テンドン
「それじゃ、お願いします。
リーナさん、パサラちゃん」
「「「「「お願いします。」」」」」
「キキッ!」
翌朝になり、朝食と、その後の食休みを終えたサスケ一行は、
マッスル王国の王都コエドにサリエを残して、
リーナとパサラの案内で『魔の森』へと向かって、
バニランの匂い袋を採取する事にした。
「アイヨ!今日はアタイとパサラに任せて、
サスケさん達は、泥船にでも乗ったつもりで、
安心してて良いよ」
「泥船じゃ、全然安心出来ないんですが・・・」
「ハハハ、こう見えても、
リーナやパサラは『魔の森』のベテランだから、
案内はホントに任せて大丈夫だぜ」
「はあ、まあライさんが、
そう仰るなら、本当に大丈夫なんでしょうね」
リーナの案内で、コエドの街を出ると、
他国へと続いている街道を外れれば、
もう、そこは『魔の森』である、
マッスル王国は、『魔の森』の一部をライ達が、
切り開いて創った国なので、
街を一歩でれば、直ぐに『魔の森』が広がっているのである、
もっとも、街の周辺は冒険者達が頻繁に魔獣を狩っているので、
お目当ての獲物を手に入れるには、
もう少し森の奥へと進む必要がある
「バニランが、近くに居るよ」
『魔の森』へと足を踏み入れて、
僅か10分程度でリーナが告げた。
「えっ!?こんなに街から近い所に居るんですか?」
確かに、サスケの鼻にも、
バニラの様な甘い匂いが漂って来ている
「ああ、バニランの素材は、買い取り料が安いからね、
大概の冒険者達はスルーして、もっと森の奥へと向かうのさ」
「なる程、この森の魔獣は貴重なものが多いから、
高値で取引されるものが、少なくありませんものね」
ミルクが、納得した様に言った。
「そう言う事さ・・・居たよ!」
リーナが指差す方向へと目を向けると、
高さ2メートル程の、地球で見た事がある、
食虫植物のウツボカズラに似た形をした
植物系の魔獣がズルズルと移動しているのが、
サスケの目に映った。
その、マメのツルの様な触手を器用に使いながら、
ユックリと移動する姿は、ユーモラスですらあった。
「へ~、あれがバニランなのか」
「そうだよ、甘い香りで獲物を引き寄せてから、
あの、草のツルみたいな触手で捕まえて、
壺みたいな形をした消化槽で溶かして、
栄養にしてから吸収しちまうのさ」
「へ~、見たまんまの魔獣なんですね、
それで、どうやって倒すのが良いんですか?」
サスケがリーナに向かって問い掛けると、
誰かが、サスケの服の袖をクイクイと引いた。
「うん?あ~パサラちゃんか、何?」
サスケが振り返ると、そこには袖を引くパサラの姿があった。
「見本」
「えっ?パサラちゃんが採取の仕方の、
見本を見せてくれるの?」
「そう」
「じゃあ、お願いしようかな」
「分かった。
・・・『煉獄』」
パサラが、そう魔法の呪文を唱えると、
バニランの足元にタール状の黒い液体の様な物が広がって、
そこから伸びた数本の黒い触手に掴まれたバニランが、
ズズズと沈み込んでいった。
「・・・え~と、
素材は、どうなったのかな?」
「しまった。」
パサラが、全然、残念そうな素振りを見せずに、
そう言った。
「ハハハ、パサラは相変わらずだな、
心配しなくても、バニランなら、
ここらには幾らでも居るから大丈夫だよ、
ほら、あそこにも居るだろ、
ここは、アタイに任せな!
『フライング・ハンマー!』」
リーナが、ウォーハンマーを投げると、
バニランへと一直線に飛んで行って、
ドガッ!という音を残して、バニランがバラバラになった。
「フッ、峰打ちだ安心しろ」
「いやいやいや、バニランがバラバラになってるし、
あんなんなっても、素材の回収が出来るんですか?」
「まあ、出来んわな」
リーナが、テヘッみたいな顔をしながら告げる
「いつもは、どうやって狩るんですか?」
ヒナギクが、リーナに質問する
「そうだね~、ライの雷撃パンチで気絶させるか、
フローラの『眠りの矢』で眠らせてかな」
リーナの隣で、パサラもコクコクと頷いていた。
「なる程、雷魔法は使えないから、
そうすると、眠りの方になるな・・・よし、チビリン」
「キキッ!」
サスケが指示を与えると、
チビリンは、どこかへと姿を消して、
暫くしてから戻って来た。
「キキ~!」
「そうか、上手く行ったか」
「サスケ様、チビリンちゃんは、どこに行ってたんですか?」
タンポポが尋ねて来る
「ああ、俺の考えが上手く行くかの、
検証をして貰ってたんだよ、
まあ、百聞は一見にしかずって言うから、
見た方が早いな、チビリン案内してくれるか」
「キキッ!」
一行は、チビリンの案内で森の中を進んで行く、
すると、10分程進んだ辺りで、
触手をクタッと下に降ろしたバニランが見えた。




