旅路の風景
「そろそろ、昼飯にでもするか」
御者台に腰掛けて、馬車を走らせていたサスケが、
馬車の中の皆へと、声を掛けた。
タナーカの街を、朝に出発したサスケ一行は、
マッスル王国へと続く街道を、順調に馬車で進んでいた。
「そうですね、サスケさん」とミルクが、
「分かりました。サスケ様」とヒナギクが、
「やった~!お昼だ~!」とタンポポが、
「今日のメニューは、何にしますか?」とツバキが、
「何か、獲物を狩って来た方が宜しいでしょうか?」とユリが、
「お手伝い致します。」とサリエが、
「キキ~!」とチビリンが返事を返した。
「今日は蒸し物にするぞ、
それから、タナーカの街で仕入れた食材が沢山あるから、
狩りは必要無いな」
サスケは、街道沿いで馬車が停められそうな場所を見付けると、
馬車を寄せて停車させた。
「ヒナギク達は、馬の汗を拭いてから、
餌と水をあげてくれるか」
「「「「はい、分かりました。」」」」
「チビリンは、周囲の警戒をしててくれ」
「キキッ!」
「ミルクとサリエは、俺の調理を手伝ってくれ」
「はい」
「サスケ様が昼食を作られるんですか?」
「おう、料理は俺の趣味の一つなんだよ」
「サスケ様の作る、ご飯は美味しいんだよ~」
「そうなんですかタンポポさん、それは楽しみです。」
「おっ、サリエは、
もう、みんなの名前を覚えたのか?」
「はい、実家が、お客様商売をして居りましたので、
人の顔と名前を覚えるのが得意なんですよ」
「そりゃ羨ましい限りだな、
俺は、人の顔や名前を覚えるのが苦手だから、
貴族の集まりがある時なんかは、
ミルクか、代官のダンディが居ないと、
どうにもならんからな」
「それは、大変ですね」
「ああ、貴族としては致命的だな、
だから、サリエが人認識機能を持った魔導具を造ってくれるのを、
密かに期待してるんだよ」
「人認識機能ですか?」
「ああ、例えばモノクル(単眼鏡)型の魔導具を付けといて、
それで、人の顔を見ると、
その人の名前や身分や肩書なんかが表示されるとか・・・」
「なる程、それは便利そうですね、
ところで、何でメガネではなくて、
モノクルなんですか?」
「だって、その方が材料の節約になるし、
モノクルの方が、貴族っぽく見える気がしないか?」
「あ~確かに、そんな感じはしますね」
「だろだろ」
そこで、サスケらは二手に分かれて、
ヒナギクらは、馬を馬車から外して世話をしに、
サスケは、ミルクとサリエに手伝って貰い昼食の用意を始めた。
「ミルクとサリエは、この野菜を水洗いしてから、
一口サイズにカットしてくれるか」
サスケは『魔倉』から、野菜や水、
タライや調理器具などを取り出しながら言う
「はい」
「サスケ様は、アイテムボックスを持たれていらっしゃるんですか?」
「ああ、厳密には違うんだけど、
似たような機能を持った魔法だと考えて良いな」
「そうなんですか、
今度、もし機会があったら、
もう少し詳しく教えて頂けますか」
「おう、魔導具造りに、
何か、役立つかも知れないから、
教えてやるよ」
「ありがとう御座います。」
ミルクとサリエが、野菜を下拵えしている内に、
サスケは、大深鍋の様な形をした魔導具を使って、
下味を付けた肉や魚、肉マン、餡マンなどを蒸かしていく、
暫くすると、下拵えをしていた2人が、
カット野菜をザルに乗せて、やって来た。
「サスケさん、お野菜の準備が出来ましたよ」
「おうサンキュー、そこに置いてくれや、
野菜は、それ程蒸かさない方が栄養価が高い物が多いから、
ヒナギク達が来てから蒸かすようにしよう」
「そうですか、分かりました。」
「あの~、サスケ様、
その調理に使っている魔導具って、もしかして・・・」
「うん?
ああ、そうだよ、
サリエが造った魔導温冷庫を改造して造ったんだよ、
悪かったな、勝手に改造なんかして」
「いえ、どの道、
あのままでは使い勝手が悪かったですから、
仕方がありません
私が、サスケ様に、お伺いしたいのは、
どの様な改造をしたのかです。」
「ああ、そういう事か、
じゃあ説明するけど、
あの魔導温冷庫の問題は、温度設定が極端過ぎて、
中に入れた物が、焦げ付いたり、
凍り付いたりする事だったろ?
だから、直接物を熱するんじゃなくて、
水を熱する様に改造したんだよ」
「ああ、蒸気を発生させて、
その熱で調理する様にしたんですね」
「ああ、だが元々の機能は温めるだけじゃ無かっただろ」
「ええ、冷やす能力も持たせてありました。」
「だから、そっちの能力も利用出来る様にしたんだよ、
まずは、蒸し器として温める方の機能を使ったから、
皆での食事中に、ある程度、
魔導具本体が冷めたら、今度は冷やす方の使い方を見せてやるよ」
「はい、それは楽しみです。」