コエド訪問
新たに、サスケの配下となった
傭兵集団『夕闇に死す』の面々に、
別れを告げたサスケ一行は、
その日の夕方になって、
目的地であるマッスル王国へと到着した。
「こんちは~、マッスル王国へ入国したいのですが、
手続きを、お願い出来ますか?」
サスケは、新興国である、
マッスル王国に置いて唯一の都市である、
王都コエドの入り口で、
警備に当たっていた兵士に声を掛けた。
「ああ、あなたは英雄のサスケ様では御座いませんか、
マッスル王国へ、ようこそ、いらっしゃいました。」
幸いにも、前回この国へとサスケが訪れた際に、
顔を合わせた事がある兵士の様であった。
「ありがとう御座います。
久し振りに、こちらの国を訪れましたが、
大分、住宅や店舗が増えて、
道を行き交う人の数も、かなり多くなっていますね」
「はい、お蔭様を持ちまして、
我が国は、隣接した『魔の森』に住む貴重な魔獣の素材や、
魔獣から回収した魔石に、
ライ国王陛下が雷魔法を付与した物を、他国へと輸出して、
財政的に、とても潤っていますので、
それに、肖ろうとする人々が、どんどんと移り住んできまして、
つい先日、国民の人口が10万人を突破しました。」
「それは、凄いですね、
この国が出来てからの期間を考えたら、
他に類を見ない程の、発展ペースですよね」
「はい、私も、そう聞き及んで居ります。」
「では、このまま入国しても宜しいでしょうか?」
「はい、どうぞお進み下さい。
サスケ様なら、手続き無しでお通ししても宜しいと、
陛下から伺って居りますので大丈夫です。
今、案内の者をお呼び致しますので、
少々、お待ち頂けますか?」
「ああ、どうぞお構い無く、
ライさんの館の場所なら分かりますから、
態々、お手数を煩わせるまでも、ありませんよ」
「そうで御座いますか、分かりました。
では、そのままお進み下さいませ」
サスケ一行は、警備兵の許可を貰うと、
前にも、訪れた事がある、
ライの館を目指して、馬車を動かし始めた。
マッスル王国の国王であるライは、
その本拠地としての城を築く事は無く、
元々、『魔の森』の中に存在していた
古代遺跡の館を本拠地として利用し続けていた。
古代遺跡とは言っても、
建物には『状態保存』の魔法が付与されているので、
新品同様のまま劣化する事は無く、
未知の結界が施されているので、
ライらの許可が無い者は、出入りする事が出来ないのであった。
「ツバキとユリで、
あそこに見える厩に、馬車を預けて来てくれるか」
ライの館の、入り口へと着いたサスケは、
館の中に連絡を入れる前に、馬と馬車の預け入れを指示した。
「「はい、サスケ様」」
ツバキとユリの2人が、
馬車を動かして、厩へと向かった。
2人が戻って来るのを待ってから、
サスケは、館の入り口に付いている、
インターホンの様な魔導具のスイッチを押した。
『誰?』
魔導具から、声が聞こえて来た。
「ああ、パサラちゃんが出てくれたのか、
サスケだけど、
ライさんに、俺が着いたって伝えて貰えるかな」
『サスケ?誰?』
「おいおい、まさか俺を忘れちゃったのかよ!
ゴーレムのクロを造ってやっただろ」
『冗談。』
どうやら、パサラの冗談であった様だ。
「サスケさん、パサラちゃんに遊ばれていますね」
ミルクが、クスクスと笑いながら言った。
「ホントだよ、クロとシロをプレゼントした時は、
打ち解け合えたかと思ったんだけど、
まだまだ、みたいだな」
「いいえ、十分に打ち解けていると思いますよ、
前に私が、この館に暫く滞在していた時には、
冗談どころか、必要最低限の会話しか、してくれませんでしたから」
「それは、ミルクが王女様だったからじゃないのか?」
「いいえ、同じ王女である、
ルクアさんやエルザさんとは、
軽口ぐらいは叩いていましたから・・・」
「でも、あの2人にも、冗談までは言わないだろ?」
「だからこそ、サスケさんの存在は貴重なんですよ、
パサラちゃんが、冗談を言うなんてライ様以外には、
見た事がありませんでしたから、
パサラちゃんの中での、サスケさんの評価は、
かなり高いという事だと思いますよ」
「そうかな~、とても、
そうとは思えない扱いなんだけどな~」
『よう、サスケ!無事に着いたそうだな、
今、結界を解除したから、中に入って来いよ』
その時、ライの声が魔導具から聞こえて来た。
「はい、分かりました。
今から伺います。」
サスケは、ライに返事を返すと、
皆を促して、館へと向けて移動し始めた。