バニラン
「そう言えば、ライさんは、
タナーカの街で上演されている、
『キンターロの大冒険』はご覧になりましたか?」
「あ~アレか、気にはなってたんだが、
まだ見て無いんだよ、サスケ達は見たのか?」
「ええ、中々斬新な解釈でしたが、
面白かったですよ」
「そうなのか、じゃあ次に、
タナーカの街に行く機会があったら、
皆を連れて見に行ってみるかな、
まあ、なんにしても『ロ』が付いてて良かったな」
「ええ、同感です。」
「演劇といえば、
『モモコとタロウのオーガ討伐』は見なかったのか?」
「ええ、主人公が2人ってのは気になりましたが、
俺の予想通りだとすると、こちらは子供向けかな?と思いまして、
今回は見送りました。」
「やっぱ、そう思うだろ?
ところが、ぎっちょんちょん、
これが、中々、壮大なストーリー展開で驚かされるんだよ」
「ホントですか!?」
「ああ、俺も最初は子供向けかと思ったんで、
パサラとポラリちゃんを連れて見に行ったんだけど、
見事なアクションあり、ラブストーリーあり、
サスペンスありで、大人も十分に楽しめる内容だったぜ」
「そうなんですか、
そりゃ、あの演題からは全く想像も付きませんね」
「ああ、機会があったら、
絶対に一度は見て置いた方が良いぜ」
「ええ、そうします。」
「ご馳走様~!」
「ご馳走になりました。」
「美味しかった~!」
「うん」
「「「「「サスケ様、ご馳走様でした。」」」」」
軽食に、飲茶を食べ終えた面々が、
料理の用意をしたサスケに礼を言って来た。
「いえいえ、どう致しまして、
夕食の後に、今度は美味しいデザートを用意しますから、
楽しみにしていて下さいね」
「うわ~楽しみだな~」
「そうね、今から待ち遠しいわね」
「楽しみ」
「サスケ様、もしかしてアレですか?」
「私、今度はチェリー味が食べたいです!」
「あんた、何、贅沢な事言ってんのよ」
「でも、それも美味しそうね」
「確かに」
「おいサスケ、何を作る予定なんだ?」
「あの、調理魔導具は冷やす機能もあるので、
果汁を使ったシャーベットを加えた一品を、
作ろうかと考えています。
ホントは、バニラエッセンスさえ手に入れば、
バニラアイスを使ったデザートを作りたいんですけどね」
「バニラエッセンスの変わりになる物ならあるぞ」
「えっ!?マジですか」
「おお、ウチの国にある『魔の森』に生息している魔獣で、
『バニラン』ていう植物系の魔獣がいるんだが、
そいつは甘い香りを出して、引き寄せた獲物を捕食するんだよ、
そいつから採れる素材に『匂い袋』ってのがあって、
まんまバニラの香りなんだ。」
「その素材って、こちらにありますか!?」
「ああ、ルクア達が、
お菓子を作る時に使ってるから、あると思うぞ」
「是非、譲って下さい!」
「ああ、俺も久し振りに、
バニラアイスが食べてみたいから良いぜ」
「はい、楽しみにして下さい!」
「それにしても、あの調理魔導具は便利だな」
「ええ、中々、重宝していますね、
あれは、まだ試作品みたいなもんですから、
サリエと一緒に完成させたら、1台プレゼントしますよ」
「おお、そりゃ嬉しいな」
「その変わり、サリエの研究開発に使う、
雷魔法が付与された魔石を優遇して下さいよ」
「ああ、ラメール国で魔石が量産されるなら、
その辺は大丈夫だろ、
俺しか付与出来ない所為で、かなりのハードワークに、
なると思うと、今からウンザリだがな」
「前から思っていたんですけど、
雷魔法の魔石の需要は、そんなにあるんですか?」
「ああ、供給の方が、
全然、間に合わないっていうのが現状だな、
その大きな要因の一つとして、
魔石の寿命が短いっていうのが上げられるんだが、
これが中々、改善出来ないんだよな~」
「どのくらい持つんですか?」
「持って1か月だな、せめて3か月ぐらい持ってくれれば、
供給する側としても、大分助かるんだがな」
「そうなんですか」
「失礼します。突然、お言葉を挟んでしまい申し訳御座いませんが、
今、現在、魔石の長寿命化に向けて、
どの様な研究をされて、いらっしゃるんですか?」
サスケ達の会話を聞いていて、
興味を刺激されたのか、サリエが質問して来た。
「ああ、構わないぜ、
最初は、魔石の出力を下げれば長持ちするかと考えたんだが、
これは逆に早く魔石がダメになったんだよ、
それで、次に電池みたいに電気の流れを作れば良いかと考えたんだが、
魔石の中にプラスとマイナスを設けると、
絶縁がされていない所為で、魔石が砕けちゃうんだよ」
ライの説明に含まれる電池などの知識は、
サスケが原理を説明してフォローした。
「なる程、そうなのですか・・・
私に、一つ提案が御座いますので聞いて頂けますか?」