旅の思い出
「そう言えば、サスケ達は、
あちこちの国を順繰りに周って来たんだろ?
何か面白い事があったか?」
飲茶を楽しみながら、
ライが、サスケに尋ねて来た。
「ええ、色々ありましたが、
一番ライさんに喜ばれそうな話と言えば、
ラメール国の魔石ですかね」
「ほう、何があったんだ?」
「ラメール国に、パサラちゃんが封印されていた
山があるじゃないですか」
「ああ、あの草木が全然生えていないハゲ山な」
「ええ、あの山なんですけど、
表面が魔石で覆われていたんですよ」
「え?それは、どういう意味なんだ?」
「そのままの意味ですよ、
山の表面が全て魔石で覆われていたから、
草木も生えていなかったんですよ」
「マジか・・・」
「ええ、フローラさんの、
お兄さんである、エクリプスさんにもご確認頂いたから、
間違いありませんよ」
「しかし、俺がパサラの解放に行った時は、
全然、分からなかったんだがな」
「ええ、俺もミルクに言われるまでは、
全然、気付きませんでした。
パサラちゃんの存在を隠す為の、
強力な認識阻害の結界が働いていたのが、
原因だったのですが、
ミルクは魔力の流れが見えるので、気付いたんですよ」
「なる程な」
「だから、今後は、エクリプスさんに頼めば、
雷魔法が付与出来る魔石が、大量に入手出来ますよ」
「おおっ!そうだな、現状で、
魔獣の討伐による素材待ちになってる状態だから、
そりゃ、とても助かるな、
おいフローラ、お義兄さんに頼んでくれるか?」
「分かりましたわ」
フローラは、さっそく魔導通信機を使って、
兄に連絡を取る為に、席を離れて行った。
その姿を見送り終えると、
ライは、サスケに話の続きを促す。
「ラメール国の次は、どっちに行ったんだ?」
「はい、フェルナリア皇国を通過した際に、
ヒナギク達に出会いまして、
それから、ザドス王国を訪れました。」
「ほう、あそこに行ったのか、
模擬戦を挑まれて大変じゃ無かったか?」
「ええ、もう行く先々で挑まれましたね、
途中からは面倒になったんで、
英雄では無くて、ただの冒険者と名乗っていました。」
「ハハハ、あの国は相変わらずな様だな、
親父殿(ザドス王)にも挑まれたか?」
「ええ、丁重にお断りさせて頂きました。」
「そうか、俺の場合は、
親父殿に勝たないと、エルザを嫁にくれないって事だったから、
電撃パンチでノックアウトしたがな」
「あのパンチって、人に使っても大丈夫なんですか?」
サスケは、前にライが、
電撃パンチで魔獣を黒コゲにしていた姿を思い出して、
冷や汗を流しながら聞いてみた。
「ああ、俺も、親父殿が余りにも強かったんで、
つい殴っちまってからアッと思ったんだが、
プスプスと体から煙を出しながら、
『ナイスパンチ!』って言って来た時には、
獣人族のタフさに、唖然としたぜ」
「そりゃ凄いですね・・・」
「ああ、傭兵国と呼ばれるザドスを、
力で纏め上げているだけの事はあるな」
「そうですね、
ああ、そう言えば傭兵で思い出したんですけど・・・」
サスケは、マッスル王国へ向かう途中で出会った
傭兵集団『夕闇に死す』の事を話した。
「へえ、そんな事があったのか、
確かに、前に親父殿と話した時も、
傭兵の需要が、急激に減ってるって話してたな、
俺の国は急激に国民が増えたんで、治安の維持が心配だったから、
親父殿に依頼して1000人程を寄越して貰ったんだが、
焼け石に水みたいな、もんだろうな」
「そうなんですか、
そうなると、何らかの対応を考えねばならないでしょうね」
「ああ、国としての、
思い切った方針の転換が迫られるだろうな」
「そうですね」
「ザドス王国からは、
そのまま、アルビナ王国へ行ったのか?」
「ええ、ライさんのアドバイス通りに、
アルビナ王様に、日本の着物をプレゼントしたら、
大変、喜ばれていました。」
「そうか、あの人のビョーキも健在な様だな、
王妃様(義母さん)や国民にバレて、
愛想を尽かされなきゃ良いがな・・・」
「ハハハ、そうですね」
「そうだ、前に話したタナーカの街には行ったのか?」
「ええ、勿論行って来ましたよ、
ご紹介頂いたピッカリーさんにも、お会いして来まして、
鍛冶師の大先輩として、貴重な勉強をさせて頂きました。」
「そうか、そりゃ良かったな、
スーパー銭湯には入ったか?」
「ええ、皆で楽しませて頂きました。」
「そうか、お前が造った温泉程じゃ無いけど、
あれは、あれで良いもんだろ?」
「ええ、何種類もの風呂があって楽しめるから、
子供には、あちらの方が楽しいでしょうね」
「そうなんだよな、こっちの世界って娯楽が少ないから、
家族で楽しめる場所が造りたかったんだよ」
「ライさんの試みは成功だったんじゃないですかね」
「そうか?だったら嬉しいな」




