継承
「それで、サリエさんは、
どんな、ご用でいらしたんですか?」
サスケは、サリエに尋ねてみた。
「はい、それなのですが、
私は、ここまで育てて貰った両親に、
少しでも恩を返せたらと思い、
父の後を継いで、魔導具職人を志したのですが、
自分が思う様な物が造れずに、
その殆どが売れ残る有様でした。
ところが今日、父から、
私が造った魔導具が、全て売れたと聞きまして、
お買い上げ頂いたサスケ様の事を、
父から聞き出して伺ったんです。
自分で言うのも、何ですが、
私が造った魔導具は使い勝手が悪いので、
サスケ様が、どうして、
お買い上げ下さったのかと思いまして・・・」
「なる程、そういう事だったんですか、
では、何故俺が、
サリエさんの造られた魔導具を買ったのかを、
ご説明しましょう
それは・・・」
サスケは、サリエに、
買い上げた魔導具の使用方法を説明した。
「私の造った魔導具に、そんな使い方があったなんて・・・」
「サリエさんの魔導具は、
能力的には十分なんだから、
後は、その生かし方を上手く考えれば、
大ヒットすると思いますよ」
「能力の、生かし方ですか・・・」
サリエは、何かを考え込んでいる様子であったが、
決心をした様に、キッとサスケに目を向けると、
「サスケ様、お願いがあるのですが、
私を、サスケ様の元で、
修業させて頂けませんでしょうか?」と告げた。
「ウチで修行ですか?
そりゃ、優秀な職人が増えるのは、
こちらとしても大歓迎なのですが、
俺は、冒険者活動や公務などで、
城を空けている事が結構あるしな・・・」
「サスケさんが、お出かけの時は、
ヴィン爺ィ様に、見て頂けば、
宜しいのではないでしょうか?」
ミルクが意見して来た。
「そうか、ヴィン爺ィに頼べば良いかな」
「ヴィン爺ィ様と仰る方は・・・?」
「ああ、ヴィン爺ィは、
俺の、魔法と錬金術の師匠なんだけど、
魔導具に関しても造形が深いんだよ」
「サスケ様の、お師匠様ですか」
「ああ、まだまだ魔導具に関する知識なんかは、
到底、ヴィン爺ィには敵わないな」
「サスケ様を超えられる知識ですか!?」
「俺なんて、ヴィン爺ィに比べたら、
まだまだ、だよ」
「それ程の、お方が居られるなんて・・・」
「サリエさん、ヴィン爺ィ様の、
お名前は訳あってお教え出来ないのですが、
世界的にも有名な知識人なのよ」
ミルクが、サリエの不安を解消する様に告げた。
「それ程に、ご有名な方なんですか!?」
「ええ、魔法学校の教科書でも、
度々、その名が上がる程ですわ」
「それは、凄いですね、
サスケ様、改めてお願い申し上げます。
私を、サスケ様とヴィン爺ィ様の元で、
修行させて頂けませんでしょうか?」
「ウチとしては別に良いんだけど、
サリエさんの、お宅の方は大丈夫なの?」
「はい、父からは元々、
ウチの店を継ぐとしても、
暫くは他で修業を積む様にと、
申し付かって居ります。」
「へ~、確りとした
教育方針なんだな」
サスケも、家業を継ぐ場合は、
他家の水を飲んだ方が良い派なので、
サリエの父マリックの考えに共感を覚えた。
「良し、分かった!
サリエさんの面倒は、ウチで見る事にするよ、
明日、娘さんをお預かりする、
ご挨拶に伺うからって、
マリックさんに言っといてくれるかな」
「ありがとう御座います!サスケ様
父には、ちゃんと伝えてお待ちしてます。」
サスケは、一応の護衛として、
サリエに、チビリンを付けて送り返した。
サリエを送り返して、
自分らの部屋へと戻った後に、
ミルクが、サスケへ話し掛けた。
「サスケさん、良かったですわね、
スカウトしようと考えていた
サリエさんが、ご自分から訪ねて来て下さって。」
「ああ、このまま埋もれさせて置くには、
惜しい才能だからな」
「でも、一人前の魔導具職人と成ったら、
この街へと帰ってしまうのでは、ありませんの?」
「まあ、サリエさんの成長具合にも依るけど、
良い職人に成ったら、好条件を提示して、
ご両親とお店共々、ウチの領に引っ越して貰おうかな、
まあ、それで駄目だったとしても、
良い腕の魔導具職人が、この世界に一人増えるんだから、
良いんじゃないか?」
「フフフッ、サスケさん、
らしいですわね」
「そうか?
人にものを教える人なんて、
大概、そんなもんじゃないのか?」
「確かに、中には、
そういう方もいらっしゃいますけど、
分け与える知識に対する、
対価を求められる方のほうが多いと思いますよ」
「普通は、そんなもんなのか?
自分が持ってるものを、
後世へと引き継いでくれると考えれば、
対価は必要無いと思うんだがな」
「人に教えを説く方々が、
みんな、サスケさんの様な考えを持っていれば、
この世界に、もっと知識や技術が広がるんですけどね」
「まあ、優れた技術を、
無闇に広げるというのも考え物だがな・・・
要は、それを伝えるべき相手の見極めという事かな」
「そうですわね」