死す団
「タンポポ、馬車を停めてくれるか」
サスケは、御者台に着いて馬車を走らせている、
タンポポに声を掛けた。
「はい、分かりました。」
タンポポが返事を返して、馬車を停止させる
「どうされたのでしょうか?」
タンポポと一緒に御者台に座っていた為、
事情が分からないユリが尋ねて来た。
「実はな・・・」
サスケは、チビリンが察知した
盗賊らしき気配の事を2人に説明した。
「そうなんですか、
それで、盗賊でしたら如何に対応致しますか?」
「そうだな・・・
取り敢えずは、相手の出方を見てみるから、
ヒナギク達4名は、気配を殺しながらヤツらの背後に移動して、
俺の合図が有り次第、クナイを使って動きを封じてくれるか」
「では、急所を外して投擲すれば宜しいのですね」
「ああ、盗賊だったとしても、
捌きの方は官憲に任せる様にしよう
一応、安全の確保の為に、クナイには眠り薬を塗っといてくれ」
「畏まりました。」
ヒナギクの返事を合図に、4人はシュッと残像を残して消え去った。
「彼女達は一体・・・
サスケ様、彼女達だけで大丈夫なのでしょうか?」
元々、身軽な少女達だとは思っていたものの、
目にも留まらぬ速度で消え去ったのを見て唖然としつつ、
サリエが質問して来た。
「ああ、ヒナギク達が生まれ育った村は、
物心が付いた頃から、
本職のシーフみたいな訓練を受けているから、
その辺の盗賊ぐらいじゃ相手にならないんだよ」
「へ~、そうなのですか、
それは凄いですね」
サリエ自身も、ハイエルフの隠れ里で暮らしていたので、
その様な村の存在には、違和感を抱かない様であった。
「俺は、これから御者台に移動して、
馬車を、このまま走らせるから、
ミルクとサリエは馬車の中で隠れていてくれ、
チビリンは2人の護衛を頼むな」
「「分かりました。」」
「キキッ!」
御者台へと移動したサスケは、
何食わぬ様子で馬車を走らせ始める、
盗賊らしき気配は、
マッスル王国へと続く1本道の街道の両脇で、
草木が繁っている場所に、身を潜めている様子であった。
少し高い場所にも気配を感じる事から、
弓矢を使う者もいる様であった。
「ふ~ん、気配の殺し方も、そこそこの様だし、
割と全体の統率も取れている様だな、
こりゃ、根っからの盗賊って訳でも、
無さそうだな・・・」
サスケが、そのまま気配が感じられる付近まで、
馬車を走らせて近づいて行くと、
道の両脇の草陰から、
鎧で身を固めた男達が10名程飛び出して来て、
道を塞いだ。
サスケが予想した通りに、
男達は、盗賊にありがちの荒んだ雰囲気も無く、
武器や鎧も良く手入れがしてあるのが見て取れた。
「そこで道を塞がれたら、先に進めんのだが」
サスケは、取り敢えず、
相手の反応を見る為に、そう切り出してみた。
「ほう、これだけの人数に囲まれていると言うのに、
随分と落ち着いた様子であるな」
男達の中央に居る、他の者と比べると、
少し高そうな鎧を身に付けた男が発言した。
「ああ、お前達を見た所、
ただの盗賊って訳でも無さそうだからな、
いきなり襲ってくる事は無いだろうと思ってな」
「いかにも!
我々を盗賊風情と一緒にして貰いたくは無いな、
誇り高き傭兵集団『夕闇に死す団』とは、
俺達の事よ!」
「傭兵団で、団名に『死す』って入ってるのはアリなの?」
「うむ、団長であるワシの独断で決めたのだが、
団員からの評判が、すこぶる悪かったので、
団名を変更しようとしたのだが、
変更手続き料が、法外に高かったので変えられなかったのだ!」
(やばい・・・
こいつら何か面白そうだぞ・・・)
「それで、その『死す団』の人達が、
俺に何の用事があるって言うんだ?」
「我が団の名を『死す団』などと訳すな!
それから、そなたを呼び止めた理由であるが、
我が団の、運営資金を寄付して貰おうかと思ってな」
「へ~、寄付って言うなら、
断る事も出来るって事なのかな?」
「寄付を断った場合は、
ここを通す訳には行かんぞ、
この街道沿いに魔獣が出没せんのは、
我らが毎日、狩っているからに他ならんからな」
「それは、ただ単に、
お前らの、食い扶持を稼ぐ為にやってるだけの事だろ?」
「そうとも言う」
「何で、こんな場所で寄付を募っているんだ?」
「この街道は、マッスル王国への一本道だからな、
この道を張っていれば、
雷魔法が付与された魔石を買い付ける為に、
たんまりと現金を持った商人が通ると睨んだまでの事よ!」
「ほう、何も考えていない様で、
なかなか考えているんだな」
「どんなもんじゃ!えっへん!」
「いや、全然褒めていないから・・・」