忘れた頃に、やって来る
「前に作ったのは、
普通のチョコレート・ケーキってヤツだったんだが、
このケーキは、見た目は似ているけど別もんなんだよ、
ケーキにフォークを入れて見れば分かるぞ、ミルク」
「そうなのですか?
では、失礼して・・・わあっ!
ケーキの中からトロトロのチョコが出て来ましたわ!」
ミルクが、ケーキにフォークで切れ目を入れた瞬間、
中から熱々トロトロのチョコクリームが、
流れ出して来たのであった。
「このケーキは、フォンダン・ショコラって言うんだけど、
みんなも最初は、そのまま食べてみて、
次に、上に乗せてあるのと一緒に食べてみてくれるか」
「「「「「「いただきま~す!」」」」」」
「キキ~!」
サスケの言葉を聞くと、
先程から、食べてみたくてウズウズした様子だった
ヒナギク達やサリエやチビリンもフォークを手に取って、
食べ始めてみる
「おおっ!中のチョコクリームが熱々で、
ケーキに浸けて食べると美味しいですね」
「普通のチョコケーキよりも、チョコの香りが鮮烈ですね」
「この上に乗ってるのが冷たいから、
一緒に食べると不思議な味わいが生まれます。」
「そうね、温かいケーキとの温度差が楽しいわね」
「この香りはアップルですか?
チョコとの相性が、とても良いですね」
「ああ、アップルのジュースを、
サリエが造った魔導具を改造して造った
調理魔導具でシャーベットにしたんだよ」
「この冷たいのはシャーベットっていうんですか?」
「ああ、果物のジュースなんかを、
固くならない様に、掻き雑ぜて空気を混ぜながら凍らせると、
柔らかい食感に仕上がるんだよ」
「ふんわりと舌の上で溶けて行く食感が、
スッキリとして美味しいですね」
「今度は、アイスクリームでも作ってやるからな」
「その、アイスクリームっていうのは、
どんなデザートなんですか?サスケ様」
「牛乳や卵を使って作る氷菓なんだが、
そうだな~、もし例えるとすれば、
下に乗せた瞬間にスッと溶けて消える、
冷たいケーキってとこかな」
「うわ~!食べて見たいです!」
「ホント!今から楽しみね」
食後のデザートを楽しんで、
コヒ茶を飲みながらの食休みを終えたサスケ一行は、
再び、マッスル王国へ向けての馬車旅を開始した。
午後からは、馬車の御者台にはタンポポとユリが座り、
馬車の屋根の上でチビリンが周囲の警戒に当たっていた。
「サスケ様、あのシャーベットという氷菓は、
調理魔導具で作られていた様でしたが、
暖かいケーキの方は、どうされたのでしょうか?」
馬車の中に乗り込んだサスケに対して、
サリエが質問して来た。
「ああ、あれは、ちょっとズルをさせて貰ったんだよ、
本来ならば、フォンダン・ショコラも出来たてを出せれば良いんだけど、
それ程の腕前も機材も無いからな、
プロの菓子職人に作って貰った出来たてを、
俺の『魔倉』に入れてあったんだ」
「サスケ様の『魔倉』と仰るスキルは、
魔法のアイテムボックスとは別物なんですね、
普通のアイテムボックスは、少しずつ時間が経過するものらしいので、
中に入れたケーキも冷める筈ですから」
「おお、サリエは中々鋭いな、
確かに俺の『魔倉』は、中の時間が経過しないし、
今まで、満杯になった事も無いな」
「サスケ様、私達が頂いた魔導ポーチも、
朝入れたお弁当が、昼まで暖かいままですよ?」
ヒナギクが、そう発言した。
「ああ、その魔導ポーチは、
中の時間の流れを出来るだけ遅くしてあるからな、
でも、夕方になれば結構冷めてると思うぞ」
「そうなのですか」
「その魔導具をサスケ様が造られたのですか!?」
「ああ、俺が空間魔法を付与して、
造ったポーチなんだよ」
「私にも造る事が出来るでしょうか?」
「ああ、元々サリエ達、
ハイエルフは魔法の扱いに特化した種族だから、
少し勉強すれば、このくらいの物なら、
直ぐに造れる様になると思うぞ、
それどころか、行く行くは中の時間を止めて置ける、
魔導具を造れる様になるんじゃないかな」
「はい!頑張ります!」
「それは楽しみね」
「サリエさん、頑張ってね」
ミルク達も、2人のやり取りを微笑ましげに見ていた。
「キキキ~!」
その時、突然チビリンが警告する様な鳴き声を上げる
「ええ?マジか・・・
折角の楽しい馬車旅に水を差しやがって、
未だに、そんな事をしている連中が居るんだな」
「サスケさん、チビリンちゃんは何て?」
「この先に、盗賊らしい連中が隠れてるってさ」
「まあ、珍しいですわね、
各国間の緊張が緩和されて、景気が安定してからは、
余り見掛けなくなっていたのですが」
「ああ、誰も好き好んで盗賊なんてやらないからな、
働き口があれば、真っ当な仕事へと就くもんさ、
だが、中には根っからの悪人ってヤツらも居て、
そういうヤツらは、社会に溶け込めないんだな」
「本人達に取っては不幸な事ですわね」
「ああ、だからと言って、
それが、他人の物を奪ったり、
他人を傷つけても良い理由には到底ならんがな」




