サリエ式
「おう、サリエに何か良い案があるなら、
どんどん、発言してくれよ」
「では、失礼しまして、
先程、ライ様は魔石に2系統の雷魔法を付与されようとすると、
2つに割れてしまうと言われていましたが、
2つでは何か不味いのでしょうか?」
「なる程、それもそうか・・・」
「どういう意味なんだ、サスケ」
ライは、サリエが言いたい事が分からなかった様で、
サスケに尋ねて来た。
「一つの魔石で造るのでは無くて、
最初から、魔力を放出する魔石と、
吸収する魔石に分けて造れば良いのでは?って事ですよ」
「ああ、そういう事か、
魔導具の方は、それに合わせて作れば良いから、
それならば可能かも知れないな」
「はい、魔力を吸収する魔石は長持ちすると思いますから、
放出する魔石を何度か交換してからの、
交換で済むとおもわれますし、
あとは、魔力を放出する魔石の方ですが、
魔力を取り出す部分以外を、
魔力を通しづらい鉛で覆えば、
長持ちするものかと思われます。」
「へ~、魔石を鉛で覆うと長持ちするんだ」
「はい、雷魔法の魔石からの、
魔力量を抑える研究をしていた時に、
気が付きました。」
「ほう、なかなか将来が楽しみな、
お嬢さんだな、サスケ」
「はい、期待のルーキーです。」
「あ、ありがとう御座います。」
「それで、この2種類の魔石を使ったシステムだがな、
雷魔法の魔石は、研究用にタダで提供するから、
サスケの所で開発してくれねぇかな?
残念ながら、ウチの国は、
サスケんとこ程に、錬金術や魔導具の技術が進んで無いんだよ」
「ええ、良いですよライさん、
どうだ?この開発はサリエが中心になって、
やってみないか?」
「えっ!?私なんかで、宜しいのですか?」
「ああ、今の所、この原理に一番詳しいのはサリエなんだし、
研究場所や資材提供にアドバイスなんかはしてやるから、
やってみたらどうだ?」
「はい!是非、私にやらせて下さい!」
後に、この魔導具用の動力方式はサリエ式と呼ばれて、
多くの魔導具に導入される事となるのであるが、
それは、また別の話である・・・
「ライもサスケ君も、
難しい話は、そのぐらいにして、
夕食の準備が出来たって言うから、みんなで食べないか?」
ライ達の会話が一段落したのを見計らって、
エルザが声を掛けて来た。
「おう、もうそんな時間か、
すっかり話し込んじまったな、
サスケ、飯にしようぜ」
「はい、分かりました。
みんな、ご飯を頂く事にしよう」
「はい、サスケさん」
「「「「「はい、サスケ様」」」」」
「キキッ!」
元冒険者のライが国王なだけあって、
王家の食事にしては、かなりのボリュームがある、
コッテリ系の豪華料理に舌鼓を打ったサスケらは、
食後のコヒ茶や紅茶を楽しんでいた。
「ウチの国の料理は口に合ったか?
サスケの料理程じゃ無いにしても、
そこそこ美味かっただろ?」
「はい、余り見掛けない食材ばかりで、
どのお料理も新鮮な気持ちで、美味しく頂きました。」
「そうか、ありふれた美味いもんなんて、
食い慣れてると思ったから、
『魔の森』で採れる珍しい食材を使って作らせたんだが、
正解だった様だな」
「はい、ご馳走になりました。
お礼にデザートを作って、ご馳走しますから、
少々お待ち下さいね」
「おう、それは楽しみだな」
サスケは厨房を借りると、
調理テーブルの上に皿を並べてから、
『魔倉』から、マッドパイソンの乳、
ホロホロ鳥の卵、砂糖を取り出した。
そして、乳と卵黄と砂糖を混ぜ合わせながら、
バニランの匂い袋から採れるエッセンスで、
香りを調整していった。
「よし、こんなもんで良いかな」
サスケは、食材の撹拌と、香り付けが、
上手く行った頃合いを見計らって手を止めると、
調理魔導具を低温に切り替えて、
空気を含ませる様に、手早く掻き回しながら、
中へと注ぎ込んで行った。
超低温で急激に冷やされて行く食材は、
直ぐに変化を見せて、サスケの手には、
アッと言う間に、凍り始めた事で、
その密度を増した重さが伝わって来る、
柔らか過ぎず、固過ぎずで調理魔導具のスイッチを切ると、
『魔倉』の中からホカホカのワッフルを取り出して、
皿の上に敷くと、バニラアイスを乗せて包み込んだ。
「お待たせ~!」
「おお、来たか!
俺も含めて、皆、待ち兼ねていたぞ」
「楽しみ~!」
「サスケ君が作るデザートって、美味しいものね」
「早く」
「今日は、何かしら?」
サスケは、皆の前に皿を並べて行くと、
最後に、自分の前に置いてから声を掛けた。
「氷菓ですので、溶けない内にお召し上がり下さい。」
「よし、じゃあ食うか、いただきま~す!」
「「「「「いただきま~す!」」」」」
「「キキ~!」」




