サリエ
「さすがS級冒険者パーティーだな」
「何がですか、サスケさん?」
「この入浴施設の規模だよ、
これ程の種類の風呂を揃えるとなると、
それに使っている魔石の数だって、
ハンパじゃない量になるだろうからな」
「ああ、ライ様達のご協力で出来上がった
施設だそうですものね」
サスケ一行が訪れた
タナーカの街にある入浴施設は、
薬湯や泡風呂が男女別にある他、
水着を着て入る混浴風呂なども用意されており、
家族連れ、友人同士、恋人同士などの客で賑わっていた。
これだけの種類の風呂を用意するには、
相当数の魔石が必要となるのが、
容易に予想が付き、
その殆どが、S級冒険者パーティーのライ達からの、
提供である事は間違い無いだろう
「ライさんが冒険者としてデビューした街だそうだし、
リーナさんの実家で親父さんが暮らしてる街だもんな」
「ええ、ライ様もピッカリーさんには、
お世話になったと仰ってましたわ」
タナーカの街で人気の入浴施設を楽しんだ
サスケ一行は、
宿泊している『馬の骨亭』に帰ってから、
夕食を済ませると、
それぞれの部屋に分かれて休む事とした。
コンコン!
自分達の部屋に戻って寛いでいた
サスケとミルクの部屋のドアがノックされた。
「あら、何かしら?」
ミルクが応対する為にドアへと向かう
「サスケさん、宿の方なんですが、
サスケさんを訪ねて来られた方が、
いらっしゃるそうなんですけど、
如何なさいますか?」
「俺を訪ねてだって?
誰だろうな・・・まあ良いか、
まだ、それ程遅い時間て訳でも無いから、
会ってみりゃ分かるな、
ミルク、下の食堂で会うと伝えてくれるか」
「分かりました。」
宿の人に返事を返した
サスケとミルクは、服装を整えると、
宿の1階にある食堂へと向かった。
「ああ、サスケ様ミルク様、
申し訳ありません、
知り合いが、どうしてもお会いして、
お聞きしたい事があると言うので、
ご迷惑かとは存じましたが、
お取次ぎさせて頂きました。」
宿の看板娘メアリーが謝罪して来た。
「いえ、まだ、それ程遅い時間て訳じゃ無いんで、
構いませんよ、
それで、俺を訪ねて来たって人は、
何処に居るんですか?」
「はい、あちらの奥の席に座ってる子が、
そうです。」
「エルフの女の子?」
メアリーが、手で示す方向を見ると、
10歳ぐらいに見えるエルフの少女が客席に着いていた。
「ああ、ああ見えて、
彼女は20歳を超えているんですよ」
「へ~、エルフの成長は遅いって聞くけど、
本当なんだな」
「サスケ様、彼女は自分が幼く見える事を、
気にしていますので、
本人の前では、それを言わないでおいて頂けますか?」
「そうなんだ・・・分かった
気を付けるよ」
「ありがとう御座います。」
サスケとミルクは、
エルフの少女が居る席へと向かうと、
声を掛けてみる
「今晩は、俺がサスケなんだけど、
俺を訪ねて来たんだってね、
どんな用なのかな?」
「私は、サスケさんの妻のミルクです。
宜しくお願いしますね」
「は、はい!
夜分に申し訳御座いませんでした!
私は、サスケ様方が昼間お出で頂いた魔導具店の娘で、
サリエと申します。
どうしても、お聞きしたい事が御座いまして、
サスケ様方の、ご旅行の予定が分からなかったので、
夜分ですが、お伺いさせて頂きました。
「ああ、明日の早朝とかに出ちゃうかも知れないからね、
でも、店長さんの娘さんだって?
魔導具屋の店長さんて、普通の人族だよね」
「ええ、父は義父なんです。
行き倒れていた私を引き取って、
育てて下さいました。」
「あなたって、もしかしてハイエルフなの!?」
エルフ少女を見ていたミルクが、
驚いた様に声を上げた。
「え、ええ、確かに私はハイエルフですが、
どうして分かったんですか?」
「私は魔力が見えるスキルを持っているのですが、
今まで、お会いしたエルフの方々とは、
桁違いの魔力量を、あなたがお持ちになってるのが、
見えたものですから、
知り合いのエルフの方の一人は、S級冒険者なんですけど、
その方の、3倍の魔力量はありますね」
「何!?3倍の速さだと!?」
「えっ!?
突然、大声を出されて、
どうなさったんですかサスケさん?」
「いや、3倍と聞いて言いたくなっただけだから、
気にしないで話を続けてくれたまえ」
「はあ?」
「私は、人知れぬ山奥にある、
ハイエルフの里で育ちました。
両親は、私が生まれて間もない頃、
里を襲撃した魔獣と戦って命を落としたそうです。
親を亡くした私を、里の人達は、
里を守った恩人の子供として育ててくれて居たのですが、
私が5歳になった頃に、里の子供達と薬草集めに、
草原へと行ったところ、
運悪く、ジャイアントイーグルに捕まってしまい、
既に憶えていた魔法を使って、
何とか難を逃れた時には、
里から遠く運ばれていて、帰り道も分からない状態だったのです。
偶々、通り掛かった義父母達に拾われなければ、
あのまま、命を落としていた事でしょう」
「へ~、そりゃ大変な目に遭ったもんだな」
「ええ、でも、そのお蔭で、
義父母達に逢う事が出来たので、
そう悪い事ばかりでは、ありませんわ、
病気の所為で、子供が出来なかった義父母は、
私の事を、本当の子供の様に、
大事に育てて下さいました。
里のみんなは、とても優しかったけど、
やっぱり親が居ない寂しさは感じていましたから、
義父母との出会いを、神に感謝致しました。」
「ええ、話や・・・」
「はい、本当に」
サスケとミルクは、サリエの話を聞いて、
胸の中が暖かくなるのを感じた。




