えて来た。
「君たち無事だったのか!?」
「はい、サスケさんに助けて頂きました。
カモネーギさん、最後までお守り出来なくて申し訳ありませんでした。」
「いや、あの数のハンターウルフに襲われたら仕方が無いよ、
君たちが大部分を引き付けてくれたから、
私もサスケさまに助けて貰えたんだよ。」
「そう言って頂けると助かります。」
「じゃあ、暗くならない内にラッスンの街へと帰るとするか。」
「分かりました。
サスケさん、治療薬の代金は必ず払いに行きますから、
少し待って戴けますか?」
「いや、治療薬の代金は必要無いですよ、
カモネーギさんから、護衛の代金として奴隷を頂いたので、
それで十分です。」
「カモネーギさん、奴隷を手放したのですか!?」
「サスケさまには危ない所を助けて戴いたからね、
それに優秀な冒険者と繋がりが出来たから、
損はしていないよ。」
「重ね重ね申し訳ありません、
奴隷の代金は俺たちが少しずつでもお返しいたします。」
「いや、必要ないよ、
君たちはサスケさまが戦っている所を見ていないから分からないだろうけど、
あの強さは、必ず有名な冒険者に成られると、感じさせる物だったからね、
サスケさまと知り合えただけで、元は十分に取れてるさ。」
「分かりました。
カモネーギさんが、それ程仰るなら相当な腕前ですね、
今回はご厚意に甘えさせて頂きます。」
「うん、それで良いよ。」
「じゃあ、カモネーギさん、私たちもピロンに帰るとします。」
「そうですか、今日は、ありがとうございました。
ラッスンの街へとお越し頂くのを、心よりお待ち申し上げております。」
「はい、近い内に顔を出すようにします。」




