オワリ・タワー
「ご注文の方は、お決まりでしょうか?」
カフェの席に着いてから、配られたメニュー表を見ていた
サスケ達に、ウサ耳ウェートレスが尋ねて来た。
「何を頼むかまでも決めてあるのか?」
サスケは、この店を選んだ
ツバキとユリに聞いてみた。
「はい、この店の名物をリサーチしてありますので、
私達に、お任せ下さい。」
「サスケ様たちも、
見れば、きっと驚きますよ」
「そうか、じゃあ任せるとするか」
サスケ達は、メインとなるスイーツの注文を2人に任せると、
それぞれの、飲み物のみを注文した。
そして、最後にツバキが、
「この店の名物として知られている、
『オワリ・タワー』を、お願いします。」と、
注文したのだが、
その注文を聞いたウサ耳ウェイトレスが、
驚愕の表情をみせながら、
「どこで、それを!?」と言っていたのが、
非常に印象に残った。
ユリが、ウサ耳ウェートレスに、
「フフフ、私達の情報集積能力を嘗めない事ね」
とか言ってたので、
気になったサスケが、2人に聞いてみる
「『オワリ・タワー』とか言うのは、
メニューには載っていなかったと思うんだが、
裏メニューか何かなのか?」
「はい、そうです。サスケ様
『オワリ・タワー』と言うのは、
この店の店長さんが、同郷の人が来店した時にのみ出す
特別なメニューなのですが、
一般の人も注文すれば、出して貰えるそうなんですよ」
「ちなみに『オワリ』というのは、
店長さんの故郷である『ナギャーの街』の前身、
『オワリ村』に由来されているとの事です。」
「そうなのか・・・
オワリ・・・ナギャー・・・」
サスケは、その言葉の響きに、
何故か地雷臭を感じて仕方が無かった。
暫くすると、
それぞれが注文した飲み物が、先に運ばれて来て、
皆が、軽く喉の渇きを潤した時にソレが運ばれて来た。
ワゴン車で運ばれて来る、
その姿を、ひと言で表すとすれば『デカい!』である、
サイズこそ違うものの、
ソレに良く似たスイーツを日本に居る時に、
テレビで見た事があるサスケは、こう呟いた。
「パンケーキ?」
そう、そこには直径50センチ、
厚み5センチ程の大きさを持つパンケーキらしきものが、
1メートル程の高さまで積み上げられていたのだ。
積み重ねられたパンケーキ同士の間からは、
生クリームや、ジャムらしきものが、
はみ出していて、
所々に、季節の果物が、
ちりばめられていた。
「サイズは、やたらデカいけど、
普通に美味そうだな」
サスケが、ホッとした顔で言う
「ええ、美味しそうですわ」
「キキ~!」
ミルクや、チビリンも楽しみな様子だ。
「では、やはり最初は、
サスケ様から、お召し上がり下さい」
ツバキが切り分けた『オワリ・タワー』が、
サスケの前に、取り皿に乗せられて置かれた。
「良し、分かった。
では、今日の日を記念して、
まずは、俺から食べさせて貰うぞ、
いただきま~す!」
サスケは、フォークでパンケーキを刺すと、
パクリと口に入れて、モグモグと咀嚼した。
「どうですか?サスケ様」
「な」
「「「「「な?」」」」」
「なんじゃこりゃ~!?
何で、生クリームやジャムと一緒に、
ステーキやエビフライが入ってるんだよ!」
「ええっ!?
そんなものが入っているんですか!?」
「サスケ様、
私達を、からかおうとしてるんですよね?」
「サスケ様、
余りにも美味しかったから、
独り占めしようと思って、
そう言ってるんじゃないんですか?」
「そうなんですか?サスケ様」
「サスケさんたら、
スイーツに、そんなものが入っている訳が、
無いじゃないですか」
「キキ~。」
「みんなも、食ってみれば分かるよ、
それからタンポポ、俺の分も、
お前にやるから、腹一杯食べて良いぞ」
「じゃ、じゃあ、いただきます。」
「「「「いただきます。」」」」
「キキッ」
他の面々も、サスケに続いて、
口に運び始めてみる
「うっ・・・マジだ・・・」
「こんなスイーツが、あるなんて・・・」
「これは、スイーツなのか、食事なのか?」
「この、ジャムに塗れた肉の味わいが、何とも・・・」
「生クリームとエビフライの組み合わせも、
負けてはいませんね・・・」
「キキ~・・・」
みんな、悪い夢を見ている様な顔をしている
「どうだ?タンポポ、
たっぷり食べて良いからな」
「ううっ、サスケ様
カンベンして下さい・・・」
「ハハハ、流石のタンポポも、
これには参った様だな、
良し、折角のスイーツを残すのも心苦しいから、
秘密兵器を出すしかないかな」
サスケは『魔倉』から何かを取り出した。
「サスケ様、それってもしかして、
カレーですか?」
「おう、困った時のカレー頼みって言ってな、
どんな食材でも、カレー味にすれば、
何とか食べられるんだよ」
サスケは、そう言うと、
パンケーキをカレーの中に入れてから、
パクリと口に入れた。
「どうですか?サスケ様」
「ああ、特別美味いって訳じゃ無いが、
こういう料理だと思えば、そこそこイケるぞ」
「ホントですか?」
タンポポも、恐る恐る口に運んでみる
「おお、割とイケますね、
生クリームとジャムの甘さが消えるので、
ずい分食べ易くなってます。」
タンポポの様子を見ていた
他の面々も、その言葉を聞いて、
食べ始めてみた。
「あら、パンケーキに甘みを付けて無かったのが幸いして、
カレーに合いますね」
「ホント、ステーキやエビフライも、
カレーに浸ければ、普通に美味しいですよ」
「何か、生クリームやジャムがカレーに溶け込むと、
コクが出ていませんか?」
「うんうん、カレーの味の方が勝ってるから、
気にならなくなるね」
「料理としてならアリかもしれませんわね」
「キキ~!」
どうやら、『オワリ・タワー』を無駄にしなくても、
済んだ様であった。
一方、離れた場所から、
サスケ達の様子を窺っていたウェートレス達は、
皆、驚愕の表情を浮かべていた。
「あの人達、『オワリ・タワー』を平気な顔して、
パクパク食べてるわよ!?」
「どんな味覚してるのよ!?」
「もしかすると、初の完食が出るかも知れないわね」
「この店の伝説も、ついに終焉を迎えるのね」
「いいえ!新たなメニューを考え出して、
新しい伝説を作れば良いのよ!」
「「「「オ~!!」」」」