スカウト
「それで、団長さんとやら、
今まで、何人の旅人から寄付金を集めたんだ?」
「お主らが最初であるな、
何故かの理由は与り知らぬが、
この街道を通る者が現われないのだ」
(そりゃ、アルビナ王国とマッスル王国なら、
転移魔導具のホットラインがあるものな、
態々、時間を掛けて街道を移動しなくても、
アルビナ王と、ライさんとで直接に雷魔石の取引をしてるよな)
「あんたらの動きを見ていれば分かるが、
中々に優秀な傭兵団の様だな、
それが、こんな場所で燻っているって事は、
やはり、平和になった所為で、
仕事に、あぶれた口か?」
「うむ、その通りである、
他の傭兵団の中には、
冒険者へと鞍替えした連中も居る様であるが、
うちの連中は戦闘にしか能が無いヤツらばかりであるからな、
今更、冒険者などには成れまいて」
「そうなのか・・・
そういう事ならば、一つ提案があるのだが、
どうだ団長、俺に雇われてみる気は無いか?」
「ぐわっはっはっはっ!
お主の様な、若造がワシらを雇うじゃと?
確かに、ワシらの力量を見抜くあたりは、
ただの若造では無さそうじゃが、
うちの連中は気性が荒いもんばかりじゃからのう、
力で押さえ付けられるぐらいで無くては、
上手く使いこなす事は不可能だぞ」
「俺が、そいつらを黙らせるだけの、
力を示せば良いのか?」
「その様な事が、出来る訳が無かろう!
こやつらを一人で黙らせるなどという真似は、
それこそ、勇者や英雄と呼ばれる極一部の者のみであろうて」
「まあ、誰も一人とは言ってないんだがな、
一人でも何とかなりそうな気もするけど、
ここは、ヒナギク達に任せるとするか、
みんな!団長を残して眠らせろ!!」
サスケが大声で、ヒナギクらに合図を送った。
「うん?お主何を言って・・・ぬおっ!」
傭兵団『夕闇に死す』の面々が、
団長を残して、バタバタと突然に倒れ込んだのだ。
「おおっ、百発百中かよ、
みんな、小さい頃から鍛えられていただけあって、
流石に優秀な様だな」
「お主、ワシの部下達に何をしたのじゃ!」
「ああ、殺した訳じゃ無いから安心してくれ、
配下の者に命じて、眠り薬で眠らせただけだよ」
「配下の者じゃと?
人の気配など、微塵も感じなかったぞ?」
「まあな、俺も含めて、
俺の配下の者達は、そんじょそこらのシーフより、
隠密性が高いからな」
「お主も含めてじゃと?
これ程のレベルの配下らを抱えている事といい、
お主、一体何者なんじゃ?」
「俺か?
俺の名前は、サスケ・モンキーフライ・コウガ公爵ってんだ
さっき、団長さんが言っていた英雄ってヤツだな」
サスケは、団長に向けて英雄認定証を提示しながら言った。
「こっ、公爵閣下!?
しかも、お主が、あの英雄サスケじゃと!?」
「ああ、何か、そういう事になったんだよ」
「こっ、これは公爵様に対して、
大変な失礼を申し上げました!
此度の行いは、
全部、ワシの不徳が致すところでありますので、
何卒、部下の者達には、
お情けを掛けて頂けませぬか?」
「そんなに、鯱張る事は無いですよ、
今でこそ公爵なんて過分な地位を与えられていますが、
元は、ただの冒険者ですからね」
「しかし、ワシらも皆、
英雄殿が成された行いには、聞き及んでおりますぞ、
貴殿が成された事は、英雄と呼ばれるに相応しい事です。」
「まあ、あれも、
みんなが協力してくれたから出来た事なんだけどな」
「そう、ご謙遜を申されるな、
周囲の協力を得られるのも、
ご自身の日頃の行いが、あってこその事とワシは思いますぞ」
「盗賊紛いの事をしていた
団長さんに、そう言われてもな~」
「うっっ、それを言うてくれるな・・・
一時の気の迷いからの行いにて」
「ハハハ、まあ未遂で良かったですよ、
流石に俺も、犯罪者を雇い入れるって訳には、
行かなかったでしょうから」
「えっ!?サスケ公爵様は、
本気でワシらを雇い入れようと申されて居られたのですか?」
「ええ、俺の領地は経済規模に対しての、
防衛能力が徹底的に不足していますから、
直属の部下達に、かなりの負担を掛けているんですよ、
団長さん達が、領の防衛に加わってくれれば、
大分、負担が軽減出来ると思うんですが、
どうでしょう・・・俺に雇われてくれませんか?」
「ホントに、ワシらの様な者達で宜しいのですか?」
「ええ、俺は自分の、
人を見る目には自信がありますんで」
「分かり申した!
ワシら傭兵団『夕闇に死す』一同、
サスケ公爵様の、お世話になりますぞ!」
「そうですか、良かったです。」
サスケは、団長に、
眠り薬で眠っている、団員らを起こす為の治療薬の他、
領地を管理しているダンディへの紹介状や、
十分な金額の路銀を手渡すと、
一足先に、コウガ領へと向かって貰った。