資金倍増計画
冒険者ギルドに行って家の代金を支払い、
契約書を作って貰ってから鍵を受け取ったサスケは、
さっそく購入をした家に行ってみる事にする。
「やっぱり、人が暫く住んで居なかっただけあって、
所々傷んでいるみたいだな。」
人が住まなくなった家が傷む原因の一つに乾燥が挙げられる、
人が呼吸で出す湿気は馬鹿にならないのだ、
湿気があり過ぎてもいけないのだが、
乾燥し過ぎても木材の歪みや割れに繋がるのだ、
しかし、魔法が使えるサスケには関係無い。
魔力を家全体を覆い尽くす程に広げると、
「よし、『再生』」と唱えた。
「何と言う事でしょう!?
築数十年を数えた家が、新築の様に蘇ったではありませんか!」
サスケはリフォーム番組のナレーションの様な事を言いながら、
綺麗になった家の中を見て周った。
部屋数は大小合わせて10部屋あり、
厨房、食堂、居間、男女浴室は各10名が使える広さが確保されていて、
各部屋には魔導ランプが付いていた。
食堂や居間にはテーブルやイス、ソファなども完備されており、
また錬金術師の家らしく、
厨房や浴室などの水廻りは、火力や水の魔導具が備え付けられていた。
トイレは魔導具で水洗ではあったのだが、
サスケは、予てより和式タイプの便器に不満があったので、
暖房便座と洗浄機能を備えた洋式便器を造って置いた。
そして、住居購入の切っ掛けとなった作業場は、
弟子を抱えていただけあって、
とても広く、錬金術のスペースと、鍛冶のスペースを十分に確保できた。
「魔力には、まだ余裕があるから、作業場の整備もしちゃうかな。」
サスケは『魔倉』から木材や鉄、石材などを出して、
錬金用の作業台の他、
素材用の保管庫や、抽出用の囲炉裏、
坩堝、金床、大槌などを、
次々と創造した。
「食事はどうするかな?
自分で作っても良いけど、一人分だけ作るのも味気ないよな・・・
まあ、しばらくは『鳥の骨亭』の食堂で食べれば良いか。」
生産職を究めているサスケは調理もできるのだが、
購入した家の広い食堂で一人で食事をする自分の姿を想像すると、
我ながら寂し過ぎると考えて、外食することにした。
「テンプレ的に奴隷たちを購入してメイド隊を作っても良いんだけど、
まだ、資金的に不安があるから、しばらくお預けだな。」
サスケは、奴隷を購入する資金はあるものの、
衣食住を維持して行くには、もう少し蓄えが必要と考えて、
ひとまず購入は先送りにした。
建物の改造などは、ひと段落したので、
次に生活用品の購入をするためにレトリバーの店を訪れた。
「こんにちは~。」
「おう、サスケ、今日は何だ?」
「実は、ここから割と近い所で住居を購入したので、
生活用品を揃えようと思いまして伺いました。」
「へえ~、そりゃまた思い切った買い物をしたもんだな、
どこら辺の家を買ったんだ?」
「錬金術師だったシンディーさんが住んで居た家を譲って頂いたのですが、
ご存じですか?」
「ああ、もちろん知ってるよ、
あの大きくて目立つ家だろ、
あの大きさじゃ、相当高かったんじゃないか?」
「ええ、普通なら高かったんですが、
シンディーさんが、錬金をする購入希望者が現われたら、
格安で売って良いって言い残してくれていたんで、
かなり安く購入できました。」
「そりゃ良かったな。」
「ええ、助かりました。」
「それで、今日は何が必要なんだ?」
「そうですね・・・
寝具、カーテン、絨毯、ソファカバー、
洗面室の足拭きマット、トイレマットぐらいかな。」
「寝具はベットで良いのか?」
「ええ、ベットにカバーを付けて貰って、
羽根布団でお願いします。」
「じゃあ、約束通りにサービスして、
全部で10万ギルで良いぞ。」
「ありがとうございます。」
サスケは購入した品物を『魔倉』へと仕舞って帰宅した。
「よし、取り敢えずは、こんなもんかな・・・」
家に帰ったサスケは、購入した品物を所定の位置に置いて、
今日の作業を終える事にした。
「じゃあ、食事がてら『鳥の骨亭』を引き払う話を、
女将さんにしてくるかな。」
「何だって!?家を買ったって言うのかい。」
「ええ、俺は錬金をやりますから、
物音で、他のお客さんに迷惑を掛けたりするかも知れませんので、
思い切って戸建ての家を購入したんですよ。」
「まさか、ハァハァの為に家を買うとはねぇ・・・」
「だから違いますって!」
「アハハハッ、分かってるよ、
ちょっと、からかってみただけさ。」
「もぅ・・・勘弁して下さいよ」
「それで、引っ越し先では一人暮らしなのかい?」
「ええ、今の所、その予定です。」
「じゃあ、食事には来るんだね。」
「ええ、朝晩の食事と、お昼用のお弁当は今まで通りでお願いします。
もちろん、お弁当の代金は払いますので請求して下さい。」
「分かったよ。」
女将さんに挨拶を済ませたサスケは、食事をしてから自宅へと帰ったのだが、
迎える者が居ない、真っ暗な建物を見上げて、
早く奴隷が買えるぐらいの甲斐性を身に付けようと誓った。
翌日になり、資金倍増計画に取り掛かったサスケは、
効率よく稼ぐには何が良いか考えていた。
「治療薬も、それなりの稼ぎにはなってるんだけど、
売れる数量が限られているからなぁ、
やっぱり、がっぽり稼ぐには、
鍛冶で、良質な金属を使って武器や防具を作るのが一番かな、
山に行って、自分で原材料を採ってくれば丸儲けだからな。」
サスケは鉱物などの抽出を魔法で行えるので、
わざわざ鉱山に行って買い付けなくても材料の確保が出来ると考えた。
「よし、今日は山に行って鍛冶に使う材料を探してみるかな。」