記念石碑
翌日となり、
サスケは、ミルクを伴って、
再び『マジカルショップ マユツバ』を訪れていた。
「こんにちは~」
「ごめん下さいませ」
「サスケ様、ミルク様いらっしゃいませ」
「お待ち申し上げて居りました。」
「サスケ様、ミルク様、お初にお目に掛かります。
サリエの母のマギーと申します。
宜しくお願い申し上げます。」
店では、店長で、
サリエの父親であるマリックと、
その妻のマギー、
そして、サリエ本人が2人を出迎えた。
サリエの母であるマギーとは、
初めての顔合わせであったが、
種族の異なる迷い児を、保護して育てるだけあって、
サスケ達の予想通りに、
優しそうな雰囲気を持った女性であった。
「こちらこそ、宜しくお願いします。
旅程の都合もありまして、
突然のご訪問となりまして、
申し訳ありませんでした。」
「宜しくお願いしますね、マギーさん」
「いえいえ、ウチの娘の為に、
態々、ご足労頂きまして、
こちらこそ、申し訳御座いませんでした。」
「お席の用意をして御座いますので、
どうぞ、こちらへとお出で下さいませ」
「父さん、店の入り口に『準備中』のフダを付けてくるわね」
「おお、頼んだぞ」
サリエが、店の入り口へと向かう間に、
サスケとミルクは、
店の奥にある住居部分の居間へと通された。
「お店を閉めさせてしまって、
すいませんね、マリックさん」
「いえ、ウチの場合は、
冒険者の皆さんがクエストを終えて帰られる、
午後の遅い時間から込み始めるぐらいなので、
午前中は、割と暇なんですよ」
そんな会話を交わしている内に、
サリエも戻って来たので、
話し合いを始める事とする
「では、早速なんですが、
昨夜、サリエさんが、
俺の事を訪ねて来られまして、
魔導具に関するお話をさせて頂いた訳なんですが、
その際にサリエさんより、
ウチに弟子入りしたいとの申し出を頂きまして、
ウチとしましては、特別問題ありませんので、
ご両親が宜しければ、
サリエさんをお預かりしようかと思い、
伺った次第なんですよ」
「ええ、サリエの方から、
少し話は聞いては居たのですが、
サリエ、ウチを継ごうとしてくれるのは嬉しいんだが、
本当に、魔導具職人に成りたいのか?」
「サリエちゃん、
無理にウチの店を継がなくても良いのよ、
私達は、貴女が本当にやりたい事をしてくれれば、
それで良いの」
「父さん、母さん、
私は、嫌々でやってる訳では無いのよ、
どうしても一人前の魔導具職人に成りたいの、
どうか、サスケ様の元での修行を、
お許し下さい!」
「お前が、本気で魔導具職人を、
目指したいというなら、それで良いが、
サスケ様だって、お忙しい身で在らせられるだろ?
一人前と成るまでには、時間が掛かるんじゃないのか?」
「ええ、確かに俺は、
冒険者としての仕事や、貴族としての職務がありますから、
家を空ける事も、度々ありますが、
そういう時は、俺の師匠にお願いして行くから、
大丈夫ですよ」
「サスケ様の、師匠の方ですか?」
「ええ、マリックさんと奥さんを、
ご安心させる為にも申し上げますが、
これから、俺が話す事は内密でお願いしますね、
先程、お話しした師匠は、
俺の、魔法と錬金術の師匠なんですが、
魔導具に関しても、深い造詣を持って居りまして、
名前を、ヴィンセント・オナルダスと申します。
まあ、世間では字名の『大賢者』の方が、
知られているそうですが・・・」
「「『大賢者』様!?」」
「父さん、母さん、
『大賢者』様って、そんなに有名な方なの?」
ハイエルフの里で生まれ育ったサリエには、
ピンと来ない様だ。
「ええ、人族の国では、
魔法に関連する勉強や仕事をする者で、
知らない者が居ない程に、有名なお方なのよ」
「うむ、『大賢者』様が申された
『何でもは知らんぞ、知ってる事だけじゃ、
まあ、知らん事は無いんじゃがな』のセリフは、
あちこちの魔法学校に石碑として残っているぞ」
(おお!思わぬところで、ヴィン爺ィをイジるネタが、
提供されたぞ)
「へ~、そんなに有名な人なんだ」
「サスケ様の、師匠の方が『大賢者』様と仰るのは、
本当なんですか?」
「ええ、本当ですよ」
「皇国やアルビナ王国でも、確認して居りますので、
間違い御座いませんわ」
「そうですか・・・
まさか、私の娘が『大賢者』様の教えを受けられるなんて」
「ホント、夢の様ですわね」
「という訳なんで、
俺が留守の間でも、サリエさんはバッチリ勉強出来るので、
ご安心下さい」
「分かりました。
サスケ様、娘の事を宜しくお願いします。」
「宜しくお願い申し上げます。」
「ありがとう!父さん、母さん」
「ええ、娘さんの事は、
俺に、お任せ下さい」
「大事にお預かりする事を、
お約束致しますわ」